ゴリラ似の俺、異世界でハーレム生活するはずが神様の手違いで動物園に転生しました

六甲のぼる

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認めたくないがバナナを食べると似合ってしまう件について

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俺の名前は植松健人(うえまつ・けんと)。24歳。筋肉と共に生きてきた。

見た目は人間。でも、神様のミスで転生先が異世界ではなく動物園。
さらに姿は人間のままなのに、なぜか周囲にはゴリラとして認識されてしまっている。

つまり今の俺は──
中身:日本人男性 見た目:人間 扱い:ゴリラ

どうしてこうなった。俺のチートハーレム生活はどこにいった。

今日も俺は檻の中で、目の前に置かれた熟れたバナナ三本をにらんでいた。
見た目があざとい。黄色の自己主張が激しい。

「ケントく~ん、今日もバナナだよ~」

おじさん飼育員の声に耳を塞ぎたくなるが、実際には手で頭を抱えた。

そんなときだった。

「……もし食べにくいなら、剥いてあげますよ?」

声をかけてきたのは、若い女性飼育員──佐々木あかりさん。
ポニーテール、真っ直ぐな眼差し、白く細い指先。
彼女は、俺の前で一本のバナナを手に取ると、優しく皮をむき始めた。

その瞬間、俺の脳に電撃が走った。

なぜなら──

(や、やめろ! それ以上はだめだ!!)

俺の脳内で、バナナの代わりに、妙に生々しい何かを想像してしまったのだ。

佐々木さんの指が、慎重に、でも確実に皮をむいていく。
根元から、ぬるりと先端を露わにしていく動き。

(だ、だめだってそれは……俺の理性が……!!)

目の前のバナナは、ただの果物なのに、
彼女の指先が動くたびに、俺の中の“男子高校生の妄想レベルの何か”が爆発寸前だった。

(なんでそんな丁寧にむくの!? その距離感で!? そんな気遣い込めてくる!?)

鼻血が出る一歩手前だった。
だが佐々木さんは、まったくそんな気配もなく、無垢な笑顔で俺に差し出してきた。

「できたよ。はい、どうぞ」

……罪深いにもほどがある。

俺はバナナを受け取り、一口食べた。

うまい。くやしいほど、うまい。

「やっぱり……このゴリラ、変だよね。雰囲気が人間っぽすぎる」

佐々木さんがそうつぶやいた瞬間、俺の中で何かが温かく灯った気がした。

この世界で初めて、「俺の中の人間」を見てくれた気がしたからだ。

檻の中でそっとつぶやく。

「ウホ……(訳:君だけが、わかってくれた)」

──そんな静かな余韻の中。

ふと視線を上げると、目の前のガラスに自分の姿が映っていた。

バナナを握りしめ、背中を丸めて座り込み、口いっぱいに頬張っている。

目の奥はやや虚ろで、噛みしめるときに小さく「ンン……」と声が漏れていた。

──その姿が。

ゴリラすぎた。

「ちょ、まっ──誰だよこのゴリ……俺か!? 俺かよッ!!!」

一気に立ち上がってガラスに詰め寄る。

「いやいやいや待て待て!! 姿は人間なんだよ!? なんでこんなに! こんなにもゴリラ味がッ!!」

ドンッ! とガラスに拳を叩きつけてしまった。来園者の子供がビクッとする。

「……ウホォォォーーーーー!!!!(訳:納得いかねぇぇぇ!!!!)」

俺の声が園内にこだまする。もちろん、他人にはただのゴリラの雄叫びにしか聞こえない。

ハーレム生活どころか、自分自身との認識の闘いが始まった気がした。
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