134 / 161
第131話 会議は踊る
しおりを挟む「僕、この件に関して一切報告を受けていないんですけど……どういうことか、説明してもらえますか?」
黒髪を短く整え、紫のスーツをきっちりと着こなした若い男――ギルドマスターのロンビナが、柔らかな笑みを浮かべながら静かに問いかける。
「申し訳ありません……私の独断で、報告の必要はないと判断し、報告しませんでした……」
所長のブロモラは顔面蒼白になりながら、大量の汗を何度も拭い、声を震わせて答えた。
「それは問題だ!」
「責任を取って辞任しろ!」
「街が滅ぶところだったんだぞ!」
会議に参加していた者たちから、非難の声が次々に飛ぶ。
「なぜ、報告しなかったのですか?」
ロンビナは微笑みを崩さず、再び穏やかに尋ねる。
「そ、その……あの頃は、オライト殿やカナリート殿からも同様の報告が複数届いておりまして。ですが、確認に行かせても毎回なにも起きておらず……今回も同じだと、勝手に判断してしまいました。本当に申し訳ありません……」
ブロモラは深くうなだれ、言葉の端々に悔いの色をにじませる。
「特に、ユーク殿、そしてルチル殿。私の不手際により、お二人には危険な任務を強いてしまって申し訳なく思う。そして、この街を救ってくださったことに、深く感謝したい」
そう言って、ブロモラはユークとルチルに向き直り、深々と頭を下げた。その顔は青ざめていたが、言葉に偽りはなかった。
頑なだった彼がここまで頭を下げる日が来るとは思ってもおらず、ユークは一瞬、言葉を失ってしまう。
「……さて、オライトさん、カナリートさん」
ロンビナは視線を黒い鎧のオライトと、鉄色の鎧を着たカナリートに向ける。
「ま、待ってくれ! 俺は部下の報告をそのまま所長に伝えただけだ! 調査しろなんて一言も言ってないぜ!」
アラゴナ商国から派遣された騎士、カナリートが慌てて叫ぶ。黄色の髪を立て、どこか軽薄そうな顔つきの男だ。
「吾輩も探索者に懇願されて、所長に調査を依頼しただけなのである。その探索者は調査結果を伝えようとしたときに連絡がつかなくなり、不審には思っていたのだが……」
ルナライト帝国の騎士、オライトは唸るように言葉を続けた。
「待ってくれ!」
停滞しかけていた会議に、ルチルが声を上げて立ち上がる。
「本来なら、霊樹の異常はギルド全体で即座に対応すべき重大な案件だったはずです! それを軽視し、報告を怠ったのは重大な職務怠慢にあたるのではありませんか?」
「たしかに……」
「それは言えてる……」
議場の空気が再びブロモラへの批判へと傾いていく。
「なるほど……ところでルチルさん。素晴らしい魔道具をお持ちですね。映像を記録できるものがあるとは、僕も知りませんでしたよ」
ロンビナが相変わらず微笑みながら、視線をルチルへ向ける。
「ま、まあ、最新式の魔道具ですからね。この街で持っているのは私ぐらいかと……」
若干押され気味に、ルチルが答えた。
「その魔道具で最初から霊樹の様子を撮影し、所長に見せていればよかったのでは?」
ロンビナが顎に手を当て、目を細める。
「それは……!」
ルチルが言葉に詰まる。実のところ、手柄を独り占めにしたかったからだが、もちろん本音を口にするわけにもいかない。
「こ、個人の私物を……なぜギルドのために使わなくてはならないんですか!?」
思わず逆ギレ気味に言い返す。
「まあ、それも一理ありますね。とはいえ、ブロモラさん、証拠があれば動いていたのでは?」
ロンビナは視線をブロモラへ戻す。
「……たしかに。動いたと思います……が、手が足りなかったのも事実ですので。ルチル殿が動かれた方が、対応は早かったでしょう……」
ブロモラは申し訳なさそうに答える。
「つまり、ルチルさんの行動が正しかった、ということになりますね」
ロンビナがふたたびルチルへと視線を向ける。
「……え?」
ルチルが思わず目を瞬かせる。
「ありがとうございます、ルチルさん。あなたのおかげで、この街は救われました!」
そう言いながらロンビナは歩み寄り、ルチルの両手を包み込むようにして握手をする。
「は、はい……」
ルチルは目を白黒させながら応じた。
「君もだよ、ユークくん! 本当に大変だったね。謝礼金はルチルさんから支払われるものとは別に、ギルドからも出させてもらうよ!」
ロンビナは同じようにユークの手も両手で握り、力強く握手を交わす。
「えっ? あ、いえ、そんな……」
ユークは慌てて立ち上がり、恐縮しきりだった。
「とはいえ、ブロモラさんの過失は消えません。この事件が完全に解決するまでは所長を続けていただき、その後、責任を取って辞任していただく。……この案でどうでしょうか?」
ロンビナはユークの手を離し、両手を広げて会議全体に問いかける。
「ギルドマスターは、まだ事件が解決していないとお考えなのですか?」
出席者のひとりが問い返す。
「はい。ルチルさんからユークくんの話を聞いた限りでは、まだ終わっていないと判断しています。ユークくん、申し訳ないけれど、ここで皆さんにもう一度、詳しく説明してくれるかな?」
ロンビナがユークに視線を向ける。
「は、はい! わかりました!」
ユークは、このために呼ばれたのだと察し、静かに頷くと、前に出て説明を始めるのだった。
◆◆◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ユーク(LV.33)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫
備考:説明の練習は家でアウリンとやってきた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ルチル(LV.??)
性別:女
ジョブ:??
スキル:??
EXスキル:《ブレイブハート》
備考:苦労してブロモラを出し抜いたが、発言力は思ったほど上がらなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ブロモラ(LV.??)
性別:男
ジョブ:??
スキル:??
備考:ギルドガード所長。短く整えられた緑の髪と髭が特徴のいかつい顔立ちだが、今はすっかり憔悴している。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ロンビナ(LV.??)
性別:男
ジョブ:??
スキル:??
備考:ギルドの最高責任者であるギルドマスター。20代の若い男性で、常に柔和な笑顔を浮かべている。彼が怒ったり慌てたりする姿を見た者は誰もいない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
21
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい
黒城白爵
ファンタジー
ーーある日、平穏な世界は終わった。
そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。
そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる