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episoudo:4
#3 *松岡直樹side*
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黒木の泣き顔を見てしまった俺は、酔っ払い黒木が腕の中で怖いと言って泣いてた時のことを、思いだしてしまってーー。
まるで、条件反射のように、泣いてる黒木のことを腕の中に閉じ込めていた。
――自分でも、どうしてなのか解らない……。
けど、泣いてる黒木を放ってなんか居られなくて。
腕の中の黒木が、嫌だと言って俺の胸を何度も押し返してきても、嫌がってんの解ってるクセに、もっともらしい勝手なこと言って理由つけて、どうしても離してやることができなくて……。
そしたら、腕に閉じ込めた黒木が抜け出すのを諦めたのか、啜り泣くような小さな声とその振動が身体に伝わってきた。
そんな黒木のことを、ただなんとかしてやりたくて、でもどうすることもできなくて……。
ただ無我夢中に、包み込む腕に力を込めて強く抱きしめていた。
そんな自分に戸惑っていると、
「バッカじゃないのっ? ただの上司に、なんで気ぃ許して甘えなきゃなんないのよ? フザけるな……。離してっ! もー、離してよー!」
俺の腕から抜け出すのを諦めたと思ってた黒木が、ついさっき俺が言ったことに対して必死になって言い返してきた。
まるで、最後の力を振り絞るようにして……。
流れる涙も構うことなく、必死になって訴えかけてくる黒木の言葉に、何故か言いようのない寂しさを感じてしまった。
また、そんな風に感じてしまう自分に戸惑ってしまう……。
黒木に言われた通り、俺はただの上司ってだけの立場でしかないのに……。
――さっきからなんなんだよ?
これじゃぁまるで、俺が黒木のこと好きみたいじゃねぇかよ?
もしかして、俺、黒木のこと、同じ部下だった高岡芽依の身代わりにしてんのか?
見た目もタイプも何もかも違うって言うのに?
……イヤ、イヤ、そんな訳ねぇよな?
やっぱり、酔っ払い黒木が弱いところ曝け出した姿見ちまったからか?
――自分のことなのによく解っかんねぇよ……。
色々と、理由を引っ張り出してきては、頭ん中で自問自答を繰り返していると、
「ちょっとっ! 聞いてんの? 早く離してって言ってんでしょっ? このセクハラ上司っ!」
泣きながら怒ってる黒木の声が耳に流れ込んできて。
ハッと我に返った俺が腕の力を緩めたら、それに気づいた黒木が、膝の上に乗せてたバッグを振り上げたかと思った
――次の瞬間、
ものの見事に俺の顎へとクリーンヒットして。
俺はその場で、片手で顎を押さえたまま悶絶することとなった。
「……っ…」
そんな間抜けな俺に気づくことなく、泣きじゃくって顔をグシャグシャにした黒木がバタンッとドアを閉めると振り返ることなく走り去っていく。
俺は遠のいていくその後ろ姿を顎の痛みを堪えながら、ジッと見つめ続けることしかできないでいた。
まるで、条件反射のように、泣いてる黒木のことを腕の中に閉じ込めていた。
――自分でも、どうしてなのか解らない……。
けど、泣いてる黒木を放ってなんか居られなくて。
腕の中の黒木が、嫌だと言って俺の胸を何度も押し返してきても、嫌がってんの解ってるクセに、もっともらしい勝手なこと言って理由つけて、どうしても離してやることができなくて……。
そしたら、腕に閉じ込めた黒木が抜け出すのを諦めたのか、啜り泣くような小さな声とその振動が身体に伝わってきた。
そんな黒木のことを、ただなんとかしてやりたくて、でもどうすることもできなくて……。
ただ無我夢中に、包み込む腕に力を込めて強く抱きしめていた。
そんな自分に戸惑っていると、
「バッカじゃないのっ? ただの上司に、なんで気ぃ許して甘えなきゃなんないのよ? フザけるな……。離してっ! もー、離してよー!」
俺の腕から抜け出すのを諦めたと思ってた黒木が、ついさっき俺が言ったことに対して必死になって言い返してきた。
まるで、最後の力を振り絞るようにして……。
流れる涙も構うことなく、必死になって訴えかけてくる黒木の言葉に、何故か言いようのない寂しさを感じてしまった。
また、そんな風に感じてしまう自分に戸惑ってしまう……。
黒木に言われた通り、俺はただの上司ってだけの立場でしかないのに……。
――さっきからなんなんだよ?
これじゃぁまるで、俺が黒木のこと好きみたいじゃねぇかよ?
もしかして、俺、黒木のこと、同じ部下だった高岡芽依の身代わりにしてんのか?
見た目もタイプも何もかも違うって言うのに?
……イヤ、イヤ、そんな訳ねぇよな?
やっぱり、酔っ払い黒木が弱いところ曝け出した姿見ちまったからか?
――自分のことなのによく解っかんねぇよ……。
色々と、理由を引っ張り出してきては、頭ん中で自問自答を繰り返していると、
「ちょっとっ! 聞いてんの? 早く離してって言ってんでしょっ? このセクハラ上司っ!」
泣きながら怒ってる黒木の声が耳に流れ込んできて。
ハッと我に返った俺が腕の力を緩めたら、それに気づいた黒木が、膝の上に乗せてたバッグを振り上げたかと思った
――次の瞬間、
ものの見事に俺の顎へとクリーンヒットして。
俺はその場で、片手で顎を押さえたまま悶絶することとなった。
「……っ…」
そんな間抜けな俺に気づくことなく、泣きじゃくって顔をグシャグシャにした黒木がバタンッとドアを閉めると振り返ることなく走り去っていく。
俺は遠のいていくその後ろ姿を顎の痛みを堪えながら、ジッと見つめ続けることしかできないでいた。
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