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今更もう、どうしようもない
「あんたのせいよ、エルザ! あんたが私に余計なことを言わなければ今頃……」
今日もまた女官に紛れてエルザの元を訪れたパメラは、開口一番でエルザを罵った。
「……今更そんなことを言われたって、もうどうしようもないわよ。私にどうしろと言うの?」
力ない返事をするエルザに、感情を抑えきれなくなったパメラは、語気を荒げて怒鳴った。
「なにそれ、まるで他人事みたいに言って……。あんたのせいでこうなったんでしょ? 無責任にもほどがあるわ! 私だけじゃない、アリーやメグもあんたのせいで皆不幸な目に……。どうしてくれるのよ!?」
「だから、もうどうしようもないって言っているでしょう? 確かに助言をしたのは私だけど、それを受け入れた時点でお従姉様たちも同罪よ。叶いっこない夢なんて見てないで、堅実的に生きるべきだったのよ。お従姉様も、私も……」
「……ッ!! そうよ! その通りよ! あんたの馬鹿みたいな助言なんて聞かず、大人しく縁談を受けていればよかったのよ……! あんたなんかと従兄妹でいたことが、私にとって唯一の汚点だわ! とにかく、あんたが悪いの! 責任取ってどうにかしてよ!」
「責任って……。だから、どうすればいいの?」
「私を国に帰しなさいよ! 私はバルタ家の令嬢よ!? こんなところで下女をやっているなんて冗談じゃないわ!」
「……そんなの無理よ。というか、バルタ家ってまだ残っているのかしら……?」
「は? どういうこと?」
「あの女に逆らった家が無事でいられると思って? 下位とはいえ、いち貴族である私達を簡単に異国に飛ばせるような力を持った女よ? もう……残っていないんじゃないかしら……」
エルザの言葉にパメラは唖然とした。
あまりのショックに、エルザは顔面を青ざめさせながら、「うそ、そんな……」と呟いた。
「帰る場所なんて何処にも無いのよ……。私も、お従姉様も……。あの女に逆らった私達が、戻ったところで今度は殺されるかもしれないわ」
「……ッ! だからって、諦めろというの!?」
「……考えてみてよ、お従姉様。帰る家も無いのに、帰ったところでどうやって生きていくというの?」
「あ…………」
生粋の貴族として生きて来た二人が身分を失ってどうやって生きていくというのか。
かつてエルザは、平民のように下働きをしたこともあったが、そんな感覚はとうに忘れた。
「もう……ここで生きていくしかないのよ。私も、お従姉様も……それしか生きていく術がないの」
「だからって……こんな、納得できないわよ……」
「私たちが納得するかどうかなんて、あの女はどうでもいいと思ってるんじゃない? 思っていれば……説明くらいするはずよ。どうだっていいのよ。あの女の眼前から消えればそれでいいと思っているのでしょうよ……」
「な、なによ……それ……! 人としておかしいじゃないの!!」
「……高位の身分の人間って、そういうところがあるのよ。それをここに来て初めて実感したわ。私の”ご主人様”だって、私の意志なんてどうだっていいもの……」
諦めたように、色を失った瞳で遠くを見つめるエルザに、パメラは信じられないものを見るような目を向けた。
「……もう、諦めましょう。どうしようもないわ。これ以上、何もできないの……」
「……ッだったら! せめて私を下女からあんた付きの女官にしてよ!」
「それも無理よ……。私の意見なんて、ここでは誰も聞いてくれないもの……」
何もかもを諦めた顔のまま動じないエルザに、パメラは怒りを込めて罵声を浴びせた。
すると、どこからともなく現れた女官達が煩いパメラを引きずって外へと連れて行った。
その後、パメラがエルザの前に現れることはなかった。
どうしたのかを知る術はない。聞いたところで、誰も教えてくれないだろうから。
誰にも心を開かず、まるで屍のように生きるエルザを宮殿の者は『屍夫人』と揶揄したとか……。
今日もまた女官に紛れてエルザの元を訪れたパメラは、開口一番でエルザを罵った。
「……今更そんなことを言われたって、もうどうしようもないわよ。私にどうしろと言うの?」
力ない返事をするエルザに、感情を抑えきれなくなったパメラは、語気を荒げて怒鳴った。
「なにそれ、まるで他人事みたいに言って……。あんたのせいでこうなったんでしょ? 無責任にもほどがあるわ! 私だけじゃない、アリーやメグもあんたのせいで皆不幸な目に……。どうしてくれるのよ!?」
「だから、もうどうしようもないって言っているでしょう? 確かに助言をしたのは私だけど、それを受け入れた時点でお従姉様たちも同罪よ。叶いっこない夢なんて見てないで、堅実的に生きるべきだったのよ。お従姉様も、私も……」
「……ッ!! そうよ! その通りよ! あんたの馬鹿みたいな助言なんて聞かず、大人しく縁談を受けていればよかったのよ……! あんたなんかと従兄妹でいたことが、私にとって唯一の汚点だわ! とにかく、あんたが悪いの! 責任取ってどうにかしてよ!」
「責任って……。だから、どうすればいいの?」
「私を国に帰しなさいよ! 私はバルタ家の令嬢よ!? こんなところで下女をやっているなんて冗談じゃないわ!」
「……そんなの無理よ。というか、バルタ家ってまだ残っているのかしら……?」
「は? どういうこと?」
「あの女に逆らった家が無事でいられると思って? 下位とはいえ、いち貴族である私達を簡単に異国に飛ばせるような力を持った女よ? もう……残っていないんじゃないかしら……」
エルザの言葉にパメラは唖然とした。
あまりのショックに、エルザは顔面を青ざめさせながら、「うそ、そんな……」と呟いた。
「帰る場所なんて何処にも無いのよ……。私も、お従姉様も……。あの女に逆らった私達が、戻ったところで今度は殺されるかもしれないわ」
「……ッ! だからって、諦めろというの!?」
「……考えてみてよ、お従姉様。帰る家も無いのに、帰ったところでどうやって生きていくというの?」
「あ…………」
生粋の貴族として生きて来た二人が身分を失ってどうやって生きていくというのか。
かつてエルザは、平民のように下働きをしたこともあったが、そんな感覚はとうに忘れた。
「もう……ここで生きていくしかないのよ。私も、お従姉様も……それしか生きていく術がないの」
「だからって……こんな、納得できないわよ……」
「私たちが納得するかどうかなんて、あの女はどうでもいいと思ってるんじゃない? 思っていれば……説明くらいするはずよ。どうだっていいのよ。あの女の眼前から消えればそれでいいと思っているのでしょうよ……」
「な、なによ……それ……! 人としておかしいじゃないの!!」
「……高位の身分の人間って、そういうところがあるのよ。それをここに来て初めて実感したわ。私の”ご主人様”だって、私の意志なんてどうだっていいもの……」
諦めたように、色を失った瞳で遠くを見つめるエルザに、パメラは信じられないものを見るような目を向けた。
「……もう、諦めましょう。どうしようもないわ。これ以上、何もできないの……」
「……ッだったら! せめて私を下女からあんた付きの女官にしてよ!」
「それも無理よ……。私の意見なんて、ここでは誰も聞いてくれないもの……」
何もかもを諦めた顔のまま動じないエルザに、パメラは怒りを込めて罵声を浴びせた。
すると、どこからともなく現れた女官達が煩いパメラを引きずって外へと連れて行った。
その後、パメラがエルザの前に現れることはなかった。
どうしたのかを知る術はない。聞いたところで、誰も教えてくれないだろうから。
誰にも心を開かず、まるで屍のように生きるエルザを宮殿の者は『屍夫人』と揶揄したとか……。
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