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プロローグ

混濁の剣士

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剣士は目を覚ました。
地面に横たわった状態だった。
まだぼんやりとしか見えないが、空は青そうだ。
視線を下げると、魔道士が復活の呪文を詠唱していた。
その詠唱が止まった。
意識と視界、聴覚がみるみる戻ってくるのが分かる。
「すまない、みんな。心配かけたね」
魔道士が地面に腰を落とし、両手を後ろについた。
仰向けになりながら、首を斜めにして剣士を見る。
「まったくだ。生き返らないかと肝を冷やした」
一息つく。
「ところで、みんなは?戦いの進行状態は?」
「一時撤退。キミがいない状態では余裕で全滅の想像ができたからね」

聞いた説明ではこうだ。
剣士である俺が魔物に囲まれ、背後から攻撃を受けた。
3体は連携がとれており、執拗に背後のみを代わるわる狙ってきたという。
モンクの彼が助けに入ってなんとかやっつけたが、毒と大量の血液が流れ出たことによって倒れた。
他にも魔物がいたが、爆炎で煙を立ちのぼらせて見えなくした後でその場所を離脱した。
モンクに運ばせている間も剣は離さず、『まだやれる…おろせ』と何度も言っていたそうだ。
全く覚えていないが。

テントと簡易ベッドを作って、剣士を寝かせた。
防具などをずべて取り外させ、上半身をしめらせた布で拭う。
その役目を申し出たのは神官だった。
上半身を裸にした状態でベッドに座っている剣士。
ゆっくりと拭いては布を洗う。
「どこか痛むところはありませんか?」
「ないよ。ありがとう」
「いえ」
少し手が震える神官。
「いつもならすぐにでも意識が戻るのですが、呪文でも魔法でも反応がまったく無くて困惑しました」
「そうか」
「何か覚えていらっしゃいますか?」
「…ううむ…」
何かを思い出しかけたその刹那
ズキン
頭が痛む。
痛みが広がってゆく。
「ううう…」
「あっ。ごめんなさい。無理に思い出さなくて良いのです」
布を置いて、服を着させ横になるように補助をした。
仰向けに寝ると右手を顔の上に置いて額をつかんだ。
「すまんな」
「いえ、それでは失礼しますね」
水の入った浅めの容器と布を持って、テントを出て行った。
「何かをつかんでいたような…気が…」
そのまま意識が暗闇に落ちていった。

斥候に出ていたアーチャーが戻ってきた。
「剣士の意識が戻ったって?!」
「ええ」
「なら、ちょっと行ってからかってくるね」
「少し前に横になられたから、寝てるかもよ」
神官が釘をさした。
『起こしてはダメよ』ということである。
ニッコーッと笑うアーチャーは音を立てないように剣士の休むテントへ向かった。

「寝てる?」
テントの入口の布をそっとめくる。
すうすうと眠る剣士を覗き込んだ。
「もうだめかも~って、みんな言ってたのにね」
鼻をちょんと人差し指でつついてみた。
変わらず寝息だけが聞こえる。
ベッドの端に手をついて立ち上がろうとしたとき、アーチャーの右手首がしっかりと握られていた。
「なによ」
ゆっくりと右手が彼女の頭へと伸びてゆく。
それにひかれるように顔が近くなってゆく。
唇が重なった。
剣士の左腕がアーチャーの右腰を押して、ベッドの上へ剣士の上に乗るように誘導していった。
「わるいひと…」
彼の服を脱がし、自分の服も前をはだけた。
股間からそそり立つモノを胸でしごくと5回ぐらいで液体が流れ出てきた。
その匂いを嗅いだ彼女の目がうつろになる。
焦点が合ってない瞳は嬉しそうにも見えた。
彼女を仰向けに寝かせるとぶるんと胸が揺れる。
そして彼女の足を肩に置き、ズボンを脱がせた。
彼は彼女の足と背中を抱きかかえた状態でベッドの上に膝で立ち上がった。
そそり立つケダモノはトクントクンと液体をまき散らしながら獲物が下りてくるのを待っていた。
彼の腕の力が弱められてゆく。
ずるりずるりと女体が重力に引かれて落ちてゆく。
秘部に接触した刹那、女体の自重を解放した。
ずぶぶぶぶっ
プチプチッ
何かがはじけるような切れるような感覚がケダモノから伝わってきた。
「はぐぅっ、いたっ!」
彼女の瞳に光が戻った。
涙目の彼女が見た光景は、凜々しい鋼の肉体を持つ剣士の優しい顔ではなかった。
目が真っ赤に光り、耳の上から羊の角が生えて、口が耳の横まで広がった魔物だった。
「ーーーーー!!?!」
悲鳴が声にならない。
体が上下に揺らされている。
お腹が重い。
何?
ずっぷ ずっぷ ずっぷ ずっぷ
棒のようなモノがおへその辺りまで入ってきてるのがわかる。
怖い。怖い。怖い。
でも、気持ちいい。
なにこれ。すごい。
「はっはっはっ…はうぅんっっ」
思わず、口を両手で押さえた。
『え、私、気持ちいいの?感じてるの?わかんない』
「ふうううんんっ」
背中が弓のようにしなる。
魔物が彼女の腰をがっしりと持って、己のモノをさらに奥へとたたき込んだ。

「ヴォオオオオオオオオオ!!!」

彼女の腹の部分に、こぶし大の膨らみが現れた。
がくがくがくと手足を震えさせ、びくんびくんと反応した後に弛緩しかんした。
ずるるるっと女体から棒を引きずり出す。
『ちゅぽん』と軽い音。
「はっふっ」
びくんと体が反応した後にぞぶぶぶっと白濁液が一気に排出された。
『逃げなくちゃ』
朦朧もうろうとした意識の中で、彼女はベッドから這い出した。
地面を四つん這いになって進むが、体の反応が遅い。
いつもならその場から飛び退いて反撃に移るまでをイメージできるのだが、脳と体が別物のように感じていた。
ベッドから下りてきた魔物はのっしのっしと彼女に近づいた。
腰をがっしりとつかむとまだ棒が入っていた形状が閉じきれていない穴の入口に狙いを定めて、腰を打ち付けてきた。
「…め…めて…やめて…やめてぇええーー!!」

魔物の咆哮ほうこうでピリついてたパーティの皆が、アーチャーの声に引き寄せられて剣士のテントに集まってきた。
神官とモンクと魔道士が互いに目配せする。
神官とモンクが入口から入ると予想していない光景に絶句した。
「いやぁ…みないでぇ…」
地面に両手をついたアーチャーの腰に手を回し、仁王立ちで前後に動いている魔物が正面にいたからだ。
ぐちゅっぱんぱんっ ぐちゅっぱんぱんっ
「なんてこと…」
ぶるぶる震える神官。
間髪入れずにモンクが棍棒で魔物のみぞおちに重い一発を入れた。
彼女と魔物の結合が外れる。
神官が神聖術式で魔物の動きを封じた。
モンクが棍棒を振り下ろす。
ボキイッ
白濁液まみれで血管の浮き出た棒と棍棒の対決で棍棒が負けたのだ。
「マジか」
魔物が何かを唱え始め、角の周辺で電気がバチバチと音を立て始めたのに気がついた魔道士は、テントの外からアンチ魔法の呪文を唱えた。
地面にうつ伏せでお尻を上げたまま気絶しているアーチャーに神官が声をかける。
「もうちょっと待ってね…」
効果を持続させている神官。
肩で息をしている。
モンクが周りを目線だけで確認した。
何もいわず、立てかけてあった剣士のつるぎを手に取ると素早く鞘から抜きだし、両手でグリップとガードを持った。
魔物の赤い目が合ったと同時に俊足で心臓に剣を突き立てた。
「すまん」
魔物の赤黒い頭が白くなってゆく。
角が消え、剣士の顔になると微笑んだ。
なんだかスッキリしたようなテカテカしたような顔であった。
そのまま砂となり、落下する前に煙となって消えていった。



トステパが立っている。
「おかえりなさませにゃ」
目の前にあるのは人の形をしていない魂だけのもの。
人魂が浮遊している感じだ。
「強制的に現実に引き戻すとこうなることがあるにゃ」
ゆらゆらと揺れる人魂は何かを訴えているように見えた。
トステパは持っていたスタンドランプを開けて、人魂を入れた。

「あなたはもう戻ることはできません。蘇りの呪術でもです。輪廻の回廊へ行くのです。」
トーンと飛んだ。
「でも、心配しなくていいにゃ。いつか生まれてくるから」
さらにトーンと飛んだ。
「消滅してたら、本当に、そこでおしまい」

しゅるん。

そこにあるのは闇。

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