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覚悟もないくせに、馬鹿ね
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「あ、あなたを……前の妻達と同じ目に遭わせようとして、お茶会と称してこの場に誘い込みました……」
「ええ、そのようね。で、具体的にわたくしをどのような目に遭わせようとしたの?」
「そ、それは……」
「はっきり言いなさい、ミスティ子爵夫人エルザ。お前はわたくしに媚薬入りのお茶を飲ませてどうするつもりだった?」
歯をガタガタと震わせ、それ以上言葉を発せなくなったエルザをシスティーナは決して許さなかった。自らの罪を自覚させるため、あえてその口で言わせたい。さもなくば、彼女は己の為したことの重大さにいつまで経っても気づくことはない。
「こ、ここにいる男達に襲わせ、色欲に溺れさせるつもりでした……」
分かってはいたことだが、言葉にされると不快感が増す。
よくもまあ、好きな人の妻というだけの赤の他人をこんな下劣なやり方で貶めようとするものだ。
「まあ、品のない真似を……」
システィーナは扇子を静かに口元へと運び、それを広げて顔の下半分を隠した。
眉根をひそめ冷ややかな蔑みの視線をエルザへと向ける。
「そんな前後不覚になるほどの薬を人に飲ませようとするなんて馬鹿なの? 体にどんな影響が出るか分かったものじゃないわ。しかも男に襲わせようとするなんて下劣な……。貴女も同じ目に遭えばよいのではなくて?」
腹が立ったので目の前の女にあのお茶を飲ませ、同じ目に遭わせてやりたくなった。
しかしそれを彼女は涙目で「それだけは嫌……」と否定する。どの立場でそれを言うのかと心底呆れる。
「で、穢されたわたくしが己を恥じてレイモンド様に自ら離婚を申し出ると? そういう計画かしら?」
「は……はい、そうです……」
「……馬鹿馬鹿しい。そんな真似をすれば関わった者全ての首をはねてやるわ。わたくしを陥れた者も、わたくしを穢した者も生かしておくつもりはないの。貴女はその覚悟があった? 己の首を賭ける覚悟を」
涙を流しながらブンブンと勢いよく首を振るエルザを見て、システィーナは眉根を寄せた。
「呆れた……。本当に分かっていなかったようね、格上の身分に手出ししようとすることが、どういうことかを。黙って泣き寝入りするとでも思った?」
「あ……だって、前の妻達はそうだったし……」
「だから、わたくしもそうだろうと? 本当に馬鹿ね。人柄も性格も家柄も何一つ違うのに、どうしてわたくしも同じ行動をするのだと思ったの?」
エルザは何も言えなかった。
相手がどのような人物かなんてろくに調べもせず、ただ“好きな人の妻になった憎い女”という一括りをしていたのは間違いない。分かるはその間違いが大きな後悔を引き起こすこととなった、ということだけ。
「ええ、そのようね。で、具体的にわたくしをどのような目に遭わせようとしたの?」
「そ、それは……」
「はっきり言いなさい、ミスティ子爵夫人エルザ。お前はわたくしに媚薬入りのお茶を飲ませてどうするつもりだった?」
歯をガタガタと震わせ、それ以上言葉を発せなくなったエルザをシスティーナは決して許さなかった。自らの罪を自覚させるため、あえてその口で言わせたい。さもなくば、彼女は己の為したことの重大さにいつまで経っても気づくことはない。
「こ、ここにいる男達に襲わせ、色欲に溺れさせるつもりでした……」
分かってはいたことだが、言葉にされると不快感が増す。
よくもまあ、好きな人の妻というだけの赤の他人をこんな下劣なやり方で貶めようとするものだ。
「まあ、品のない真似を……」
システィーナは扇子を静かに口元へと運び、それを広げて顔の下半分を隠した。
眉根をひそめ冷ややかな蔑みの視線をエルザへと向ける。
「そんな前後不覚になるほどの薬を人に飲ませようとするなんて馬鹿なの? 体にどんな影響が出るか分かったものじゃないわ。しかも男に襲わせようとするなんて下劣な……。貴女も同じ目に遭えばよいのではなくて?」
腹が立ったので目の前の女にあのお茶を飲ませ、同じ目に遭わせてやりたくなった。
しかしそれを彼女は涙目で「それだけは嫌……」と否定する。どの立場でそれを言うのかと心底呆れる。
「で、穢されたわたくしが己を恥じてレイモンド様に自ら離婚を申し出ると? そういう計画かしら?」
「は……はい、そうです……」
「……馬鹿馬鹿しい。そんな真似をすれば関わった者全ての首をはねてやるわ。わたくしを陥れた者も、わたくしを穢した者も生かしておくつもりはないの。貴女はその覚悟があった? 己の首を賭ける覚悟を」
涙を流しながらブンブンと勢いよく首を振るエルザを見て、システィーナは眉根を寄せた。
「呆れた……。本当に分かっていなかったようね、格上の身分に手出ししようとすることが、どういうことかを。黙って泣き寝入りするとでも思った?」
「あ……だって、前の妻達はそうだったし……」
「だから、わたくしもそうだろうと? 本当に馬鹿ね。人柄も性格も家柄も何一つ違うのに、どうしてわたくしも同じ行動をするのだと思ったの?」
エルザは何も言えなかった。
相手がどのような人物かなんてろくに調べもせず、ただ“好きな人の妻になった憎い女”という一括りをしていたのは間違いない。分かるはその間違いが大きな後悔を引き起こすこととなった、ということだけ。
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