61 / 144
episoudo:7
#10
しおりを挟む
本当は、神様なんて、これっぽっちも信じちゃいないけれど……。
そんなバチあたりな私の願いは、どうやら神様の耳に届いていたようだった。
けれど、モニター画面に映しだされた主任の姿を確認した私は、すぐにそれが主任だとは信じられなくって。
モニター画面を凝視したままで暫くの間はその場で固まったまんま動けずにいた。
そんな私の耳には、それがまるで、見間違いでも、夢でも幻でもないと言われているかのように。
「……黒木」
今度はインターホンのモニター画面に映っている主任の声が鳴り響いた。
ハッと我に返った私は、気づいた時には、その声にまるで弾かれるようにして。
玄関ホールへと続く廊下を駆け出していた。
そして、ドアの前まで辿り着いた私は、なんの確認もせずに内鍵とドアの施錠も解除して。
ドアの向こうに立っている主任の胸目掛けて、そのまま勢い込んで飛び込んだ。
玄関のドアを開けて、いきなり抱きついた私のことを驚きながらも、あったかい大きな胸に力強く抱きとめてくれた主任。
その暖かさが、じんわりと伝わってくるだけで。
心まであったかく包んでくれてるようで、途端に例えようのないほどの安堵感に包まれる。
そだけじゃなくって、主任の優しさが伝わってくるようで……。
ただ、それだけで、涙があとからあとから溢れ出して止まらない。
「……く、黒木!?どうした?」
「…………」
「……ん!?……てか、おまっ、なんで泣いてんの?」
はじめは、遠慮気味に戸惑い気味に……。
私の様子をうかがいながら名前を呼んでた主任だったんだけど。
それに対して、なんにも答えないまんま、ただ左右に何度も頭を振り続けるだけの私が、どうやら泣いてると気づいたらしい主任。
主任は、ひどく驚いた声を上げながら、私の身体を自分の胸から少しだけ離してゆっくり顔を覗き込んできた。
けど、主任から少しでも離れているのが嫌で、
「らってぇ……。可愛げないことばっかり言ったから、嫌われちゃったと思ってたんだもん。けど、来てくれて、すっごく嬉しい」
少しでも距離を縮めるべく強く抱きつくことしかできなくて。
こうやって、泣いてじゃないと本当の気持ちを伝えることができない私は、手間のかかる子供と一緒だなって思う。
「……はっ!?俺がお前に嫌われるんならともかく、なんで俺がお前を嫌うんだよ?
それに、さっきまでスッゲー機嫌悪かったのに『来てくれてすっごく嬉しい』って、なんでそうなんの? 昨夜は俺がお前を怒らせたんだし、俺が謝りに来るのは当然だろ?」
主任に嫌われたと思ってた私は、嫌われてたんじゃないんだってことが解って。
それが嬉しくて発した言葉の意味が、どうもイマイチ理解できてないふうな主任は、さっきと同様ひどく驚いているようだった。
でも、主任に嫌われたんじゃないと解り、ホッと安心しきって気が緩んでしまってる私の頭では、冷静な思考能力なんて働いちゃくれなくて……。
未だ、状況がよく解らないふうな主任の口から、困惑気味に次から次へと発せられる言葉に、
「だって、それは……。昨夜は主任が、あんなに軽く、しかも簡単にプロポーズみたいなこと言うから。きっと相川さんが言ってた大学の時の可愛い彼女にも、おんなじように言ってたんだと思って……。腹が立って悔しいし、それがすっごく嫌だったんだもん」
言わなくてもいいことまで、私は馬鹿正直に吐露してしまったのだった。
そんなバチあたりな私の願いは、どうやら神様の耳に届いていたようだった。
けれど、モニター画面に映しだされた主任の姿を確認した私は、すぐにそれが主任だとは信じられなくって。
モニター画面を凝視したままで暫くの間はその場で固まったまんま動けずにいた。
そんな私の耳には、それがまるで、見間違いでも、夢でも幻でもないと言われているかのように。
「……黒木」
今度はインターホンのモニター画面に映っている主任の声が鳴り響いた。
ハッと我に返った私は、気づいた時には、その声にまるで弾かれるようにして。
玄関ホールへと続く廊下を駆け出していた。
そして、ドアの前まで辿り着いた私は、なんの確認もせずに内鍵とドアの施錠も解除して。
ドアの向こうに立っている主任の胸目掛けて、そのまま勢い込んで飛び込んだ。
玄関のドアを開けて、いきなり抱きついた私のことを驚きながらも、あったかい大きな胸に力強く抱きとめてくれた主任。
その暖かさが、じんわりと伝わってくるだけで。
心まであったかく包んでくれてるようで、途端に例えようのないほどの安堵感に包まれる。
そだけじゃなくって、主任の優しさが伝わってくるようで……。
ただ、それだけで、涙があとからあとから溢れ出して止まらない。
「……く、黒木!?どうした?」
「…………」
「……ん!?……てか、おまっ、なんで泣いてんの?」
はじめは、遠慮気味に戸惑い気味に……。
私の様子をうかがいながら名前を呼んでた主任だったんだけど。
それに対して、なんにも答えないまんま、ただ左右に何度も頭を振り続けるだけの私が、どうやら泣いてると気づいたらしい主任。
主任は、ひどく驚いた声を上げながら、私の身体を自分の胸から少しだけ離してゆっくり顔を覗き込んできた。
けど、主任から少しでも離れているのが嫌で、
「らってぇ……。可愛げないことばっかり言ったから、嫌われちゃったと思ってたんだもん。けど、来てくれて、すっごく嬉しい」
少しでも距離を縮めるべく強く抱きつくことしかできなくて。
こうやって、泣いてじゃないと本当の気持ちを伝えることができない私は、手間のかかる子供と一緒だなって思う。
「……はっ!?俺がお前に嫌われるんならともかく、なんで俺がお前を嫌うんだよ?
それに、さっきまでスッゲー機嫌悪かったのに『来てくれてすっごく嬉しい』って、なんでそうなんの? 昨夜は俺がお前を怒らせたんだし、俺が謝りに来るのは当然だろ?」
主任に嫌われたと思ってた私は、嫌われてたんじゃないんだってことが解って。
それが嬉しくて発した言葉の意味が、どうもイマイチ理解できてないふうな主任は、さっきと同様ひどく驚いているようだった。
でも、主任に嫌われたんじゃないと解り、ホッと安心しきって気が緩んでしまってる私の頭では、冷静な思考能力なんて働いちゃくれなくて……。
未だ、状況がよく解らないふうな主任の口から、困惑気味に次から次へと発せられる言葉に、
「だって、それは……。昨夜は主任が、あんなに軽く、しかも簡単にプロポーズみたいなこと言うから。きっと相川さんが言ってた大学の時の可愛い彼女にも、おんなじように言ってたんだと思って……。腹が立って悔しいし、それがすっごく嫌だったんだもん」
言わなくてもいいことまで、私は馬鹿正直に吐露してしまったのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
388
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる