訳あって、推しに激似のクールな美容外科医と利害一致のソロ活婚をしたはずが溺愛婚になりました

羽村 美海

文字の大きさ
11 / 68
本物の氷のプリンス登場!?

しおりを挟む
 つい先ほどまでの威勢はどこへやら、杏璃の全ての機能が停止した。もはや抜け殻状態である。いや、魂が抜けて昇天しかかっているといったほうが正しいだろう。

 そんな醜態を披露しているというのに、さすがは夢、推しにはそう見えていないようである。

 氷のプリンス――アーサー王子は呆けた杏璃を前に、眉間に僅かに皺を寄せ、ふむ……と思案する素振りを見せる。そうして形の良い唇が弧を描いたときには、微かに黒い微笑を湛え意味深な言葉を投下したあとだった。

「どうした? アンリ。俺と閨を共にしているというのに、考え事とは、随分と余裕なのだな。だったら、余計なことなど考えられぬように、しないとな」

 推しの長くしなやかな指は、放心したままの杏璃の顎を捉え固定する。そうしてあたかも焦らしてでもいるかのように、ゆっくりゆっくりと麗しい相貌が近づいてくる。数十センチだったのがあと五センチ、四センチ、三センチと距離が縮まっていく。

 いよいよあと二センチで推しの唇と杏璃のそれとが触れ合うというところで、どこからともなくけたたましい電子音が響き渡った。

(この音って、アラーム? よりにもよってどうしてこんな時に!)

 非常に残念だが杏璃の意識は今度こそ覚醒し、現実世界へと引き戻されるかと思われたのだが……

 目覚めた場所は推しそっくりの央輔がいるはずのホテルの一室ではなく、自宅にある自身の部屋である。

 伸ばした手でスマホを引き寄せスヌーズ機能をオフにした杏璃は、むくりと起き上がった。そうしていつもと変わらぬ部屋の壁にデカデカと貼られた氷のプリンスを見上げた杏璃は、狐にでもつままれたかのような心境だ。

「???」

 頭の中にはいくつもの疑問符が飛び交っている。

(もしかして、あの、お見合いもなにもかも全部、夢だったってこと?)

 まだ覚束ない思考を駆使して導き出した答えに杏璃が納得する隙など与えないというように、ドアの向こうからノックする音が聞こえてくる。

「……は、はい」

 一拍遅れつつも声を放つと同時、杏璃の返事など待っていられないとばかりに、ガチャリと軽快な音を立ててドアが開けられた。そこに晴子がひょっこりと顔を出す。

(こ、このタイミング、嫌な予感しかしないんですけれど!)

 心中で毒づく杏璃に対して晴子は、今日も上機嫌である。まるで、洋輔にエスコートされて杏璃を置き去りにした、あの時のよう。

 予感めいたものを感じていた杏璃の期待を裏切ることなく、晴子から予想を遙かに超えたビックリ発言が飛び出した。

「杏璃、良かったわね~。昨日お見合いした推しそっくりの央輔さんから、OKのお返事があったわよ~!」

(な、なんだ、夢じゃなかったんだ。って……ええっ? どゆこと?)

 おかげで、アレが夢ではなく現実だというのは理解できたのだが、驚嘆している場合ではない。なにせアレからの記憶がまったくないのだから。

 状況がまったく飲み込めず困惑しきりの杏璃だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」  突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。  冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。  仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。 「お前を、誰にも渡すつもりはない」  冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。  これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?  割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。  不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。  これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

処理中です...