どうして許されると思ったの?

わらびもち

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エルザの焦り

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「まずい……まずいわ……どうにかしないと」

 薄暗い部屋の中で一人女が焦ったような声で呟いていた。
カーテンの隙間からわずかに差し込む陽光が、床に淡い筋を描いている。
 
 彼女の目は何かを探すように宙をさまよい、焦点はどこにも合っていない。唇の端がわずかに引きつり、自身の爪を噛んでいる。
 
 焦りと不安が、彼女の体を内側から突き動かしていた。

「あの人ったらで怒るなんて……心が狭いわ。だって恋焦がれた方にやっと会えたのよ? しかもあんな近くでお顔を拝見できるなんて夢のようで……。だからちょっと我を忘れてしまっただけじゃないの……!」

 悔しそうに顔を歪める女の名はエルザ。ミスティ子爵の妻であるが、まさにその地位を失おうとしていた。

 晩餐会での失態は帰宅後夫から散々叱責され、予定よりも早く離婚すると言われてしまった。元々、エルザのあまりにも非常識な振る舞いの数々に我慢も限界に達していた夫によって離婚の話はされていたのだが、それも少しは猶予期間があったはずなのだ。

 それが、今月中に邸から出て行けとの宣告を受けてしまった。
あまりにも急すぎるとエルザは夫に縋りついたが駄目だった。今までは何だかんだとエルザに甘い部分があった子爵も今回ばかりは堪忍袋の緒が切れたようだ。

「離婚なんてされたら実家に帰らなくてはならないじゃないの……! 嫌よ、あんな貧乏生活に戻りたくない! 何よりそうしたらもう、レイモンド様に会えなくなるじゃないの!」

 こんなことになるなんて……と嘆いていると、ふとコン、コンと控えめなノックの音が扉の向こうから響いた。部屋の主が返事をする間もなく、扉が静かに開き、柔らかな足音とともに一人の侍女が姿を現す。

「奥様、失礼いたします。お茶をお持ちいたしました」

 ティーワゴンを運んできたのはなんとフレン家にいた侍女長だった女。
 今までとは比べ物にならないほど優雅な仕草で深くお辞儀をする彼女に、エルザは目を吊り上げて怒鳴りだした。

「ノコノコとよくもまあ私の前に姿を現せたわね……この役立たずが!」

 声を荒げるエルザに侍女長はビクッと身を震わせた。

「も、申し訳……ございません。されど、今までの奥様を追い出すことは出来ましたし、全く役に立っていないとは言えません」

「今までのはそうだけど、今現在のは追い出すどころか邸を支配しているじゃないの! それじゃ意味ないのよ!」

「お言葉ですがあの御方は今までの奥様とは格が違います! あの御方を追い出すなど私には土台無理な話です……!」

 睨みつけてくるエルザに元侍女長は納得していないような表情で訴えた。
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