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崩壊※
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※この先、軽い無理矢理な描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。
***
こうして────
パーティーは無事、大成功で終わりを迎えた。
僕は寮に帰ってもその興奮が覚めなくて、皆の嬉しそうな表情が脳裏に焼き付いたまま忘れられない。もちろん喜んでもらえるんじゃないかと思って出した案ではあったけど、実際に見るのとではやっぱり違う。これは僕にとって大きすぎる成功体験だった。
アルト先輩には、感謝してもしきれない。
一緒に遊びに行くくらいで、本当に清算しきれるんだろうか……。
彼の言っていた、してみたいこと、というのは怖くてする気もなかったが、今は話だけ聞いてみるのもいいんじゃないかと思い始めている。
まああくまでも、本当に聞くだけ……なんだけどな。
***
朝の陽光が目蓋を差す。
だけど、なんだか今日は寝苦しい。体が思うように動かないのだ。
顔が痒いのに手が届かなくて掻けないし、寝返りだって打てない。そう……まるで、何かに縛られているような。
無理やり動かそうとした手首が、痛くて痛くて────
「…………な、ん…だ……?」
「あ、おきた? おはようユハ」
ミカイルのやけに弾んだ声が聞こえる。しかも何故か近くで。
まだ眠たい瞼を無理やりこじ開けて見れば、そこには僕のベッドの縁に座って、薄く微笑んでいるミカイルがいた。
「あ……ミカ……?」
「うん。ぼくだよ。おはよう」
すりすりと、頬を撫でられる。同時に、覚醒しきれていない脳内には警鐘が鳴る。
何かがおかしい。
どうしてミカイルは僕のベッドにいるんだ?
なんで、いつも僕より遅くまで寝ているのに、もう起きているんだ?
それにどうして────僕の両手と両足は縛られてるんだ?
「……っ!! なんだよこれ……!?」
自分の脳内で反芻して気づいた。
頭の上でガチガチに縛られた両手。ピッチリと縛られた両足。
そして、僕の頬を撫でながらうっそりと微笑むミカイルに。
「きづいちゃった? ああ……手首が赤くはれてかわいそう。でもごめんね、ユハにあばれられると困るから、こうするしかなかったんだよ」
どこかたどたどしく言ったミカイルは、まるで初めて出会った頃の幼い子供みたいだった。
「な、何してるんだよミカ……! 早く取ってくれ!」
「だめだよ。だって、取ったらいなくなっちゃう。ぼくとずっといっしょにいてくれるって、やくそくしたよね?」
「はあ……!? その話とこれに何の関係があるんだよ! いいから早く外せっ!!」
「…………はあ。あんまりらんぼうはしたくなかったんだけど」
訳が分からなさすぎてバタバタと暴れていれば、表情を消したミカイルが僕の上に馬乗りになってきた。
薄気味悪さに全身が震える。今までにもミカイルが怒ってこんな風になることはあったが、ここまででは決してなかった。
「こっ、怖い……! 本当に、やめてくれ……!!」
「だいじょうぶ。こわいことなんてしないよ。ユハはぼくのものだって、教えてあげるだけ」
「……? な、なんだって……? ぅ、んッ!」
首筋に柔らかいものが触れて、チクリと刺されたような痛みが走る。恐る恐るぎゅっと瞑っていた瞼を開ければ、その場所を熱い舌でねぶられた。
「あ、ッッ……! な、なにして……!?」
「あはっ! きれいについたね……。ぼくだけの、ぼくだけのユハ……」
愛おしそうに、そして慈しむように、ミカイルはその場所をひたすら撫でている。
だけど僕には、その行為の意味すら分からなくて。今はひたすら、疑問を投げかけることしかできない。
「っ、ミカイル……! どうしたんだよ一体!? なんで……なんでこんなことするんだ……!?」
「なんで? ぼくがしたいからだよ……?」
きょとんと首をかしげたミカイルは、何がおかしいのかも分かっていない様子で僕を見ていた。
「い、意味がわからないっ……」
「ああ……こんなんじゃあ足りないよね」
僕は会話がしたいのに、言葉の通じないミカイルによって何故か服を捲し上げられる。ヒヤリと冷たいミカイルの手が腰を擦った。
加えて、目の前にはうっとりと粘りつくような視線。彼は驚くことに、僕の体で悦楽に顔を染め、その手を押し当てていた。
するする。するする。
僕の制止も意味をなさず、段々とミカイルの手は上がってきて、突起のある場所を撫でられる。
「あ、ッ! な、に……っ、ひッ!?」
「かわいい……かわいいね。ユハ。ずっと……ずっとこうしたかったんだ」
「あっ、ぁ、や、やめ…ぇ……! ん゙、ぅッ!」
「ふふ……へんだよね? おとこが、おとこの体をさわりたいなんて。ぼくもね……きらわれたくなかったから、言えなかった。でも、もういいよ。あいつのものになったんなら、もういい。ぜーんぶ……どうでもよくなっちゃった」
「ぁあ゙、ッ!」
強く、突起を摘ままれる。
こんなところ、誰にも触られたことなんてなかったのに。怖くて怖くて仕方がないのに。なのに、反応してしまう自分の体が一番分からない。
ただ分かるのは……、脳が蕩けそうなほど熱いっていうことだけ。
「ぼくをみて、ユハ。ぼくだけをみて……」
ゆらゆらとミカイルの瞳が揺れている。琥珀色の、綺麗な綺麗な瞳が。
「ぼくをすきになって。ぼく以外のだれともなかよくしないで。ぼくを……」
「……~ッッ! ぁ……んぅ! や、めっ……」
「ぜったいにぜったいにアイツになんかわたさない。あしたもぼくといよう? ぼくとこうやって、ずっとずっといっしょにいようね……」
「ひ、ッッ……!?」
また首を強く吸われた瞬間、ミカイルの手が僕のズボンの中へ入ってきていた。
そのまま、下着の内にあるものを掴むと、それを緩く手で擦られる。経験したことのない快感が僕を襲っていた。
「ぁあ゙ッッ……!?」
「ふふ……かたくなってきた……。ぼくの手、きもちいい?」
「はッ……ぁ、だ、だめ……あ、あッ! へ、へんに……なる……ッ!」
「だいじょうぶだよ。なにもへんじゃない。もっとぼくに集中して……」
訳の分からないことをしてくるミカイルをどうにかしたくて、必死に縛られた紐を引きちぎろうと試みる。
しかし、強すぎる快感に飲まれた僕は、いつも以上に力が出なくて、なす術もない。
グチュグチュグチュ。
粘性の垂れたそれを、ミカイルの綺麗な手のひらが強く擦っていた。
「ぁ、あ゙っ、ミ…カ……、ぅ、あ゙ッ……!!」
「ぼくの名前、もっとよんで。もっと、ぼくのことだけかんがえて……」
「へ、へんだッ……! な…ぁ、なんか、でッ…そう……! もっ、もれ……ッ!」
「うん。だしていいよ。ユハのイクとこ、みたい……」
速度が増す。同時に突起も摘ままれて、僕の視界はチカチカと、星が飛ぶようにその時は訪れた。
「あッ! あ゙あ゙……ッッ!!」
ビュッと、勢い良く何かが飛び出る。
ミカイルの手を汚したそれは、いつもそこから出るものと違って白い。僕は何か言ってやりたかったのに、彼はそれをひどく嬉しそうに眺めると、こちらに向かって妖艶な笑みを浮かべた。
「ああ……かわいい、ユハ」
ミカイルの顔が近づく。
「んっ!……ふ、ぅ……っ」
「は……っ、……ん…」
顔を背ける暇もなく、僕の口内を蹂躙するように、かき回される。全く対応できない僕は、息ができなくて、窒息しそうで。
「はあっ、ま、って……んっ、……っは、ミ、カ……!」
「……ん、……ああ……ごめんね……、」
酸素を取り込めていない僕に気づいたミカイルが、ようやく顔を離してくれた。だけど、またもや下腹部に違和感を覚える。
いつの間にか、白濁としたもので汚れたミカイルの手が、僕の尻の割れ目へ入れようとしていた。
ぼーっとした頭でも分かる。それだけは絶対に、止めなければならないと。
「っ! やめろ……!!」
僕は思い切り縛られた腕をぶん回して抵抗した。すると、今までうっとりと微笑んでいたミカイルも、表情を消して手を止める。
「なに? ここからが大事なんだから、あばれないでよ」
「もう、や…めろっっ!!! ミカイル!!」
「…………うるさいな。だまって」
「ぁ、い、やだ……っ!!」
「ああもう。言うこと聞いてってば。……どうしていつもいつもいつも……ユハはぼくの言うこと聞いてくれないの? 他のどうでもいいやつらはすぐぼくの言いなりになるのに、なんでユハだけ、なんでユハだけが……」
「……っ、ミカイルッ!! これ以上……やるんだったらっ、ほんとうに! おまえのことっ、きらいになる……!!!」
ピタリとミカイルの動きが止まる。息を飲んで、呆然と目を見開いたミカイルは、我に返ったように焦り出した。
「え……? い、いまなんて……」
「だからっ……今すぐやめないと……! ミカイルのこと、嫌いになるって言ってるだろ……!?」
「い、いやだ……いやだいやだいやだ!! きらいにならないで! ごめん、ごめんなさい。もうしないよ、もうにどとしないから、きらいにならないで! いやだ、それだけはいやだ……!!」
僕の顔にポロポロと雫が垂れ落ちてくる。口に入ればしょっぱい。
止まったミカイルの手は、必死に僕の腕の縄をほどこうとしていた。
しかし、どれだけ強く縛ったのか知らないが、中々外せていない。ただずっと、ミカイルは謝罪の言葉をぶつぶつと繰り返していて、以前にも見た、まるで壊れたロボットのようだった。
「はっ、外した! これでぼくのこときらいにならない!?」
「………………」
訴えかけるような表情が見ていられなくて、僕は顔を背ける。
「……どっか行ってくれ。今は、ミカイルの顔を見たくないんだ………」
「……っ!」
息を飲む音。
ふらふらと、ミカイルが後ずさる気配がした。
「ご……ごめんなさい……」
「しばらく……一人にしてくれ……」
「………………」
そして、無言でミカイルは出ていった。
バタバタと、逃げるように。この場の見たくない現実から、恐れるようにして。
***
こうして────
パーティーは無事、大成功で終わりを迎えた。
僕は寮に帰ってもその興奮が覚めなくて、皆の嬉しそうな表情が脳裏に焼き付いたまま忘れられない。もちろん喜んでもらえるんじゃないかと思って出した案ではあったけど、実際に見るのとではやっぱり違う。これは僕にとって大きすぎる成功体験だった。
アルト先輩には、感謝してもしきれない。
一緒に遊びに行くくらいで、本当に清算しきれるんだろうか……。
彼の言っていた、してみたいこと、というのは怖くてする気もなかったが、今は話だけ聞いてみるのもいいんじゃないかと思い始めている。
まああくまでも、本当に聞くだけ……なんだけどな。
***
朝の陽光が目蓋を差す。
だけど、なんだか今日は寝苦しい。体が思うように動かないのだ。
顔が痒いのに手が届かなくて掻けないし、寝返りだって打てない。そう……まるで、何かに縛られているような。
無理やり動かそうとした手首が、痛くて痛くて────
「…………な、ん…だ……?」
「あ、おきた? おはようユハ」
ミカイルのやけに弾んだ声が聞こえる。しかも何故か近くで。
まだ眠たい瞼を無理やりこじ開けて見れば、そこには僕のベッドの縁に座って、薄く微笑んでいるミカイルがいた。
「あ……ミカ……?」
「うん。ぼくだよ。おはよう」
すりすりと、頬を撫でられる。同時に、覚醒しきれていない脳内には警鐘が鳴る。
何かがおかしい。
どうしてミカイルは僕のベッドにいるんだ?
なんで、いつも僕より遅くまで寝ているのに、もう起きているんだ?
それにどうして────僕の両手と両足は縛られてるんだ?
「……っ!! なんだよこれ……!?」
自分の脳内で反芻して気づいた。
頭の上でガチガチに縛られた両手。ピッチリと縛られた両足。
そして、僕の頬を撫でながらうっそりと微笑むミカイルに。
「きづいちゃった? ああ……手首が赤くはれてかわいそう。でもごめんね、ユハにあばれられると困るから、こうするしかなかったんだよ」
どこかたどたどしく言ったミカイルは、まるで初めて出会った頃の幼い子供みたいだった。
「な、何してるんだよミカ……! 早く取ってくれ!」
「だめだよ。だって、取ったらいなくなっちゃう。ぼくとずっといっしょにいてくれるって、やくそくしたよね?」
「はあ……!? その話とこれに何の関係があるんだよ! いいから早く外せっ!!」
「…………はあ。あんまりらんぼうはしたくなかったんだけど」
訳が分からなさすぎてバタバタと暴れていれば、表情を消したミカイルが僕の上に馬乗りになってきた。
薄気味悪さに全身が震える。今までにもミカイルが怒ってこんな風になることはあったが、ここまででは決してなかった。
「こっ、怖い……! 本当に、やめてくれ……!!」
「だいじょうぶ。こわいことなんてしないよ。ユハはぼくのものだって、教えてあげるだけ」
「……? な、なんだって……? ぅ、んッ!」
首筋に柔らかいものが触れて、チクリと刺されたような痛みが走る。恐る恐るぎゅっと瞑っていた瞼を開ければ、その場所を熱い舌でねぶられた。
「あ、ッッ……! な、なにして……!?」
「あはっ! きれいについたね……。ぼくだけの、ぼくだけのユハ……」
愛おしそうに、そして慈しむように、ミカイルはその場所をひたすら撫でている。
だけど僕には、その行為の意味すら分からなくて。今はひたすら、疑問を投げかけることしかできない。
「っ、ミカイル……! どうしたんだよ一体!? なんで……なんでこんなことするんだ……!?」
「なんで? ぼくがしたいからだよ……?」
きょとんと首をかしげたミカイルは、何がおかしいのかも分かっていない様子で僕を見ていた。
「い、意味がわからないっ……」
「ああ……こんなんじゃあ足りないよね」
僕は会話がしたいのに、言葉の通じないミカイルによって何故か服を捲し上げられる。ヒヤリと冷たいミカイルの手が腰を擦った。
加えて、目の前にはうっとりと粘りつくような視線。彼は驚くことに、僕の体で悦楽に顔を染め、その手を押し当てていた。
するする。するする。
僕の制止も意味をなさず、段々とミカイルの手は上がってきて、突起のある場所を撫でられる。
「あ、ッ! な、に……っ、ひッ!?」
「かわいい……かわいいね。ユハ。ずっと……ずっとこうしたかったんだ」
「あっ、ぁ、や、やめ…ぇ……! ん゙、ぅッ!」
「ふふ……へんだよね? おとこが、おとこの体をさわりたいなんて。ぼくもね……きらわれたくなかったから、言えなかった。でも、もういいよ。あいつのものになったんなら、もういい。ぜーんぶ……どうでもよくなっちゃった」
「ぁあ゙、ッ!」
強く、突起を摘ままれる。
こんなところ、誰にも触られたことなんてなかったのに。怖くて怖くて仕方がないのに。なのに、反応してしまう自分の体が一番分からない。
ただ分かるのは……、脳が蕩けそうなほど熱いっていうことだけ。
「ぼくをみて、ユハ。ぼくだけをみて……」
ゆらゆらとミカイルの瞳が揺れている。琥珀色の、綺麗な綺麗な瞳が。
「ぼくをすきになって。ぼく以外のだれともなかよくしないで。ぼくを……」
「……~ッッ! ぁ……んぅ! や、めっ……」
「ぜったいにぜったいにアイツになんかわたさない。あしたもぼくといよう? ぼくとこうやって、ずっとずっといっしょにいようね……」
「ひ、ッッ……!?」
また首を強く吸われた瞬間、ミカイルの手が僕のズボンの中へ入ってきていた。
そのまま、下着の内にあるものを掴むと、それを緩く手で擦られる。経験したことのない快感が僕を襲っていた。
「ぁあ゙ッッ……!?」
「ふふ……かたくなってきた……。ぼくの手、きもちいい?」
「はッ……ぁ、だ、だめ……あ、あッ! へ、へんに……なる……ッ!」
「だいじょうぶだよ。なにもへんじゃない。もっとぼくに集中して……」
訳の分からないことをしてくるミカイルをどうにかしたくて、必死に縛られた紐を引きちぎろうと試みる。
しかし、強すぎる快感に飲まれた僕は、いつも以上に力が出なくて、なす術もない。
グチュグチュグチュ。
粘性の垂れたそれを、ミカイルの綺麗な手のひらが強く擦っていた。
「ぁ、あ゙っ、ミ…カ……、ぅ、あ゙ッ……!!」
「ぼくの名前、もっとよんで。もっと、ぼくのことだけかんがえて……」
「へ、へんだッ……! な…ぁ、なんか、でッ…そう……! もっ、もれ……ッ!」
「うん。だしていいよ。ユハのイクとこ、みたい……」
速度が増す。同時に突起も摘ままれて、僕の視界はチカチカと、星が飛ぶようにその時は訪れた。
「あッ! あ゙あ゙……ッッ!!」
ビュッと、勢い良く何かが飛び出る。
ミカイルの手を汚したそれは、いつもそこから出るものと違って白い。僕は何か言ってやりたかったのに、彼はそれをひどく嬉しそうに眺めると、こちらに向かって妖艶な笑みを浮かべた。
「ああ……かわいい、ユハ」
ミカイルの顔が近づく。
「んっ!……ふ、ぅ……っ」
「は……っ、……ん…」
顔を背ける暇もなく、僕の口内を蹂躙するように、かき回される。全く対応できない僕は、息ができなくて、窒息しそうで。
「はあっ、ま、って……んっ、……っは、ミ、カ……!」
「……ん、……ああ……ごめんね……、」
酸素を取り込めていない僕に気づいたミカイルが、ようやく顔を離してくれた。だけど、またもや下腹部に違和感を覚える。
いつの間にか、白濁としたもので汚れたミカイルの手が、僕の尻の割れ目へ入れようとしていた。
ぼーっとした頭でも分かる。それだけは絶対に、止めなければならないと。
「っ! やめろ……!!」
僕は思い切り縛られた腕をぶん回して抵抗した。すると、今までうっとりと微笑んでいたミカイルも、表情を消して手を止める。
「なに? ここからが大事なんだから、あばれないでよ」
「もう、や…めろっっ!!! ミカイル!!」
「…………うるさいな。だまって」
「ぁ、い、やだ……っ!!」
「ああもう。言うこと聞いてってば。……どうしていつもいつもいつも……ユハはぼくの言うこと聞いてくれないの? 他のどうでもいいやつらはすぐぼくの言いなりになるのに、なんでユハだけ、なんでユハだけが……」
「……っ、ミカイルッ!! これ以上……やるんだったらっ、ほんとうに! おまえのことっ、きらいになる……!!!」
ピタリとミカイルの動きが止まる。息を飲んで、呆然と目を見開いたミカイルは、我に返ったように焦り出した。
「え……? い、いまなんて……」
「だからっ……今すぐやめないと……! ミカイルのこと、嫌いになるって言ってるだろ……!?」
「い、いやだ……いやだいやだいやだ!! きらいにならないで! ごめん、ごめんなさい。もうしないよ、もうにどとしないから、きらいにならないで! いやだ、それだけはいやだ……!!」
僕の顔にポロポロと雫が垂れ落ちてくる。口に入ればしょっぱい。
止まったミカイルの手は、必死に僕の腕の縄をほどこうとしていた。
しかし、どれだけ強く縛ったのか知らないが、中々外せていない。ただずっと、ミカイルは謝罪の言葉をぶつぶつと繰り返していて、以前にも見た、まるで壊れたロボットのようだった。
「はっ、外した! これでぼくのこときらいにならない!?」
「………………」
訴えかけるような表情が見ていられなくて、僕は顔を背ける。
「……どっか行ってくれ。今は、ミカイルの顔を見たくないんだ………」
「……っ!」
息を飲む音。
ふらふらと、ミカイルが後ずさる気配がした。
「ご……ごめんなさい……」
「しばらく……一人にしてくれ……」
「………………」
そして、無言でミカイルは出ていった。
バタバタと、逃げるように。この場の見たくない現実から、恐れるようにして。
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