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お見合い相手がまさかの推し⁉
②
「……ど、どうって……言われても。正直、結婚なんて考えたこともないし、てっきり断られるものだと思ってたから……」
「そうよね。まだ若いんだし、無理もないわ。相手が乗り気だからって別に強制する気はないのよ。実際に相手の方と会ってゆっくり話してから決めればいいのよ。一番大事なのは杏璃の気持ちですもの」
杏璃の動揺を察したのか、最後には杏璃に共感し気持ちを尊重したいと言ってくれているが、相手が乗り気だというのだ。
そう簡単に断ることなどできないだろう。
まだまだ先だと思っていた〝結婚〟の二文字が一気に現実味を帯びてくる。
(どうせ三次元に理想の相手なんていないんだし、誰と結婚しても同じよね……)
とは思いながらも、どこか諦めきれない杏璃だった。
どんよりと沈んでしまっている杏璃の思考に、晴子のはしゃぐ声が割り込んでくる。
「あら、やだ。あの方って、〝美容界の氷のプリンス〟じゃない? ねえ、杏璃、そうよね?」
(〝美容界の氷のプリンス〟って、どういう意味? いくら興味ないからって、適当に変なキャッチフレーズつけないでほしいんですけど……!)
推し一筋の杏璃の伯母だけあり、晴子にはミーハーな一面があった。きっと有名人でも見たのだろう。
同意してほしいからって、推しを持ちだしてくるのはどうかと思うけれど、今は指摘する気も起こらない。
晴子の声にゆっくり顔を上げた先に待ち受けていたのは、なんと推し――氷のプリンスそっくりの容貌をした男性の姿だった。
目にした瞬間、杏璃は雷にでも撃たれたかのような大きな衝撃を受け、呼吸さえも忘れて釘付け状態だ。
周囲からは音も消え去り、あたかも時間が止まったこの世界に、氷のプリンスと杏璃のふたりだけしか存在していない。そんな錯覚に陥ってしまっている。
「噂通り、そっくりだわ~。ね? 杏璃もそう思うでしょう?」
隣の晴子から興奮した様子で鼻息荒く同意を求められても、杏璃に届きはしない。
(――三次元にもいたんだ。やだ、どうしよう! 心臓がドキドキしすぎて胸が苦しくなってきちゃった……)
そんなことを案じながら、三次元で推しと対面できた杏璃には、もう思い残すことはない。このまま昇天してしまいたい。なんてことを案外真剣に願っていた。
そこに再び、晴子の思いがけない言葉が割り込んでくる。
「あら、洋輔さんもご一緒でしたのね~」
「お綺麗なお嬢さんがいらっしゃると思ったら、晴子さんじゃありませんか~」
「あら、相変わらずお上手ですこと~」
「心外だなぁ。本心ですよ」
氷のプリンスに激似の男性のすぐ側に控えていた五十代の晴子と同年代と思しき洋輔と呼ばれた美形の男性が歩み寄ってくる。どうやら晴子と顔見知りのようだ。いまだ放心状態の杏璃を置き去りに、ふたり仲良く正面のソファを陣取り盛り上がっている。
氷のプリンスはというと、ふたりにまったく関心がないようだ。隣のソファにさっさと腰を下ろし、長い足を組んでスマートフォンを弄り始めてしまった。
いまだ夢現の杏璃は、その様子を食い入るように見つめることしかできずにいる。
「そうよね。まだ若いんだし、無理もないわ。相手が乗り気だからって別に強制する気はないのよ。実際に相手の方と会ってゆっくり話してから決めればいいのよ。一番大事なのは杏璃の気持ちですもの」
杏璃の動揺を察したのか、最後には杏璃に共感し気持ちを尊重したいと言ってくれているが、相手が乗り気だというのだ。
そう簡単に断ることなどできないだろう。
まだまだ先だと思っていた〝結婚〟の二文字が一気に現実味を帯びてくる。
(どうせ三次元に理想の相手なんていないんだし、誰と結婚しても同じよね……)
とは思いながらも、どこか諦めきれない杏璃だった。
どんよりと沈んでしまっている杏璃の思考に、晴子のはしゃぐ声が割り込んでくる。
「あら、やだ。あの方って、〝美容界の氷のプリンス〟じゃない? ねえ、杏璃、そうよね?」
(〝美容界の氷のプリンス〟って、どういう意味? いくら興味ないからって、適当に変なキャッチフレーズつけないでほしいんですけど……!)
推し一筋の杏璃の伯母だけあり、晴子にはミーハーな一面があった。きっと有名人でも見たのだろう。
同意してほしいからって、推しを持ちだしてくるのはどうかと思うけれど、今は指摘する気も起こらない。
晴子の声にゆっくり顔を上げた先に待ち受けていたのは、なんと推し――氷のプリンスそっくりの容貌をした男性の姿だった。
目にした瞬間、杏璃は雷にでも撃たれたかのような大きな衝撃を受け、呼吸さえも忘れて釘付け状態だ。
周囲からは音も消え去り、あたかも時間が止まったこの世界に、氷のプリンスと杏璃のふたりだけしか存在していない。そんな錯覚に陥ってしまっている。
「噂通り、そっくりだわ~。ね? 杏璃もそう思うでしょう?」
隣の晴子から興奮した様子で鼻息荒く同意を求められても、杏璃に届きはしない。
(――三次元にもいたんだ。やだ、どうしよう! 心臓がドキドキしすぎて胸が苦しくなってきちゃった……)
そんなことを案じながら、三次元で推しと対面できた杏璃には、もう思い残すことはない。このまま昇天してしまいたい。なんてことを案外真剣に願っていた。
そこに再び、晴子の思いがけない言葉が割り込んでくる。
「あら、洋輔さんもご一緒でしたのね~」
「お綺麗なお嬢さんがいらっしゃると思ったら、晴子さんじゃありませんか~」
「あら、相変わらずお上手ですこと~」
「心外だなぁ。本心ですよ」
氷のプリンスに激似の男性のすぐ側に控えていた五十代の晴子と同年代と思しき洋輔と呼ばれた美形の男性が歩み寄ってくる。どうやら晴子と顔見知りのようだ。いまだ放心状態の杏璃を置き去りに、ふたり仲良く正面のソファを陣取り盛り上がっている。
氷のプリンスはというと、ふたりにまったく関心がないようだ。隣のソファにさっさと腰を下ろし、長い足を組んでスマートフォンを弄り始めてしまった。
いまだ夢現の杏璃は、その様子を食い入るように見つめることしかできずにいる。
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