姫プレイがやりたくてトップランカー辞めました!

椿原守

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35 俺の姫プレイとお手伝い 2

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 ユキ君のクエストは、レベル40の<モンク>の職業クエだった。
 指定された場所へ行き、指定された物を回収して、提出すればクエスト完了。

 モンクなのに、行き先はピラミッド……? 
 何の関係性も無さそうだが……。
 DFOのクエストって、そういう所あるよな。

 セイヤとレツヤは、ジョブチェンジする! と言って、メイン職からサブ職へ転職した。

「オレは遊び人ね。レベル36」
「オレは吟遊詩人ね。レベル32」

 ダンジョンのモンスターは、低レベルの雑魚とはいえ、戦闘になった時に火力は足りるのか?
 せめて、片方だけでも前衛職に……と心の中でブツブツとツッコミを入れる。

 俺とユキ君のレベル差は16。
 差がありすぎるので、俺は回復行動のみ専念するという事になった。

「それじゃ、皆さんよろしくお願いします!」

 そう言うと、ユキ君がピラミッド型のダンジョンへ足を踏み入れた。
 コツコツと靴の音が鳴り響く。薄暗いダンジョンの中で、頼りになる照明は、手に持った松明のみ。
 ダンジョン入口の明かりが届かなくなり、真っ暗になった所で、ユキ君が振り返る。

「あの……すみません……セイヤさん、レツヤさん。先頭を歩いて貰えませんか? ボク……ぃの苦手で……」
「ユッキー、暗いの苦手?」
「ユッキー、怖いの苦手?」
「すみません……」

 ユキ君は相当暗い所が苦手なようで、ダンジョンの仕掛けが動いたり、石を蹴った音でもビクッと驚いていた。
 その度に俺と手を繋ぎ、今は腕を組んでいる状態だ。
 俺の中で、一つ気になる事が生まれる。

 (こんなに怖がるなんて……もしかして、中の人は女の人?)

 男でも苦手な奴はいるだろうが、こんなにガッツリ腕を組んだりするかな? という思いがある。
 ユキ君が驚く度にふわふわの髪の毛揺れ、俺の頬をくすぐる。
 涙目で小さく「……ごめんなさい」と言う姿が可愛い。庇護欲をそそる。

 ダンジョンの先頭を歩くセイヤとレツヤは、片っ端から色んな仕掛け触り、攻撃を食らってHPを減らしていく。
 その度に、俺は回復魔法を唱え、癒していった。

「あははは! これは何かな!?」
「あははは! これも何かな!?」
「こらー! あからさまに怪しいヤツまで触るなー!」

 無駄にMPが減っていく。素の俺もウッカリ漏れていく。
 本当にコイツら連れて来て良かったのかな? と今更ながらに思う。

 そうして、俺達はダンジョン最奥へと到達した。ユキ君が指定物を回収する為、宝箱を開ける。
 すると中からモンスターが飛び出てきた。トラップ型のボスだ。

「わわわっ! チロさんモンスターです!」

 ユキ君は尻餅をついて、後ずさる。

 セイヤとレツヤは「防御力を下げる踊り!」「攻撃力を下げる歌!」「「ボスだから効かなーい! あははは!」」と自由だ。戦力になっていない。

「チロさん、どうしましょう……」

 ユキ君はオロオロし、未だ戦闘態勢に入っていなかった。
 どうしましょうも……何も……。

「戦わないの?」
「えっ?」
「攻撃しないと勝てないよ?」
「ボク……怖くて……あの……ボクの代わりにチロさんやってくれませんか? 回復職でもレベル56なら勝てますよね……?」
「……は?」

 待て待て待て。どういうことだ?

「ユキ君の職業クエスト……だよね? 君が主役だよ? ユキ君が、ボスを倒すべきだと思うんだけど……」
「でもボク……装備も足りてないし、すぐ戦闘不能になっちゃいます。だからチロさんお願いします!」

 ふわふわの髪を揺らして、ペコリと頭を下げる。
 そしてチラリと上目遣いで、こちらの顔色を伺っていた。

「ユッキーは、出荷希望?」
「ユッキーは、出荷されたい?」
「そんな事ありません! ただボクじゃ無理なだけです……」

 ユキ君は、くすんと涙を浮かべる仕草をする。

 出荷……?
 出荷ってアレか、クリアするにはレベルも装備も足りていないのに、周りの人間におんぶ抱っこ状態でクリアするアレの事か。

(なんだ……? 戦う気が、最初から……無い?)

 俺はアレクさんの時のように裏方に徹し、ユキ君を支援するつもりでいた。
 しかし、メインである本人が動かないのであれば、支援のしようがない。

 心の中に黒いインクが一滴落ちたような気分だ。
 モヤモヤとした感情が広がっていく。

「ユッキー! つまんなーい!」
「ユッキー! きらーい!」
「えっ!? なんでボク……!?」
「「お手伝いって、人任せにすることぉ?」」
「そ……れは……」

 一滴、また一滴と黒インクが滴り落ちる。
 モヤモヤとしたソレが、天使のようなユキ君の印象を塗り替えていった。

 急激に俺は全ての興味を無くす。
 何だかもう、どうだっていい。

「あー……そっか。そうなんだ? まぁ……うん。いいや。それなら、サッサと終わらせよう」

 俺は武器を弓に持ち変えて、ボスに向けて構えた。魔力を込め、矢を作る。
 俺の手から離れた無数の矢が、ボスに刺さり体力を削る。
 何度かそれを繰り返し、俺はボスを倒した。


 ――この時、俺は鼻歌を歌わなかった。

 ――このゲームを遊んで五年と九ヶ月。

 ――今まで遊んだボス戦の中で、一番面白くなかった。
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