魔法少女は華麗に舞い散る

Cecil

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私……死んじゃうの?

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本当なら、学校になんて行きたくない。
 友達の居ない私にとって、学校と言う場所は処刑場と変わらない。
 周りは、友達と楽しそうにSNSの話しや芸能人の話しに、恋愛やエッチな事とガールズトークに盛り上がっているのに、私は一人で寂しく本を読む振りをして、周りの会話に耳をそば立てているのだから、本当に嫌になる。

朝比奈陽菜は、都内の女子校に通う一年生である。
 内気な性格とネガティブな思考もあり、今までに友達と言う存在が出来た事は、一度たりともない。

本当に悲しいが、本当に友達が出来た事がないのである。

最近はコミュ障の人が増えたとかで、一人でいる人が増えたらしいが、陽菜は出来るのならお友達が欲しい。

出来るのなら、クラスの中心人物であり、陽菜のタイプである河北聖かわきたひじりとお友達になりたい。

陽菜は、昔から百合っ娘だった。可愛い女の子に綺麗な女の子。そしてロリッ娘と女の子にしか興味のない女の子だった。

だから周りの女の子が、昨日彼氏とエッチしたとか、ゴムを付けてくれなくて最悪! なんて話には興味はない。
 
興味があるのは、女の子との恋愛と女の子とのエッチである。そんな陽菜は、聖の事が入学以来ずっと気になっていた。

今まで見てきたどの女の子よりも、綺麗で美しくて、気が付いたらいつも彼女の事を目で追っている自分がいた。

でも、内気な陽菜は一度たりとも聖に声を掛けられていない。
 聖が一人になった時にと、チャンスを窺うが彼女が一人になる事はなかった。

彼女の側には、幼馴染と言われている女の子がいつも居た。

西島ここあと呼ばれる女の子で、可愛らしい顔立ちで、体型は普通体型で胸の大きさはきっと自分と変わらないと思われる。

ここあが常に聖といるので、声を掛けたくても掛けられない。普通ならここあがいても、話したいのなら、気にせずに声を掛けるのだろうが、内気な性格の陽菜にはとても出来る芸当ではなかった。

お話ししたいな。聖さんの綺麗な顔を間近で拝みたいな。綺麗な声を近くで聞いて、耳を癒したいな。

近くで女子トークに興じる女子の会話は、本当に下世話である。

この前寝た男は、アソコが小さかったとか、エッチが下手だの早漏だのと、そんなのは人それぞれでしょと、女の子だって、胸の大きさは個人個人で違うのだから、男の人のだって個人差はあるでしょと思いながら、小説を読む振りをして、聖を見つめる。

「ねぇ、聖。あの娘また見てるよ。きっと聖と話したいんだよ」
 陽菜の視線に気付いたここあが、聖にその事を伝える。
「そうね。でも、朝比奈さんだっけ、彼女内気そうだから、彼女の心の準備が出来るのを待ちましょう」
「そんな事を言ってたら一学期終わるかもよ」
 きっと大丈夫よと微笑む聖に、聖らしいねとここあも笑顔になる。

そんな二人を見て、わたしもあの中に入れたならと、そうだったらいいなと思いながら聖とここあの二人が楽しそうに、仲睦まじく会話する姿を見ていた。

一人寂しく下校しながら、そう言えば今日はいつも読んでる百合漫画の新刊が出る日だと、陽菜は本屋に寄る為にいつもの下校ルートを外れて本屋に向かう。

この行動が陽菜の人生を大きく変える事になるなんて、そんな事は露と思わずに新刊を早くゲットしないとと、陽菜は本屋へとルンルン気分で向かっていた。

陽菜は、本屋になんて寄らないで素直に帰れば良かったと、新刊なんてネットで買って届けて貰えば良かったと、思い切り後悔していた。

目の前には、ダークメアと呼ばれる悪魔が自分を捕食しようと、妖しい瞳でその口からは涎を垂らして、自分を見ていた。

どうして? どうして自分なの?
 こんなぼっちの私を狙わなくても、恋愛もエッチも経験して女の悦びを既に知ってる人にしたらいいのにと、そんな不条理な事を思いながら、ダークメアを見つめる。

恐怖で足が竦んでしまい、陽菜はその場に尻餅をついて、恐怖から失禁までして殺さないでと食べないでと、言葉の通じない相手に懇願している。

お願いだから、お願いだから見逃してと必死に懇願する。

「私、まだ恋愛もエッチも経験してないんだよ。何も経験しないで死ぬなんて……そんなの嫌だよ」
 恐怖と涙で、顔はぐしゃぐしゃになりながらも、死にたくないともっと色々な事を経験したいと、そして聖とお友達になりたいとその事だけが、陽菜の頭を駆け巡る。

キッヒッヒと嫌らしい笑みを浮かべながら、ダークメアは、ジリジリと陽菜との距離を詰めて行く。

「やっぱりあの娘、朝比奈陽菜ちゃんだっけ? 聖とお友達になりたいんだよ」
 ここあは隣りを歩く聖に、明日は聖から話し掛けてあげなよと、聖の小振りな胸をツンツンする。
「もうっ! こんな公衆の面前で変な所を触らないでよ!」
「にゃら、部屋ならいいのかにゃ? その小振りなおっぱいの感度に興味津々だにゃ」
 嫌らしい笑みを浮かべながら、ここあが変態発言をする。

そんなここあに部屋でも駄目ですと、聖はきっぱりと断る。
「つれないにゃ~昔はお風呂にも一緒に入ったのに、最近は入ってくれないし」
 ここあはある事情から、聖の家でお世話になっている。

「だって、ここあったら変な所ばっかり触るから」
「おっぱいとか、アソコの事かにゃ? でも聖も満更でもないって感じだけど」
「そ、それは……」
 おっぱいやアソコを触られたら、誰だって反応してしまうでしょと、聖は小声で答える。
「にゃは。それだけうちらも成長したって事だよね」
 ついこの間までは、ここあに触られても何も感じなかったのに、最近は反応してしまう。
 反応してる姿を見られるのが恥ずかしくて、最近は一人でお風呂に入っている。

「でも、うちは聖に恋人出来たら寂しいな。可愛い女の子なら許すけど」
「ここあ。うん? 可愛い女の子なら許すってどう言う意味かしら?」
「そのままだけど、だって聖って絶対に男の子に興味ないよね」
「そ、そんな事は……多分ないと思うけど」
 ここあはニヤリと怪しい笑みを浮かべると、聖の手を握る。
「こ、ここあ?」
「聖は、聖のままでいいんだよ。うちは聖が女の子が好きでも変わらないし、うちも正直わからないんだよね」
 ずっと女子校にしか通って来なかったから、ここあも男の子と言う生き物がわからなかった。

「それに、男の子のアソコなんて生で見たくないし」
「それはあるわね」
 二人は、偶にネットでエッチな動画を観たりするが、観る度に絶対に無理だよねと笑い合っている。
 陽菜の命の灯火が消え掛かっているなんて、二人は全く知らずにそんなガールズトークに華を咲かせながら、楽しく帰宅していた。

もう無理だ。
 あと僅かな時間で、私の命の灯火は消えてしまう。
「お、お母さん……お父さん……ごめんなさい」
 ゴフッ! と口から大量の血飛沫を吐きながら、陽菜は両親にごめんなさいと、こんな所で死んでごめんなさいと謝る。

きっと、今日も美味しい料理を作って待ってくれているお母さん。
 口下手だけど、いつも自分の事を心配してくれる優しいお父さん。
 田舎に居るお爺ちゃんやお婆ちゃん。

本当に……本当に……
 ごめんなさい。
 恋人の一人でも作って安心させてあげたかった。
 女の子が好きだから、子供は無理でも幸せな自分の姿を見せて、安心させたかった。

どうして、どうして私はもっと頑張らなかったの?
 どうして、もっと積極的にならなかったんだろう?

幼稚園の時も、小学生の時も、中学生の時も逃げてばかりで、進学しても逃げてばかりで、結局聖さんと話す事すら出来なかった。

薄れゆく意識の中で、陽菜はせめて最後に聖とお話ししたかったなと、聖の綺麗な笑顔を思い浮かべる。

ダークメアに咥えられた陽菜の顔には、後悔と最後に憧れの聖と恋人にでもなってる妄想でもしているのだろうか?

とても幸せな顔をしながら、陽菜は大量の血を吐くと、短い人生に終わりを告げた。
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