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カイゼントーヤ王国編
第肆百弍拾弍章 とっぴんぱらりのぷう
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「へぇん、なるほどなるほど、上手く纏めたじゃないか」
カイゼントーヤ王家の継承者争いを収めたゲルダの策に感心していたイシルであったが、ふと疑問が残されている事に気が付いた。
「いや、待って待って! それだと、まだゲルダが国王に会いたがらない理由が分からないままだよ?! 一体どうしたってのさ?」
「分からぬか? 策ではあったがカイゼントーヤ王家からすればワシは偽の王子を擁立して王位を簒奪せんとする希代の悪女であろう。とてもではないが、のこのこと顔を出す訳にもいくまいて。テルセロからすればワシは恐怖以外の何者でもあるまい。只でさえ今は海賊騒動で心を痛めておるのに、これ以上の心労をかけるのはワシも本意ではないのじゃよ」
「納得、そういう事ね。でも、それだとそのお弟子さんも王子を騙った逆賊として二度と故郷には帰れなくなったんじゃない? 惨い事をしたね」
イシルの言葉に非難の色が混ざったとしても無理はないだろう。
しかしゲルダはニヤリと笑っているではないか。
「ま、確かに偽の王子を演じて貰ったが問題は無いわえ。むしろ今ではカイゼントーヤの英雄であるぞ」
「ひぃん? どういう事だい?」
イシルは思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
あれだけの事をしでかしたのだ。
カイゼントーヤから討手を差し向けられてもおかしくない。
だが、まさかの英雄扱いと聞かされて驚くなという方が無理であろう。
「その弟子こそ『木』の大精霊を友にする『七大賢者会議』の一人にしてカイゼントーヤ王国にその人あり、と謳われる双斧提督リリィなのじゃよ。テルセロも含め、こてんぱんにされた兄達も頭が上がらぬそうじゃ。いやはや持つべきは優秀な弟子だわえ」
精悍な顔立ちゆえに偽王子役を演じさせたが、女性であった為にゲルダが“偽王子? はてさて、どこへ逃げてしもうたのかのぅ”と惚けてしまえば元老院もそれ以上突っ込めなかったという。
何よりゲルダに”偽王子が捕まらんと困るのか?”と微笑まれたその刹那、体の自由を失い、怖気と云い様のない恐怖に襲われて、すごすごと退散する体たらくであったそうな。
「何で国王なのにリリィ提督に頭が上がらないのかってカイゼントーヤの七不思議に数えられているけど、あれだけ力の差を見せつけられては仕方ないわよね」
「むしろ毎日のように尻を叩かれておるそうじゃ。あのお転婆め。当分は嫁の貰い手など現れまいて」
笑い合うゲルダとイルゼを尻目にイシルはこう呟いたものだ。
「こうしてテルセロ王子は王様となり、偽の王子はカイゼントーヤ王国の英雄となったのでした。とっぴんぱらりのぷう」
カイゼントーヤ王家の継承者争いを収めたゲルダの策に感心していたイシルであったが、ふと疑問が残されている事に気が付いた。
「いや、待って待って! それだと、まだゲルダが国王に会いたがらない理由が分からないままだよ?! 一体どうしたってのさ?」
「分からぬか? 策ではあったがカイゼントーヤ王家からすればワシは偽の王子を擁立して王位を簒奪せんとする希代の悪女であろう。とてもではないが、のこのこと顔を出す訳にもいくまいて。テルセロからすればワシは恐怖以外の何者でもあるまい。只でさえ今は海賊騒動で心を痛めておるのに、これ以上の心労をかけるのはワシも本意ではないのじゃよ」
「納得、そういう事ね。でも、それだとそのお弟子さんも王子を騙った逆賊として二度と故郷には帰れなくなったんじゃない? 惨い事をしたね」
イシルの言葉に非難の色が混ざったとしても無理はないだろう。
しかしゲルダはニヤリと笑っているではないか。
「ま、確かに偽の王子を演じて貰ったが問題は無いわえ。むしろ今ではカイゼントーヤの英雄であるぞ」
「ひぃん? どういう事だい?」
イシルは思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
あれだけの事をしでかしたのだ。
カイゼントーヤから討手を差し向けられてもおかしくない。
だが、まさかの英雄扱いと聞かされて驚くなという方が無理であろう。
「その弟子こそ『木』の大精霊を友にする『七大賢者会議』の一人にしてカイゼントーヤ王国にその人あり、と謳われる双斧提督リリィなのじゃよ。テルセロも含め、こてんぱんにされた兄達も頭が上がらぬそうじゃ。いやはや持つべきは優秀な弟子だわえ」
精悍な顔立ちゆえに偽王子役を演じさせたが、女性であった為にゲルダが“偽王子? はてさて、どこへ逃げてしもうたのかのぅ”と惚けてしまえば元老院もそれ以上突っ込めなかったという。
何よりゲルダに”偽王子が捕まらんと困るのか?”と微笑まれたその刹那、体の自由を失い、怖気と云い様のない恐怖に襲われて、すごすごと退散する体たらくであったそうな。
「何で国王なのにリリィ提督に頭が上がらないのかってカイゼントーヤの七不思議に数えられているけど、あれだけ力の差を見せつけられては仕方ないわよね」
「むしろ毎日のように尻を叩かれておるそうじゃ。あのお転婆め。当分は嫁の貰い手など現れまいて」
笑い合うゲルダとイルゼを尻目にイシルはこう呟いたものだ。
「こうしてテルセロ王子は王様となり、偽の王子はカイゼントーヤ王国の英雄となったのでした。とっぴんぱらりのぷう」
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