【R18】訳あり御曹司と秘密の契約【本編完結・番外編不定期更新中】

一難去ったその後で

#１１

要さんにも契約のことを後悔なんかしてほしくない、その一心で、またまた感情で突っ走ってしまった私。
　
そんな私の言動に出遅れて、しばらくの間されるがままの要さんの反応に気をよくした私が、たどたどしくも要さんの舌を、舌先で擽っているうち。
　
気づけば要さんに、後頭部を支えるようにして片手でしっかりと固定され、もう片方の手は背中に回されていて。
　
そのまま要さんの身体へぴったりと密着するように抱き寄せられていた。
　
やがて、背中に回されていた要さんの手は、宥めるように撫でる動きから、私の身体の曲線をなぞるような、官能的なものへとなって。
　
ちょうど下腹部の辺りに押しつけられてしまっている、要さんの昂りを薄い布越しに感じて、妙な気持ちにもなってくる。
　
その間にも、私の咥内のすべてを知り尽くしている要さんの舌は、ゆっくり的確に私の弱いポイントを縦横無尽に、いつもより激しく攻め立ててくる。
　
お陰で、ついさっきまで、されるがままだった筈の要さんの舌にも、私の咥内はすっかり懐柔されてしまっていた。
　
滾るように熱くなった要さんの舌で、私の舌は絡めとられ、時折強く吸いつかれ、上蓋を何度も優しくなぞるように擽られてしまえば、もう立っているのもままならないほど、身体からは徐々に力が抜けてゆく。
　
「……んっ、……ふぅ……ンン」
　
ただならぬヤル気を完全に取り戻した要さんに翻弄されてしまっている私の鼓膜を、互いの唾液が混ざり合う水音と、互いの熱く弾む吐息とが、打ち震わせ、キスに夢中になって、薄れかけていた羞恥心が煽られる。
　
息継ぎもままならないほどの激しさに、頭の芯が痺れ、蕩けたように、何も考えることができない。

要さんの纏うバスローブの胸元をギュッと掴んで、身を委ねることしかできないでいる私の目尻からは、要さんへ想いが通じたんだという喜びと、感情の昂りとで、透明な雫が零れ落ちてゆく。
　
そのまま私が膝から崩れ落ちそうになったところを、要さんの逞しい腕で抱きとめられ、ようやく蕩けるような甘く激しい口づけから解放され、僅かに離れた互いの唇は透明な糸で繋がりあっている。
　
こんなに近くで触れあっているというのに、僅かでも離れてしまうのが嫌で、かといって蕩けた頭が働かなくて何も言えず、ただただぼんやりと、ただならぬイロカを纏った要さんの綺麗なお顔を見つめたままでいた。

そんな私に向けて、何やら苦し気に、綺麗なお顔を歪ませてしまった要さんからは、
　
「何もかも真っ白で、俺しか触れたことのなかった美菜に、木村が触れたのかと思うと……腹が立って仕方ない。さっきは、きれいさっぱり消し去ってやるとは言ったが……。悪い、いつものようには優しくしてやれないかもしれない」

怒りに声を震わせているような、そんな苦々しい声が放たれた。
　
さっきの後悔しまくりだった言葉といい、木村先輩への嫉妬心に駆られながらも、私のことを気遣ってくれる今の言葉といい。
　
それらは全部、要さんが私のことを大事に想ってくれてるっていう証に他ならない。
　
……そんな言葉を大好きな人に言われて、嬉しくない筈がない。
　
それに、契約を交わしている時には通常運転だった傍若無人さも、今では随分と影が薄くなって、基本的にはメチャクチャ優しい要さん。
　
そんな要さんが、我儘な子供モードになってみたり、弱気なヘタレモードになってみたり、心配性モード、等々……。
　
そんな一面を垣間見るたび、私がどんどん魅かれてしまっているなんて知らないんだろうな。
　
それを少しでも分かってほしい、今度はその一心で、私は無意識のうちにまた感情で突っ走ってしまうのだった。
　
「さっきも言ったじゃないですか？　もう私は要さんなしじゃいられなくなってるって。昨日だって、要さんのことが好きで好きでどうしたらいいか分かんないくらい好きだって。早く触れてほしくて、もう我慢できないって。そこまで好きになってる要さんになら、何をされても平気なんです。
だから、そんなに焦らしてないで、早く可愛がって、木村先輩の感触なんて消し去っちゃってくださいっ！」
　
でも、そのことで、いつもの可笑しなスイッチが瞬時にオンに切り替わり、ただならぬイロカと、ただならぬヤル気をみるみる漲らせて復活を遂げた様子の要さんは、
　
「そうだったな、分かった。美菜がそこまで言うなら、今すぐ可愛がってきれいさっぱり消し去ってやる」
　
そう言ってくるや否や、私の身体をひょいとお姫様抱っこして、あっというまにベッドまで移動したかと思えば、そうっと布団の上へと優しく横たえると。
　
さっきの言葉とは裏腹に、私の額や頬、唇など、いたるところに、優しいキスの雨を降らしながら、私の顔の両側に手をついてくると、身体に体重をかけないよう慎重に覆いかぶさってきた。