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お見合い相手がまさかの推し⁉
③
その間も、晴子と洋輔のやり取りは続いていた。
「こちらにいらっしゃるってことは、洋輔さんもお見合いの付き添いってところかしら?」
「ええ、お察しの通りですよ。央輔の付き添いです」
「やっぱりそうでしたのね~」
「ええ、そうなんですよ。奇遇ですね。そう言いたいところなんですが、実は相手にドタキャンされましてね」
「あら、そうでしたの? 実はこちらもですのよ」
「なんと……! そうでしたか。なんとも妙な縁ですね」
「ええ、本当に。高邑と同じ読みの苗字と言い、何かよほどのご縁があるのかしら」
潜めた声で呟きながら、晴子が杏璃の様子をチラッと窺ってふふっと悪戯っぽい笑みを零した。けれど、三次元に現れた氷のプリンスに見蕩れていた杏璃は気づきもしない。
杏璃が我を取り戻したのは、それからしばらく経った頃だ。
「ねえ、杏璃。これはきっといいご縁に違いないわ。私たちはこれで失礼するから、頑張ってらっしゃいね」
夢現状態で呆けていた杏璃の耳元で晴子の明るい声が弾んだと思ったときには、氷のプリンスに瓜二つの鷹村央輔とふたりきりにされてしまっていた。
なんと、見合いをドタキャンされた者同士で急遽お見合いすることとなったらしいのだ。
放心状態だったのでどういう経緯でそうなったかは不明だが、晴子の提案に違いない。
突如目の前に現れた推しもとい、推しにそっくりな央輔と同じ空間にいるという、この夢のような出来事を未だ消化できずにいる。
洋輔にエスコートされ上機嫌で去って行く晴子を棒立ちで見送る杏璃の脳内はパニック状態だ。
(やだ。ちょっと待ってよ! ムリムリ無理だってばっ! いきなりふたりっきりだなんて、どうしたらいいかわかんないから)
両手で頭を抱えて盛大に慌てふためいていた杏璃の意識に、央輔のつまらなそうな声が割り込んでくる。
「……よく言われるが、そんなに似てるのか?」
その表情でさえも似ているのだから、堪らない。
しかも央輔は、珍しい生き物でも目にしたかのように不思議そうに、長身を屈めて顔を覗き込んでいるではないか。
身長一五四センチの杏璃からすると、一八〇は超えているであろう央輔はもはや巨人である。
よほどのことがない限り、至近距離でその顔を拝むことはできない。それが目の前にどアップで迫っているのだ。
そんなのビックリするに決まっている。
(――もうダメ)
とうとう限界を超えてしまった杏璃は、そのまま意識を手放しかけた。
だがすんでのところで央輔に抱き留められて事なきを得る。
それにより限界点を突破した杏璃は、今度こそ央輔の腕の中で事切れたのだった。
意識を手放す刹那、甘く爽やかな香りとぬくもりに包み込まれた杏璃は、天にも昇る夢心地を堪能していた。
「こちらにいらっしゃるってことは、洋輔さんもお見合いの付き添いってところかしら?」
「ええ、お察しの通りですよ。央輔の付き添いです」
「やっぱりそうでしたのね~」
「ええ、そうなんですよ。奇遇ですね。そう言いたいところなんですが、実は相手にドタキャンされましてね」
「あら、そうでしたの? 実はこちらもですのよ」
「なんと……! そうでしたか。なんとも妙な縁ですね」
「ええ、本当に。高邑と同じ読みの苗字と言い、何かよほどのご縁があるのかしら」
潜めた声で呟きながら、晴子が杏璃の様子をチラッと窺ってふふっと悪戯っぽい笑みを零した。けれど、三次元に現れた氷のプリンスに見蕩れていた杏璃は気づきもしない。
杏璃が我を取り戻したのは、それからしばらく経った頃だ。
「ねえ、杏璃。これはきっといいご縁に違いないわ。私たちはこれで失礼するから、頑張ってらっしゃいね」
夢現状態で呆けていた杏璃の耳元で晴子の明るい声が弾んだと思ったときには、氷のプリンスに瓜二つの鷹村央輔とふたりきりにされてしまっていた。
なんと、見合いをドタキャンされた者同士で急遽お見合いすることとなったらしいのだ。
放心状態だったのでどういう経緯でそうなったかは不明だが、晴子の提案に違いない。
突如目の前に現れた推しもとい、推しにそっくりな央輔と同じ空間にいるという、この夢のような出来事を未だ消化できずにいる。
洋輔にエスコートされ上機嫌で去って行く晴子を棒立ちで見送る杏璃の脳内はパニック状態だ。
(やだ。ちょっと待ってよ! ムリムリ無理だってばっ! いきなりふたりっきりだなんて、どうしたらいいかわかんないから)
両手で頭を抱えて盛大に慌てふためいていた杏璃の意識に、央輔のつまらなそうな声が割り込んでくる。
「……よく言われるが、そんなに似てるのか?」
その表情でさえも似ているのだから、堪らない。
しかも央輔は、珍しい生き物でも目にしたかのように不思議そうに、長身を屈めて顔を覗き込んでいるではないか。
身長一五四センチの杏璃からすると、一八〇は超えているであろう央輔はもはや巨人である。
よほどのことがない限り、至近距離でその顔を拝むことはできない。それが目の前にどアップで迫っているのだ。
そんなのビックリするに決まっている。
(――もうダメ)
とうとう限界を超えてしまった杏璃は、そのまま意識を手放しかけた。
だがすんでのところで央輔に抱き留められて事なきを得る。
それにより限界点を突破した杏璃は、今度こそ央輔の腕の中で事切れたのだった。
意識を手放す刹那、甘く爽やかな香りとぬくもりに包み込まれた杏璃は、天にも昇る夢心地を堪能していた。
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