魔女は微笑みながら涙する

Cecil

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異世界にて

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意識が覚醒していく。
 意識が完全に覚醒すると、そこは知らない世界だった。
 二人は顔を見合わせるが、此処がサギリが作り出した世界なのだと、自分達は修行の為にサギリの魔法で、この世界に来たのだと思い出す。
 正確には、サギリの魔法で異世界に飛ばされているのだが、この時の二人はサギリが作り出した世界だと思い込んでいた。
 二人は取り敢えず辺りを見回して、敵が居ない事を確認する。

「この世界から自力で脱出しなさいって事よね? 」
「多分。先生は、耐えきれなかったら廃人になるって」
「つまりは、この世界に閉じ込められて永遠に彷徨うって事ね」
 沙霧と雫は、立ち上がるとゆっくりと歩き出す。
 この世界の時間と現実の世界の時間がリンクしているのかは不明だが、先ずはこの世界が、どんな世界なのかを知る必要がある。

自分達がいた世界と同じなら、脅威となるのは妖だけだが、もしゲームやアニメの世界の様な世界なら、魔物やドラゴンと言った生物も存在しているかもしれない。
 周りに注意を払いながら歩みを進める。

体感にして一時間程歩いてみたが、景色は然程変わらない。
「何もないね」
「そうね。先ずは街とか見つけないと、食糧とか水は確保しないと」
 贅沢を言うなら寝床もだが、先ずは生きていくのに必要な食糧や水の確保が、優先事項である。

更に歩みを進めると、一軒の古びた小屋を見つける。
 二人は取り敢えず休めるかもと、小屋に近づくと中を窺う。
 人の気配はないが、一応ノックしてみたがやはり反応はない。
 二人は、失礼しますと言うと小屋に入ってみる。
 暫く使われていないのか、埃まみれだが掃除すれば、充分に使えそうなので二人はこの小屋を拠点にする事にして、取り敢えず近くの川から水を汲んできて、掃除を始めた。

掃除を終えると、次は食糧の確保である。
「やっぱり兎とか狩るのかな? 」
「そうかもね。可哀想だけど、生きてく為には必要だし」
 二人は、自分達の魔力が有効なのかを一度確かめる。
 近くにあった大岩へと、魔力の塊を飛ばしてみる。
 大岩が粉砕されたのを見て、二人はこれならと狩りに出掛けたのだが、生物らしき物は存在していない。

途方にくれながら、二人がトボトボと歩いていると「こんな所で何をしてるの? お母さんとはぐれたの? 」と女の子の声がして二人は一斉に振り向く。
 振り向くと、そこには一人の可愛らしい女の子が立っていた。
「お嬢気付いてた? 」
「いいえ。気配なんてしなかったわ」
 気配もなく現れた少女に、二人は警戒を解かずに対峙する。

「そんなに怖がらなくても、何もしないし、どうして子供がこんな所にいるのかなって、それで声を掛けたの」
 少女は笑顔を絶やさずに、二人に近づいて来る。
 どうする? 
 二人は顔を見合わせて、敵なのか味方なのかを探る。
 敵なら、可哀想だが殺すしかないと雫は魔力を掌に集め始める。
「見ない顔ね。二人は何処から来たの? 」
 少女の微笑みからは、敵意は見受けられない。
 雫は一度警戒を解くと、貴女は誰ですか? 此処は何処ですか? と少女に問いかける。

少女はお里と名乗ってから、雫達の事を聞くので、二人は沙霧と雫だと名乗った。
「二人は、どうして此処にいるの? 」
 正直に答えても、信じて貰えるかはわからないので、沙霧は気付いたら此処にいたと此処が何処なのかもわからないと、そうお里に伝える。
「お家もわからないの? 」
「はい。覚えてるのは自分達の名前だけで」
 そう。なら私のお家に来ない? 此処には食べ物はないからと、お里が言うので二人はお里に付いて行く事にする。

お里の後を歩きながら、二人はお里が本当に敵ではないかと、まだお里を信用した訳ではなかった。
 ここがサギリが作り出した世界なのはわかってはいるが、出会った人物が味方だとは限らない。
「お嬢。お里さんって、味方かな? 」
「わからないけど、悪い人には見えないけど」
 二人がそんな事を話していると、着いたよとお里が此処が私の家なのと、小屋より少し小さい家を指差す。

どうぞと言われて、二人はお邪魔しますと言うと、小屋の中に入る。
 そこには、殆ど物はなかった。
 必要最低限の物があるのみで、中には誰も居ない。
「あの家族の方は? 」
 沙霧の質問にお里はいないよと、皆んな殺されて今は、私だけだからと答えた。
「こ、殺されたって、誰にですか? 」
 沙霧は思わず聞いていた。
 殺されたなんて、そんな物騒なワードが出てくるとは、予想だにしていなかった。

お里は、食事の準備してからでいい? と聞くと食事の準備を始める。
 お里の後ろ姿を見ながら、二人はこの世界にも殺人事件があるのかもと、または妖が存在しているかもしれないと、自分達を助けてくれたお里が狙われない様にと、辺りを警戒していた。

「そんなに警戒しなくても、今は現れないから大丈夫だよ。それより、お腹空いたでしょ」
 お里が食事を運びながら、大丈夫だよと微笑んでいるので、二人は警戒を解く。
 確かにお腹は空いているのだが、食事まで頂いてもいいものかと、二人が遠慮していると食べて欲しいなと、一人じゃない食事は久しぶりだからと、お里が言うので二人は有り難く頂く事にする。

食事を終えると、お里はさっきの話しの続きだよねと言って、二人に自分の家族が殺された時の事を教えてくれた。
 お里の家族を殺したのは、人間でも妖でもなかった。
 九尾の妖狐と呼ばれる妖怪であり、沙霧達が知ってる妖より、遥かに上位に位置する妖怪である。
「九尾の妖狐って、妖狐の中でも最上位にいるって言われてるよね? 」
「うん。私も話しにしか聞いた事なかったけど、この世界には存在してるって事? 」
「この世界? 二人は違う世界から来たの? 」
 お里が不思議そうにするので、二人は魔法でとは言わずに、多分違う世界に生きていましたと、自分達の世界にも妖と呼ばれる存在はいるが、妖狐の様な妖怪は架空の存在とされていると説明した。

二人の話しを聞いたお里は、驚いてはいたが何となくそんな気がしたと、あの小屋の周辺は危険な場所だから、人が居る筈ないからといきなり自分の洋服を脱ぎ始めた。
「お、お里さん。どうして脱ぐんですか? お風呂ですか? 」
 動揺する二人に、お里は見てと言って自分の裸体を見せる。
 そこには、酷い火傷の痕があった。
「気持ち悪い? 私はこの火傷のせいで十五になるのに、結婚も出来ないの」
 此処から少し行った場所に、集落が存在しているらしいが、お里はこの火傷痕の為に周りから気味悪がられて、家族を亡くしてからは此処で一人で生活しているのだと、悲しそうに話してくれた。

「気持ち悪くなんてありません。とても綺麗な身体だと思いますよ」
「私も、そう思う。私と違って胸もあって羨ましい」
 二人の言葉にありがとうとお里は、二人を抱きしめると、貴女達の目的はわからないけど、目的を達成するまでは此処に居てねと二人を強く抱きしめる。
 裸の女性に抱きしめられた事などなかった二人は、顔を真っ赤にしてはいと頷くのが精一杯だった。

誰かと一緒のお風呂なんて、本当に久しぶりとお里は喜びを隠せない様だ。
 家族を失ってからは、ずっと一人だった。
 長女だったお里は、いつも下の子の面倒を良く見る良いお姉ちゃんだった。
 九尾の妖狐に集落が襲われた。
 お里は、集落の外に出ていたので助かったがお里の家族を含む多くの命が、とても多くの命が奪われた。
 
本来なら集落全体で、協力して助け合っていかなくてはいけないのに、身体に火傷の痕のあるお里を、集落の人間は気味悪がりお里を除け者にした。
 もうこの集落には、自分の居場所はないのだと気付いたお里は、集落を出て偶々見つけたこの小屋で生活を始めた。
 小屋で生活を始めてから、もう三年が経っていた。

年頃の女の子達の殆どは、結婚をして中には子供を産んだ娘もいる。
 お里は、私も恋愛したりしてみたかったなと、ついぼやいてしまう。
「お里さん」
 二人は、お風呂に入りながらお里の話しを黙って聞いていた。
 まだ子供の二人には、お里を慰める事は出来ない。
 何て言葉を掛けていいのかもわからなくて、ただそんな自分達が情けない。

しんみりさせてごめんねと、お里は二人に笑顔を向けると、洗ってあげると二人の身体を順番に洗ってくれる。
「気持ちいい? 」
「はい。とても気持ちいいです」
 二人は素直に答える。
 ありがとうと洗い終えると、お里は二人を抱きしめると、温かいねと人の温もりっていいねと、暫く二人を抱きしめていた。

抱きしめられながら、二人はお里はずっと寂しかったんだと、この世界にいる間はずっとお里といようと、そして九尾の妖狐を倒してお里が平和に暮らせる様にしなくてはと、心に強く決意すると、お里を強く抱きしめる。
 
抱きしめられるのは気持ちいいのだが、お里の胸が顔に当たってるので、二人はさすがに恥ずかしくなってきた。
「あの、お里さん。胸が」
「嫌? 私は構わないから、もっと埋めてもいいのよ」
「お里さん? 」
「綺麗って言ってくれて、本当に嬉しいの。だから、もっと見て触っていいのよ」
 お里の目が妖しく光る。
 性的な知識に乏しい二人は、お里の言ってる意味がわからなくて、ただ困惑して固まってしまった。

お里は、上がってから続きをしましょうと言うと、固まってしまった二人の身体を丁寧に拭いていく。
 されるがままの二人。
 そのまま洋服も着ないで、お里と一緒にお布団に行くと、再びお里は二人に覆い被さる。
「あ、あのお里さん?」
「どうしたの? 洋服着ないと風邪引いちゃうよ」
 そんな二人の言葉を無視すると、お里は二人の手を自分の胸に当てると、温かい? 気持ちいい? と聞いてきた。
「温かいし柔らかくて気持ちいいです」
「とっても気持ちいいです」
 その言葉に満足したのか、お里は二人を抱きしめると、今度は自分の下腹部へと二人の手を持っていく。

知識の乏しい二人だが、さすがにそこはとお里を見るが、お里は妹達はこうしてあげると安心したのよと、二人の手を自分の陰部へと持っていく。
 自分達にはまだない叢が気持ちいい。
 熱を帯びてるお里の陰部が、少し湿ってる陰部が気持ち良くて、二人はそのままお里の陰部に手を添えたまま眠りについてしまった。
 眠りについた二人を見つめながら、お里は絶対に死なないでねと、異世界からの可愛らしい訪問者さんと、二人の頬にキスをすると布団から出て洋服を着る。

二人を起こさない様に部屋を出る。
 小屋の外には、九尾の妖狐がいた。
「この娘達には、絶対に手出しはさせない」
「愚かな娘だ。その者達が何者なのかを知ってるのか? 」
「ええ、魔法でこの世界に来た異世界の魔女でしょ」
「知っていて、尚助けると言うのか? 」
「そうよ。彼女達には待ってる家族がいるから、貴女に家族を殺された私と違ってね」
 九尾の妖狐は、愚かな娘よのと何故お主だけ殺さなかったのか、それを理解していないのかと、お里を睨みつける。

お里は、九尾の妖狐を睨みつけながら、この火傷でしょと、この火傷はただの火傷じゃないと、この世界を滅ぼす力を持っているとハッキリと答える。
「そうよ。その火傷は火傷なんかじゃない。この世界を滅ぼせる火の神を封印したもの」
「だから、流石の貴女も私には手を出せなかった」
 九尾の妖狐は、何も答えずに愚かな娘よ。異世界からの魔女は、殺すべき存在だと言う事を忘れるべからずと言うと、お里の前から姿を消した。

九尾の妖狐の気配が完全に消えたのを確認すると、お里は小屋に戻る。
 再び裸になると、眠る二人を抱きしめて、私が絶対に守ってあげると、元の世界に戻してあげるからねと、二人の頭のをずっと撫でていた。

お里は、沙霧と雫が異世界から魔法の力で、この世界に来た魔女であると、最初からわかっていて接触したのだ。
 今の二人では九尾の妖狐には勝てないと、それをわかっていた。
 二人が九尾の妖狐と戦える程に成長するまでは、自分が二人を守ると決めて二人を匿ったなんて、スヤスヤと眠る二人は全く知らなかった。

「可愛い私の妹達。愛すべき妹達。お姉ちゃんが守るから、帰るまではずっと側に居てね」
 殺された妹達を思い出しながら、お里は二人にそっとキスをして、自らも眠りについた。
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