【R18】ありえない恋。

羽村美海

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episoudo:15

#7

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 どれほどの時間が経っただろうか……。

 きっと、時間にすれば、そんなには経ってないのだろうけれど、このまま、直樹の腕の中でずっと泣いている訳にもいかない。

 それと同じように、このまま、本当のことを知らずにいても、この不安は消えることもないんだろうと思う。

 なら、いっそ、聞いてしまって、泣いてしまっても、直樹に抱きしめてもらえばいいじゃないか。

 そうやって、色々と考えてるうちに、とうとう察したんであろう直樹の方から話し始めた。


「愛、ごめん。相川に聞いてるかもしれないけど……。俺、お前に、ずっと嘘ついてた。ホントにごめん。

……けど、どうしても。嘘ついてでも、お前に、逢いたかった。勝手だよなぁ……。ごめんな」


 最後には、ハハって力なく自嘲するような笑みまで零して。

 全然、いつもの直樹らしくない。

 ごめんってばっかり言ってくるし。

 きっと、さっきの、咲さんが泣いてたことと、何か関係があるのかもしれない……。

 だって、咲さんのことには、少しも、触れようともしない。

 いつもの、直樹なら、きっと、どんなに言いづらいことでも、例え、言葉に詰まってしまっても、何かを伝えようと努めてくれるはずだ。

 助けてくれた、あの夜のように。

 なのに、こんなの、私が好きな直樹なんかじゃない。

 私に、直樹が嘘をついてた間に、何かがあったとしか思えない……。

 きっと、咲さんと再会してしまったから。

 直樹の中で、私の存在よりも、咲さんの存在の方が大きくなってるんじゃないかって。

 もう、私が、入る余地なんか、どこにもないんじゃないかって、そんな風に思ってしまうーー。

 直樹のことを信じたい気持ちと、疑ってしまう気持ちとが、ない交ぜになって、もう、ぐちゃぐちゃだ。

 そんなことをぐちゃぐちゃ考えてしまう、自分のことも嫌になってくる。

 でも、このままの状態で、ウジウジ考えたところで、何かが変わるわけでもない。

 なら、いっそ、何もかもぶつけて、自分の考えが間違いだったって、直樹のこと、疑ってしまってごめんって、謝ればいい。

 きっと、私の考えが間違ってるんだから。

 私は、一か八か、賭けてみることにした。


「さっきから、ごめん、ごめんって、何?
私に逢いたいって言いながら、咲さんのこと抱きしめてたくせに……。私に、来るなって、言ったクセに。ホントは、咲さんのこと、好きなんでしょ? だって、見てたら、分かる。バカッ!」


 ……どうやら私は、賭けには、負けてしまったらしい……。


「……咲のことは、……確かに、……そうだった。ごめん。でも、これだけは、信じて欲しい。愛のこと、裏切るようなことは、絶対してないし、これからも絶対しない」


 抱き着いてしまってた私の肩を掴んで、そっと僅かに浮かせると、私の目をまっすぐに捉えたまま、逸らすことなく見詰めて話してくれる直樹。

 『やっぱり、そうだったんだ』とは、思ってしまったけれど……。

 でも、どうやら、過去のことらしい。

 直樹の表情は真剣で、とても、嘘を言ってるようには、見えない。


「……だから、しばらくは、このまま咲の傍に、……居させてほしい」


 そう、言ってきた直樹の声を聞いた途端、直樹の顔を見ていた私の目に映されている直樹の顔が、グニャリと歪んでしまって。

 私は、また、泣いてしまっているようだ。


「愛。泣かせてばっかりで、ごめん」


 だって、直樹がとっても苦しそうに、声を震わせながら、ギュウッて強く抱きしめてくれるから。

 直樹の胸に顔を埋めてるお陰で、直樹の高鳴る鼓動が響いてくるのが心地いい。

 もう、こうやって、ずっと直樹にくっついていられたらいいのに……。
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