姫プレイがやりたくてトップランカー辞めました!

椿原守

文字の大きさ
116 / 202
アフター

116 DFOやってるなんて聞いてないっ!

しおりを挟む

「うー……ちょっと、のみ……過ぎた」 

 俺が酒を呑まなかったら、アキラさんが酒を呑んだ。ベロベロの一歩手前。

 俺はレンとトモヤに酒を止められたので、後半はひたすらパクパク食べている。

「チヒロ。まだ何か食べる? この辺だったら、そんなに重くないと思うよ」
「んー……だったら、この山芋の鉄板焼き食べたいなぁ」

 トモヤが開いたメニュー表を横から覗いて、そう答える。
 そんな俺達のやり取りを見ていたアキラさんが口を開いた。

「君達は、付き合ってないんだよねぇ? チヒロ君が付き合ってるのは、レンで合ってるんだよね?」

 そう言われて俺は首をかしげる。
 レンが俺を『恋人』だって言っていたのに、なぜ確認するんだろう?
 
「チヒロ君にとって、このトモヤ君ってなに? どんな存在?」
「どんな……? んー……親友、ちょっと違うな。『相棒』かなぁ?」

 しっくりくる言葉が見つからない。でも、一番近い言葉は『相棒』な気がする。
 俺はトモヤの顔を見て、そう答える。
 トモヤは眉を少し下げて、にこっと笑った。

「へぇ……相棒なんだ。『恋人』がいるのに?」

 そう言ったアキラさんの目が鋭くなる。

 どうして俺はちょっと睨まれているんだ?
 なにか変なことを言っただろうか?

 もう一度、首をかしげると、アキラさんがビクリと身体を震わせた。
 俺じゃなく、トモヤを見ているようだ。
 お酒で赤くなっていた顔が、少し青くなった気がする。

「ん? なんだ?」

 俺はもう一度、横にいるトモヤを見る。
 トモヤはにこっと笑って俺を見た。
 アキラさんはゴクゴクとお酒を呑んで、また俺達に話しかける。

「話は変わるんだけど、君達の名前なーんかずっと引っ掛かってたんだよねー。今やっと分かった。解消した。あースッキリした!」
「名前……ですか?」
「そう! ねぇ、君達『DFO』ってゲーム知ってる?」
「あーそれ俺やって──」
「『DFO』ですか。それ人気のゲームですよね?」

 トモヤは俺の口をサッと塞いだ。
 メガネがキランと輝いて「余計なことを言わないように」と言っている。

「オレ、あれをやってるんだけど~と言っても、まぁ前ほどはやれてないんだけど……そのゲームに凄いプレイヤーがいるんだよ。それが、ちょうど君達と同じ名前なんだ」
「……アキラ、お前、DFOやってたのか」
「あ、レンも知ってるんだ? ちょっとだけね! オレ、ゲーム好きだからさ~! あー……でも、その片方の人は全く見なくなっちゃったんだよねぇ。ああ、一回くらい会ってみたかったなぁ~チヒロ様」
「チヒロ……さまぁ!?」

 はぁ~と大きなため息をつくアキラさんに、俺はつい反応してしまった。
 いや、だって、『様』って!
 うえーっ背中が痒くなる。
 
 顔をしかめた俺に、アキラさんはムッとした。

「……なに? チヒロ様のことバカにする気?」
「や、そういう訳じゃないけど……『様』って」

 ダメだ。ムズムズする。
 今すぐ腕や背中を掻きむしりたい。

「プレイヤー人口多いから、会うのは大変そうですよね」
「……今は1000万人突破してるんだろ? じゃあ厳しいな」

 トモヤとレンが俺の代わりに話をする。

「まぁね~……一年前くらいだっけ~? チヒロ様がコラボカフェに現れたって聞いて、オレも駆けつけたんだけど、遅かったんだよねぇ。あの時、仕事が入ってなかったら、本人に会えたのかなぁ~? あー……思い出したらツラい。ツラくなってきた。すっごい大チャンスだったのに」
「「「…………」」」
「オレさぁ~チヒロ様に会えたら、貴方のプレイ大好きですって言いたいんだよ~。欲を言うなら、一回くらいパーティー組んで、ボス討伐行きたい~」

 目の前のイケメンが、実は俺のファンだったと知り、なんともいえない顔になる。
 俺はソフトドリンクに手を伸ばし、それを飲んで、自分の顔を誤魔化した。


 アキラさんの出現により、突発的に開かれた飲み会は終わりを迎える。
 後部座席にアキラさん押し込んだタクシーが去って行った。

 レンが呼んだ代行が来るまでの間、俺達三人は駐車場で話をする。

「アキラさん、DFOやってたんだな~。俺がチヒロだって言わなくて良かったのかな? 一緒にちょっと遊ぶくらいなら……」
「チヒロ。やめておいた方がいいよ。あの人は執着が強そうな感じがする。チヒロにも……レンにもね」
「……今日は偶然会ったんだ。もう会うこともないだろう」
「へぇ……? そうだといいね?」

 レンとトモヤがなにかを含んだような会話をする。
 たまにあるよな。二人だけが分かっているような会話。
 俺だけが蚊帳の外で、知らされない会話。

 こういうとき、ちょっとだけモヤッとする。

 駐車場に代行の車が現れた。
 俺とレンは車に乗り込み、トモヤとはその場で別れるのだった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

ファントムペイン

粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。 理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。 主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。 手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった…… 手足を失った恋人との生活。鬱系BL。 ※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...