お前は用済みとパーティから追放されたらエースアタッカーの幼馴染もついてきた~最強ハーレムパーティに成り上がる俺の裏で元パーティは転落していく

荒火鬼 勝利

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第38話 死角からの一撃

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 朝。

 窓から差し込む柔らかな陽の光と、遠くでさえずる小鳥たちの声で、ユークはゆっくりと目を覚ました。

「……ふぁあ……よく寝た」

 重いまぶたをこすりながらベッドを出ると、階下へと足を運ぶ。

 昨日のうちに買っておいた朝食用のスープを鍋に移し、かまどで温め直す。
 その間にパンも用意して、テーブルに並べていく。

 そんな中、階段から軽い足音が聞こえてきた。
「……おはよ、ユーク……」

 一番に下りてきたのはセリスだった。金色の長髪は少し乱れ、眠たげな目をこすりながらも、彼女はいつも通りの落ち着いた美貌びぼうを見せていた。

 まだ部分鎧を身に着ける前のインナー姿。そのラインが際立つ軽装は、無防備とも言えるほどセクシーだ。

 しかし見慣れてしまったユークは、特に反応を見せることもなくスープをかき混ぜている。

「おはようニャ、ユーク!」

 階段を元気に駆け下りてきたのはアウリン。今日は長袖のシャツに長ズボンという動きやすさ優先の格好。
 ラフではあるが、彼女の元気な雰囲気にはよく似合っている。

「って、昨日まででその語尾終わりじゃなかった?」
 ユークが眉をひそめて尋ねると、アウリンはぴたっと止まり――

「……あっ、そ、それは……ちがっ、あの、今のはその……癖がっ……!」
 顔を真っ赤にして口調を戻した。うっかり出たらしい。

 そして最後に下りてきたのは、ヴィヴィアン。
「おはよう、ユーク君!」

 おっとりとした口調で、彼女は静かに下りてきた。

 その姿はいつも通り鎧の下に着る戦闘用アンダーウェア姿で――胸元や腰のラインが際立つ、目のやり場に困る格好だった。

 ユークは一瞬だけ視線を泳がせ、すぐにスープへと戻す。
(はぁ……これだけは、なかなか慣れないな……)

 そんなこんなで全員がそろい、温かいスープとパンで軽く朝食をとったあと、一行は準備を整えて出発した。

 その道中、大通りの屋台へと足を運び、昼食用の食料を買いそろえる。

「サンドパン、四つください」

 焼いた肉や香草こうそうを挟んだパン。手軽に食べられる昼食用の定番だ。ユークは人数分を買い、仲間たちにひとつずつ手渡す。

「じゃあ、行こうか」

「うん!」

「了解!」

「いつでも行けるわ~」

 それぞれが頷き返す、ヴィヴィアンの鎧が新調できたことでようやく再開できる本格的な探索に、誰もが真剣な表情を浮かべていた。

 ポータルに着くと、ユークが口を開いた。

「ねえ、一度十四階に行ってみてもいいかな? ちょっと試したいことがあるんだ」

 ヴィヴィアンの鎧が完成するまでは、念のため十一階あたりで狩りをしていたが、今のユークたちは万全の状態だ。
 十四階のケンタウロス程度では、もう相手にならないだろう。

「十四階で何をするのよ?」
 アウリンが不思議そうに尋ねた。

「うん、一回……ひとりでやらせてほしいんだ」

「はあ!?」
 アウリンが驚きの声を上げる。ケンタウロスが相手にならないのは、あくまでパーティーで戦った場合の話だ。ユーク一人で挑むには、まだ脅威といえた。

「無謀よ! 何を考えてるの!?」
「ちょ~っと、調子に乗りすぎじゃない?」
 アウリンとヴィヴィアンが否定的な声をあげる。

「ユークがやりたいなら、いいよ?」
 肯定的なのはセリスだけだった。

「頼むよ……」
 ユークが頭を下げる。

「あーもうっ! 男がそんな簡単に頭を下げるんじゃないわよ! いいわ、屍は拾ってあげる!」

「アウリンちゃん!?」
 思わずヴィヴィアンが声を上げた。

「でも、無理だと思ったらすぐにヴィヴィアンに庇ってもらうのよ。いい?」

 アウリンがユークをにらむように言う。

「わかった!」

「もうっ、ユーク君には甘いんだから……」

 こうして、ユークたちは再び十四階へと転移するのだった。


 久しぶりの十四階。相変わらず真っすぐな通路が延びている。

 しばらく進むと、ひずめの音が一直線にこちらへ向かってくる。

「じゃあ、私たちは手を出さないわよ」
 そう言って、アウリンたちは少し下がった。

「うん、ありがとう」
 ユークは一人、杖を構える。

 十四階のモンスター、ケンタウロスが姿を現す。相変わらず凄まじいスピードだ。

 ユークは詠唱を始め、魔法の準備を進める。

 その間もケンタウロスはどんどん距離を詰めてくる。

「ちょっと! 撃たなくていいの!?」

 アウリンが焦った声を上げる。だが、今、正面から撃っても――たとえフレイムランスだったとしても――クリティカルにはならないだろう。

 ヴィヴィアンが盾を構え直し、セリスは槍を強く握る。

「もう、待てな……!」
 ヴィヴィアンが限界だと動こうとしたその瞬間――

「《フレイムボルトR》!」

 ユークの魔法が発動し、同時にケンタウロスの頭部が爆発する。

「……は!?」
 動こうとしていたヴィヴィアンが動きを止め、アウリンは呆然としている。

「よしっ!」
 ユークは一人、満足げにうなずいていた。

 セリスは、頭部を失い失速しながら光の粒になって消えていくケンタウロスの様子を、興味深そうに眺めている。

「ちょっと! 今、何をしたのよ! 魔法も出てなかったじゃない!」
 アウリンが詰め寄る。

「うわわわっ!」
 えりを掴まれて、ユークの体がぐわんぐわんと揺れる。

「ねえ、まずは戻らない?」
 セリスが周囲を見回しながら提案する。

 このまま時間が経てば、再出現したケンタウロスと遭遇することになる。それを警戒しての言葉だった。

「そうね、いったん戻りましょうか」

 ヴィヴィアンが、今も揉み合っているユークとアウリンを力ずくで引き離し、そのまま入り口の方へ引きずっていった。


 入り口近くの転移ポータルのそばで、ユークたちは車座くるまざになって座っていた。

「天井近くに斜めに魔法陣を設置して、後ろからフレイムボルトで頭を撃ち抜いたんだよ」
 ユークが今回の仕掛けについて説明する。

「へえ~」
 セリスが感心したように声を漏らす。

 アウリンは頭を押さえ、難しい顔をしていた。

「ねえ、アウリンちゃん。私は門外漢もんがいかんだから分からないんだけど、つまり“死角から攻撃した”ってだけよね? どうしてそんな顔をしてるの?」
 ヴィヴィアンが不思議そうに尋ねる。

「いい? 私たちがいつも正面から魔法を撃つのは、少しでも狙いやすくするためなの。それを後ろから、それも走ってる相手に向かって……ユーク、あなた、いったいどんな目してるのよ……」

 よほど高度な空間把握くうかんはあく能力がなければ、こんな芸当はできない。
 普通の魔法使いなら、頭どころか胴体にすら当てるのは困難だろう。

「でもアウリンちゃんなら、あれがあるでしょ? あの、曲がるやつ」
 ヴィヴィアンが命中補正の呪文のことを口にする。

「命中補正はあくまで、ターゲットから外れそうになった時に一度だけ軌道を曲げるっていうものなの。正直、あれで狙った部位に当てるのは逆に難しいのよ」

 つまり、命中補正はあくまでための魔法であって、狙った部位に当てる魔法ではないということだ。
 それでも十分に画期的な呪文ではあるのだが――。

「それに、普通フレイムボルトじゃ、後ろから撃ったってあのスピードには追いつけないでしょ!?」
 アウリンが鋭くツッコむ。

「うん。だから、発射速度を上げた魔法に改造したんだ。フレイムボルトを」
 ユークがさらっと言う。

 つまり、通常のフレイムボルトとは感覚が異なるということで、さらに命中させるのが難しくなるというわけだった。

「はぁ~……でも、敵の背後から撃つのは確かに有効ね。私も後で真似させてもらうわ」

 ユークの行動に驚きつつも、アウリンはアウリンで、しっかりと使える戦法は盗んでいく。

 こうして、驚きと共にユークたちの本格的な探索は再開されるのだった。

 ◆◆◆

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ユーク(LV.20)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
備考:《フレイムボルトR》は発音が「アール」で読みは「ラピット」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
セリス(LV.20)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
備考:ユークが凄いって思われてて嬉しい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アウリン(LV.20)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
備考:たしかに考えれば命中補正で当たるんだから正面から撃つ必要は無かった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ヴィヴィアン(LV.20)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
備考:新調した鎧は前のものより軽くて頑丈だからもう少しギリギリでも庇うことは出来た。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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