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episoudo:15
#7
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どれほどの時間が経っただろうか……。
きっと、時間にすれば、そんなには経ってないのだろうけれど、このまま、直樹の腕の中でずっと泣いている訳にもいかない。
それと同じように、このまま、本当のことを知らずにいても、この不安は消えることもないんだろうと思う。
なら、いっそ、聞いてしまって、泣いてしまっても、直樹に抱きしめてもらえばいいじゃないか。
そうやって、色々と考えてるうちに、とうとう察したんであろう直樹の方から話し始めた。
「愛、ごめん。相川に聞いてるかもしれないけど……。俺、お前に、ずっと嘘ついてた。ホントにごめん。
……けど、どうしても。嘘ついてでも、お前に、逢いたかった。勝手だよなぁ……。ごめんな」
最後には、ハハって力なく自嘲するような笑みまで零して。
全然、いつもの直樹らしくない。
ごめんってばっかり言ってくるし。
きっと、さっきの、咲さんが泣いてたことと、何か関係があるのかもしれない……。
だって、咲さんのことには、少しも、触れようともしない。
いつもの、直樹なら、きっと、どんなに言いづらいことでも、例え、言葉に詰まってしまっても、何かを伝えようと努めてくれるはずだ。
助けてくれた、あの夜のように。
なのに、こんなの、私が好きな直樹なんかじゃない。
私に、直樹が嘘をついてた間に、何かがあったとしか思えない……。
きっと、咲さんと再会してしまったから。
直樹の中で、私の存在よりも、咲さんの存在の方が大きくなってるんじゃないかって。
もう、私が、入る余地なんか、どこにもないんじゃないかって、そんな風に思ってしまうーー。
直樹のことを信じたい気持ちと、疑ってしまう気持ちとが、ない交ぜになって、もう、ぐちゃぐちゃだ。
そんなことをぐちゃぐちゃ考えてしまう、自分のことも嫌になってくる。
でも、このままの状態で、ウジウジ考えたところで、何かが変わるわけでもない。
なら、いっそ、何もかもぶつけて、自分の考えが間違いだったって、直樹のこと、疑ってしまってごめんって、謝ればいい。
きっと、私の考えが間違ってるんだから。
私は、一か八か、賭けてみることにした。
「さっきから、ごめん、ごめんって、何?
私に逢いたいって言いながら、咲さんのこと抱きしめてたくせに……。私に、来るなって、言ったクセに。ホントは、咲さんのこと、好きなんでしょ? だって、見てたら、分かる。バカッ!」
……どうやら私は、賭けには、負けてしまったらしい……。
「……咲のことは、……確かに、……そうだった。ごめん。でも、これだけは、信じて欲しい。愛のこと、裏切るようなことは、絶対してないし、これからも絶対しない」
抱き着いてしまってた私の肩を掴んで、そっと僅かに浮かせると、私の目をまっすぐに捉えたまま、逸らすことなく見詰めて話してくれる直樹。
『やっぱり、そうだったんだ』とは、思ってしまったけれど……。
でも、どうやら、過去のことらしい。
直樹の表情は真剣で、とても、嘘を言ってるようには、見えない。
「……だから、しばらくは、このまま咲の傍に、……居させてほしい」
そう、言ってきた直樹の声を聞いた途端、直樹の顔を見ていた私の目に映されている直樹の顔が、グニャリと歪んでしまって。
私は、また、泣いてしまっているようだ。
「愛。泣かせてばっかりで、ごめん」
だって、直樹がとっても苦しそうに、声を震わせながら、ギュウッて強く抱きしめてくれるから。
直樹の胸に顔を埋めてるお陰で、直樹の高鳴る鼓動が響いてくるのが心地いい。
もう、こうやって、ずっと直樹にくっついていられたらいいのに……。
きっと、時間にすれば、そんなには経ってないのだろうけれど、このまま、直樹の腕の中でずっと泣いている訳にもいかない。
それと同じように、このまま、本当のことを知らずにいても、この不安は消えることもないんだろうと思う。
なら、いっそ、聞いてしまって、泣いてしまっても、直樹に抱きしめてもらえばいいじゃないか。
そうやって、色々と考えてるうちに、とうとう察したんであろう直樹の方から話し始めた。
「愛、ごめん。相川に聞いてるかもしれないけど……。俺、お前に、ずっと嘘ついてた。ホントにごめん。
……けど、どうしても。嘘ついてでも、お前に、逢いたかった。勝手だよなぁ……。ごめんな」
最後には、ハハって力なく自嘲するような笑みまで零して。
全然、いつもの直樹らしくない。
ごめんってばっかり言ってくるし。
きっと、さっきの、咲さんが泣いてたことと、何か関係があるのかもしれない……。
だって、咲さんのことには、少しも、触れようともしない。
いつもの、直樹なら、きっと、どんなに言いづらいことでも、例え、言葉に詰まってしまっても、何かを伝えようと努めてくれるはずだ。
助けてくれた、あの夜のように。
なのに、こんなの、私が好きな直樹なんかじゃない。
私に、直樹が嘘をついてた間に、何かがあったとしか思えない……。
きっと、咲さんと再会してしまったから。
直樹の中で、私の存在よりも、咲さんの存在の方が大きくなってるんじゃないかって。
もう、私が、入る余地なんか、どこにもないんじゃないかって、そんな風に思ってしまうーー。
直樹のことを信じたい気持ちと、疑ってしまう気持ちとが、ない交ぜになって、もう、ぐちゃぐちゃだ。
そんなことをぐちゃぐちゃ考えてしまう、自分のことも嫌になってくる。
でも、このままの状態で、ウジウジ考えたところで、何かが変わるわけでもない。
なら、いっそ、何もかもぶつけて、自分の考えが間違いだったって、直樹のこと、疑ってしまってごめんって、謝ればいい。
きっと、私の考えが間違ってるんだから。
私は、一か八か、賭けてみることにした。
「さっきから、ごめん、ごめんって、何?
私に逢いたいって言いながら、咲さんのこと抱きしめてたくせに……。私に、来るなって、言ったクセに。ホントは、咲さんのこと、好きなんでしょ? だって、見てたら、分かる。バカッ!」
……どうやら私は、賭けには、負けてしまったらしい……。
「……咲のことは、……確かに、……そうだった。ごめん。でも、これだけは、信じて欲しい。愛のこと、裏切るようなことは、絶対してないし、これからも絶対しない」
抱き着いてしまってた私の肩を掴んで、そっと僅かに浮かせると、私の目をまっすぐに捉えたまま、逸らすことなく見詰めて話してくれる直樹。
『やっぱり、そうだったんだ』とは、思ってしまったけれど……。
でも、どうやら、過去のことらしい。
直樹の表情は真剣で、とても、嘘を言ってるようには、見えない。
「……だから、しばらくは、このまま咲の傍に、……居させてほしい」
そう、言ってきた直樹の声を聞いた途端、直樹の顔を見ていた私の目に映されている直樹の顔が、グニャリと歪んでしまって。
私は、また、泣いてしまっているようだ。
「愛。泣かせてばっかりで、ごめん」
だって、直樹がとっても苦しそうに、声を震わせながら、ギュウッて強く抱きしめてくれるから。
直樹の胸に顔を埋めてるお陰で、直樹の高鳴る鼓動が響いてくるのが心地いい。
もう、こうやって、ずっと直樹にくっついていられたらいいのに……。
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