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似ていない従姉妹
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「……改めまして、当家の茶会に足を運んで下さり感謝いたします」
テーブルを片付け、新たなお茶が運ばれてきた時点で何も無かったかのように取り繕うミスティ子爵夫人。その姿を余裕たっぷりな態度で眺めるシスティーナ。この時点で両者の上下関係は決まったようなものだった。まあ、元々システィーナの方が立場も身分も上なのだが……。
「こちらこそご招待ありがとうございます」
視線をもう一人の客人に向ければ子爵夫人はハッと気づいたように紹介を始めた。
「フレン伯爵夫人、こちらはわたくしの従姉でバルタ男爵家のパメラにございます」
「パメラと申します。初めまして、フレン伯爵夫人」
システィーナは内心で「ああ、これが例の大金を横領した幼馴染か」と思いつつパメラを一瞥する。初めて目にした彼女の第一印象は“底意地が悪そうな女”だった。
年齢を重ねると性格が顔に出ると聞いたことがある。パメラはまさにそれで性根の悪さがそのまま出てしまっているような顔をしていた。
(あー……これは、旦那様の好みではないわね)
夫が頑なに「そういう対象ではない」と言っていたことが嘘ではないと分かった。
容姿を批判するのは申し訳ないが、パメラの外見はレイモンドの好みから外れている。
彼は儚く可憐な美女を好む。歴代の奥方の顔を肖像画で拝見したがやはりどちらも可憐で美しい外見をしていた。
フレン伯爵家の侍女のジェーンが言っていたがレイモンドは女性の好みに拘る。
悪いがパメラは可憐でもなければ美しくもない。本人はレイモンドの愛人になりたがっているが、彼の好みから外れているのでそれは無理だと分かる。しかしまあ、この年になるまでよくも諦めずにいるものだ。何処かで見切りをつけた方がよかったのではないかと余計なことを考えてしまう。
「初めまして、本日はどうぞよろしくお願いいたします。ところで、わたくし手土産をお持ちしましたの。よろしければどうぞ召し上がって」
ニヤニヤと意地悪く笑うパメラが不快なので早々に流れを変えた。
何か禄でもないことでも言おうとしていたのだろう彼女達は面食らったような顔をしていたが気にも留めず手土産をテーブルの上へと置く。
子爵夫人は煌びやかな外装で包まれた箱に目を奪われ、パメラそっちのけで開けてもいいかとシスティーナに問いかける。それに頷くと子爵夫人は嬉々として自分のメイドに開けるよう命じた。
「まあ……! これは、もしかして“チョコレート”ですか?」
蓋を開けると中には漆黒に輝く宝石のような菓子が敷き詰められていた。
甘く芳しい香りを放つそれの正体を子爵夫人は目を輝かせて尋ねる。
「ええ、さようでございます。ベロア家所有の商会より取り寄せましたの。お口に合えばよろしいのですが……」
滅多に口に出来ない高級品のチョコレートに子爵夫人とパメラは色めき立つ。
彼女達が興奮気味になるのも無理はない。今のところ国内でチョコレートを取り扱っているのはベロア家所有の商会だけだ。卸先も王宮や高位貴族の家のみで、口に出来る機会があるとすればそれぞれのサロンだけ。つまりは王族や高位貴族のサロンに招かれる立場の人間でないと口に出来ない希少品ということ。
男爵家はもちろんのこと、資産家といえども子爵でしかないミスティ家では一生口に出来ないであろう代物に二人は舌鼓を打った。
「とっても美味ですわ……」
うっとりとした表情を浮かべる子爵夫人。
頬に手を当てる仕草が様になっていて色っぽい。
先程はこちらも臨戦態勢をとっていたから気づかなかったが、こうして見ると彼女は大人の色香に満ちた艶やかな美人だ。従姉のパメラとは似ている部分が一つも無い。
「お口に合ったようでようございましたわ。こちらは王妃殿下のサロンでも提供されております品ですの」
王妃という言葉に反応した二人はハッと息を呑む。
おそらくは今の言葉で気づいたのだろう。システィーナが王妃のサロンに出入りできるような立場の人間であるということを。
テーブルを片付け、新たなお茶が運ばれてきた時点で何も無かったかのように取り繕うミスティ子爵夫人。その姿を余裕たっぷりな態度で眺めるシスティーナ。この時点で両者の上下関係は決まったようなものだった。まあ、元々システィーナの方が立場も身分も上なのだが……。
「こちらこそご招待ありがとうございます」
視線をもう一人の客人に向ければ子爵夫人はハッと気づいたように紹介を始めた。
「フレン伯爵夫人、こちらはわたくしの従姉でバルタ男爵家のパメラにございます」
「パメラと申します。初めまして、フレン伯爵夫人」
システィーナは内心で「ああ、これが例の大金を横領した幼馴染か」と思いつつパメラを一瞥する。初めて目にした彼女の第一印象は“底意地が悪そうな女”だった。
年齢を重ねると性格が顔に出ると聞いたことがある。パメラはまさにそれで性根の悪さがそのまま出てしまっているような顔をしていた。
(あー……これは、旦那様の好みではないわね)
夫が頑なに「そういう対象ではない」と言っていたことが嘘ではないと分かった。
容姿を批判するのは申し訳ないが、パメラの外見はレイモンドの好みから外れている。
彼は儚く可憐な美女を好む。歴代の奥方の顔を肖像画で拝見したがやはりどちらも可憐で美しい外見をしていた。
フレン伯爵家の侍女のジェーンが言っていたがレイモンドは女性の好みに拘る。
悪いがパメラは可憐でもなければ美しくもない。本人はレイモンドの愛人になりたがっているが、彼の好みから外れているのでそれは無理だと分かる。しかしまあ、この年になるまでよくも諦めずにいるものだ。何処かで見切りをつけた方がよかったのではないかと余計なことを考えてしまう。
「初めまして、本日はどうぞよろしくお願いいたします。ところで、わたくし手土産をお持ちしましたの。よろしければどうぞ召し上がって」
ニヤニヤと意地悪く笑うパメラが不快なので早々に流れを変えた。
何か禄でもないことでも言おうとしていたのだろう彼女達は面食らったような顔をしていたが気にも留めず手土産をテーブルの上へと置く。
子爵夫人は煌びやかな外装で包まれた箱に目を奪われ、パメラそっちのけで開けてもいいかとシスティーナに問いかける。それに頷くと子爵夫人は嬉々として自分のメイドに開けるよう命じた。
「まあ……! これは、もしかして“チョコレート”ですか?」
蓋を開けると中には漆黒に輝く宝石のような菓子が敷き詰められていた。
甘く芳しい香りを放つそれの正体を子爵夫人は目を輝かせて尋ねる。
「ええ、さようでございます。ベロア家所有の商会より取り寄せましたの。お口に合えばよろしいのですが……」
滅多に口に出来ない高級品のチョコレートに子爵夫人とパメラは色めき立つ。
彼女達が興奮気味になるのも無理はない。今のところ国内でチョコレートを取り扱っているのはベロア家所有の商会だけだ。卸先も王宮や高位貴族の家のみで、口に出来る機会があるとすればそれぞれのサロンだけ。つまりは王族や高位貴族のサロンに招かれる立場の人間でないと口に出来ない希少品ということ。
男爵家はもちろんのこと、資産家といえども子爵でしかないミスティ家では一生口に出来ないであろう代物に二人は舌鼓を打った。
「とっても美味ですわ……」
うっとりとした表情を浮かべる子爵夫人。
頬に手を当てる仕草が様になっていて色っぽい。
先程はこちらも臨戦態勢をとっていたから気づかなかったが、こうして見ると彼女は大人の色香に満ちた艶やかな美人だ。従姉のパメラとは似ている部分が一つも無い。
「お口に合ったようでようございましたわ。こちらは王妃殿下のサロンでも提供されております品ですの」
王妃という言葉に反応した二人はハッと息を呑む。
おそらくは今の言葉で気づいたのだろう。システィーナが王妃のサロンに出入りできるような立場の人間であるということを。
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