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もう任せておけない
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(……ん、ここは……寝室? はて、おかしいな……。確か私は執務室にいたはずでは……)
視界に見慣れた寝室の天井が映る。ぼやけた頭が徐々にそれまでの記憶を辿り、男爵は自分が執務室にいたことを思い出す。
「あら、お目覚めですか?」
声のする方に顔を向けるとそこには妻の姿があった。
「…………っ!!?」
妻の名を呼ぼうとした瞬間、男爵は自分の異変に気づいた。
声が出ない。それに体が鉛のように重くてうまく動かせない。
「あらあら、無理に起きあがろうとしてはいけませんよ? 貴方は病魔に冒されているのですから……」
ニイッと嗤う妻の顔とその言葉に冷や水を浴びせられたような心地に襲われる。
病魔? 何を言っているんだ……?
いや、そもそも先程まで執務室でアリーの件で話し合いをしていたはずなのに……どうして寝室に?
それに何故声も出ないし体も重いんだ……?
あの時一体何が……
そこで男爵はハッと気付いた。
そうだ、確か妻に薦められて酒を口にした後から記憶がない。
(ま、まさか……あの酒に何か盛られていた……?)
「あら、お気づきになりましたか。そうですよ、わたくしが一服盛らせていただきました」
悪びれもせず告げる妻にゾッとした。
まさか信頼していた妻がそんなことをするなんて……とショックで頭が真っ白になる。
「仕方ないじゃありませんか。貴方があまりにも馬鹿なことばかり言うのですもの。ダスター家の領民の血税を愚かな娘の尻拭いに使おうなどと正気を疑います。しかもその負債が息子の代にまで及ぶだなんて……そんなの許せるはずがないじゃありませんか。本当に……貴方には失望しましたよ。家と領民を守る責務よりも馬鹿な娘を優先するような貴方に当主を任せてなどおけません。その座はアレクに譲っていただきます」
衝撃の台詞に男爵は息を呑んだ。
まさか、息子に当主の座を譲渡するためだけに薬を盛られたというのか……。
「既に譲渡の手続きは済んでおります。病に倒れた為、当主続行が不可能という理由で。いざという時の為に前々から準備しておいて正解でした……。アリーと同じように現実を見ない貴方は当主として相応しくありません。ああ、アリーの件もアレクが当主としていいようにしてくれますのでご安心を」
一つも安心など出来ない。姉を蛇蝎の如く嫌っている息子では切り捨てることにも躊躇いがないだろう。だから今までも当主の座を譲れずにいたのだ。
「ちなみに貴方に盛った薬は致死性のものではありませんのでご安心を。一か月もすれば元の状態に戻れますので。夫を毒殺するほどの毒婦ではありませんのよ、わたくし……」
それだけ言うと妻はさっさと寝室から出て行ってしまった。
残された男爵は自分の身に起きたことの衝撃に茫然とするしか出来ない。
どうしてこんなことに……と心の中で問いかけるも答える者はいない。
視界に見慣れた寝室の天井が映る。ぼやけた頭が徐々にそれまでの記憶を辿り、男爵は自分が執務室にいたことを思い出す。
「あら、お目覚めですか?」
声のする方に顔を向けるとそこには妻の姿があった。
「…………っ!!?」
妻の名を呼ぼうとした瞬間、男爵は自分の異変に気づいた。
声が出ない。それに体が鉛のように重くてうまく動かせない。
「あらあら、無理に起きあがろうとしてはいけませんよ? 貴方は病魔に冒されているのですから……」
ニイッと嗤う妻の顔とその言葉に冷や水を浴びせられたような心地に襲われる。
病魔? 何を言っているんだ……?
いや、そもそも先程まで執務室でアリーの件で話し合いをしていたはずなのに……どうして寝室に?
それに何故声も出ないし体も重いんだ……?
あの時一体何が……
そこで男爵はハッと気付いた。
そうだ、確か妻に薦められて酒を口にした後から記憶がない。
(ま、まさか……あの酒に何か盛られていた……?)
「あら、お気づきになりましたか。そうですよ、わたくしが一服盛らせていただきました」
悪びれもせず告げる妻にゾッとした。
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「仕方ないじゃありませんか。貴方があまりにも馬鹿なことばかり言うのですもの。ダスター家の領民の血税を愚かな娘の尻拭いに使おうなどと正気を疑います。しかもその負債が息子の代にまで及ぶだなんて……そんなの許せるはずがないじゃありませんか。本当に……貴方には失望しましたよ。家と領民を守る責務よりも馬鹿な娘を優先するような貴方に当主を任せてなどおけません。その座はアレクに譲っていただきます」
衝撃の台詞に男爵は息を呑んだ。
まさか、息子に当主の座を譲渡するためだけに薬を盛られたというのか……。
「既に譲渡の手続きは済んでおります。病に倒れた為、当主続行が不可能という理由で。いざという時の為に前々から準備しておいて正解でした……。アリーと同じように現実を見ない貴方は当主として相応しくありません。ああ、アリーの件もアレクが当主としていいようにしてくれますのでご安心を」
一つも安心など出来ない。姉を蛇蝎の如く嫌っている息子では切り捨てることにも躊躇いがないだろう。だから今までも当主の座を譲れずにいたのだ。
「ちなみに貴方に盛った薬は致死性のものではありませんのでご安心を。一か月もすれば元の状態に戻れますので。夫を毒殺するほどの毒婦ではありませんのよ、わたくし……」
それだけ言うと妻はさっさと寝室から出て行ってしまった。
残された男爵は自分の身に起きたことの衝撃に茫然とするしか出来ない。
どうしてこんなことに……と心の中で問いかけるも答える者はいない。
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