ゴリラ似の俺、異世界でハーレム生活するはずが神様の手違いで動物園に転生しました

六甲のぼる

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「脱走計画ウホブレイク、開始3秒で崩壊。」〜理性とバナナと勘違いの夜〜

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　俺は決めた。

　この動物園から――脱走する。

　なぜならここでは、
　・ピンクのTシャツを着せられ、
　・名前を「ケンティ♡」と呼ばれ、
　・ギャルに笑顔で手を振られながら、
　バナナで前を隠すゴリラとして生きているからである。

　もはや尊厳が地面に転がっている。

⸻

「……ウホ（ここから出て、人間として生き直す）」

　俺は綿密な計画を立てた。
　その名も――『ウホブレイク』。

　

　

　※意味はない。

　

　

【作戦概要】
① 飼育員の見回り時間を避ける
② 枝を鍵穴に差し込み、柵を開ける
③ 背中にバナナバッグを背負って脱出
④ 最寄りの駅へ走り、
　「ちょっとオシャレでイケてる人が行きそうな服屋」で服を買う予定。
　（目標：人間に見える服を調達。できればモテたい）

⸻

「ウホ……（どうせなら雰囲気イケメンコーデで……無地シャツ、黒パン……）」

　だが、俺はまだ知らなかった。
　ゴリラサイズに対応している“ちょっといい服屋”など、この世に存在しないということを。

⸻

　夜。
　園内が静まり返る。

　俺は柵の前に立ち、深呼吸をひとつ。

「ウホ……（……いける。俺はやれる）」

　鍵穴に枝を差し、慎重に回す。
　カチャ……カチャ……カチャリ。

　

　

　＼開いた。／

　

　

　俺「よっしゃぁぁぁ！！！」
　俺（すぐ叫ぶな！！！！）

⸻

　案の定、隣で寝ていたジャクソン（180kg）がモゾモゾと目を覚ます。

「ウホッ（出るの？脱走？）」
「ウホ（うん）」
「ウホホ（行ってら～。バナナ残してね）」
「ウホ（冷蔵庫かお前は）」

⸻

　慎重に柵を開け、足を一歩外へ踏み出す――その瞬間。

「えっ！？ゴリラ、出てるくない！？！？！？」

「うわ～♡ 野生の開放感！？自然界回帰！？えぐい～♡」

　ギャルがいた。よりによってギャルがいた。

　夜の特別見学ツアーか！？
　なぜこのタイミングなんだ運営！！！

⸻

「ゴリラって、脱走もかわいいんだね～♡」

「がんばれ～♡ ピュアくん♡ 自由へ羽ばたいて～♡」

　自由と同時に羞恥が押し寄せてきた。

⸻

　俺は動揺し、バナナバッグをぎゅっと背負い直した。

　だがその瞬間――

　袋の隙間から1本のバナナが、
　するりと股間の前に滑り落ちた。

　

　

　きれいに、ジャストイン。前に。

　

　

「きゃーっ♡ え！？バナナで隠してる！？狙ってる！？！？！」

「天性のセンス！？セクシーゴリラ系男子！？♡」

　違うううううう！！！！自然現象ですぅぅぅぅ！！！！！！

⸻

　その直後、警報が鳴り、飼育員たちが駆けつけた。

「ケンティ！おうちに帰ろっか♡」
「夜は危ないよ～♡ バナナ持っててえらいね～♡」

　全部のセリフがじわじわ恥ずかしい！！！！！！！

⸻

　結果、俺は――
　バナナを1本抱えたまま、5人の飼育員に両脇を担がれ、静かに連行された。

　ギャルたちの「またね～♡ ピュアくん♡」という歓声を背に。

　……二度と脱走なんてしない。

⸻

　翌朝、園内の掲示板にはこう書かれていた。

『ゴリラの健人くん、昨夜ちょっぴりお散歩に出ちゃいましたが、
バナナとともに元気に帰ってきました♡』

　その書き方やめろ！！！
　俺が“バナナを持って徘徊してただけのやつ”みたいになってんじゃん！！！！

⸻

　柵の中、俺は空を見上げながらそっと自分にツッコんだ。

　

　

　「いや、バナナ落ちただけで人生崩壊って、
　どんなバナナ系ギャグ世界だよ！！！！！！！！！！」

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