フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜

羽村 美海

文字の大きさ
30 / 91
変わりつつあるもの


 そうして毎回、子どものように無邪気な表情で嬉しそうに「美味しい」と言って何でも残さず食べてくれる奏の姿に、気づけば和んでしまっている自分がいる。

 少しずつ少しずつ何かが自分の中で変わりつつあるのを感じている今日この頃。

 同居当初は一体どうなるだろうと不安しかなかった。けれど、公言通り、奏は穂乃香とは一定の距離をとり節度ある振る舞いを徹底してくれている。

 おかげで奏との生活は、想像以上に快適なものとなっていた。

 それもそのはず。これまでは節約生活を徹底してきたのに、大手総合電機メーカーである竹野内グループが手がけた最新式の調理器具からはじまり、ありとあらゆる多機能電化製品が勢揃いしているのだ。

 それを毎日使い放題なのだから無理もない。

 奏曰く、自社製品の品質向上のためには実際に使用するのが一番であるらしい。

 確かにそうだとは思うが、あまりにも快適すぎて怖いほどだ。

 それは電化製品に限ったことではない。高級そうな家具も誂えた代物のようだし、揃えられた日用品もどれもこれも一級品ばかり。

 穂乃香に与えられた部屋にしたってそうだ。ホテルの客室のように無駄に広いし、ウォークインクローゼットはハイブランドの洋服や装飾品で埋め尽くされている。まるで店舗の陳列棚のよう。

「穂乃香に似合いそうなモノを見繕ってみたんだが、どうだろう? 気に入ってもらえるといいんだが」

「――ッ!?」

 引っ越し当日、部屋に案内された穂乃香は、照れくさそうに話す奏の隣で驚きすぎてその場で固まってしまったほどだ。

 それが今では、当たり前の光景となっているのだから、困ったものである。

 だからといって、穂乃香にはそれを喜んで受け入れられるほどの図太い神経もなければ、着こなすほどの華やかさも持ち合わせちゃいない。

 未だ手つかずのままで陳列されているという、宝の持ち腐れ状態である。

 けれど大きな借りだってある上に外堀まで埋められてしまっているのだ。このままではなし崩し的に業務の一環としてのビジネス婚をすることになりかねない。

 もしかしたら、柳本のサプライズも二人が仕組んだのかもしれない。

 元婚約者との一件で男性不信になってしまった穂乃香は、奏との同居生活の中で自分の気持ちが少しずつ変化していくのを感じながらも、奏と柳本に対しての不信感を拭うことができないでいる。

(――和んでる場合じゃない。しっかりしなきゃ)

 気持ちも新たに、すっかり忘れかけていた武装モードに切り替えた穂乃香は、余計なモノに惑わされないためにもより一層仕事に励むようになっていた。

 そんなこんなで、奏との同居生活を始めてから早いもので二月近くが経過し、奏との生活にもすっかり慣れつつあった。

 試用期間満了まで残すところ一週間。そんなタイミングでまたもや思わぬアクシデントに見舞われてしまうこととなる。
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。