7 / 25
事件の真相①
それから数日経ち、一人の看守以外誰も来ない牢に数人の憲兵がやってきた。
「囚人アニー、君の刑が確定した。取調室で話すからここを出てもらおう」
刑の内容を伝えるのにわざわざ取調室に連れていくという憲兵の対応に看守は首を傾げた。
こういう場合は牢屋越しに刑罰を伝えることがほとんどで、わざわざ個室に移動することなど滅多にない。
唯一の例外は上層部の意向が関わっている時のみ。
おそらくこの件はそういうことなのだろう。
そう納得した看守は黙ってアニーの牢屋の鍵を開け、彼女を憲兵達に引き渡した。
「刑って何よ!? アタシは無実だって言ってんでしょう! アタシじゃなくてあの女が犯人に決まっているじゃないのよ!!」
「騒ぐんじゃない! いいからさっさと歩け!」
噛みつかんばかりに喚くアニーを若い憲兵が拘束し、早く歩けと促す。
抵抗しようにも、力の弱い彼女が鍛えられた憲兵に敵うはずもない。
渋々彼等に着いて行き、向かった先にあるのは初日とは違う取調室だった。
「ここだ。入れ」
彼等の中でも一番年嵩の憲兵に促され、アニーはその部屋に入った。
窓が一つもない閉塞的な部屋に椅子が二つと簡素なテーブルが一つだけあり、そこにアニーと年嵩の憲兵が座る。
残りの憲兵は部屋の中には入らず、そのまま扉を閉めて出て行った。
扉にはめ込まれている硝子窓から見えたのは、彼等が部屋に誰も侵入しないように見張る姿であった。
「………………?」
アニーはこの厳重とも言える状態に疑問を抱く。
初日の取り調べはもっと軽い警備態勢で、部屋に窓もあったはずだ。
なのに、これではまるで凶悪犯に対する扱いのようではないか。
「―――――――っ!!」
自分は無実だというのに、まるで凶悪な犯罪者のように扱われていることにアニーは激高した。
怒りのままに目の前の憲兵に喚き散らしたが、彼は可哀想な者を見るような眼を向ける。
「まず初めに伝えておく。ライアス隊長は一命をとりとめた」
「え!? 本当? ああ、よかった~……!!」
「なのでお前さんの罪は殺人じゃなくて殺人未遂になる。殺人よりも処罰は軽いものになるぞ」
「だ・か・ら! 違うって言ってんでしょう!? 犯人はアタシじゃなくてあの女よ! ライアス隊長の嫁! アタシを捕まえるよりもあの女のこと調べなさいよ! ほんっとうに無能ねアンタ達は!! 罪を明らかにしないで何が憲兵よ! 馬鹿じゃないの!」
アニーの口汚い罵りに対し、憲兵は呆れた表情を向ける。
何故自分がそのような顔をされねばならないのかと再び激昂するアニーだが、憲兵の口から出た予想外の言葉に驚愕した。
「馬鹿はお前さんだろう? 真犯人は全く別の人物だ。お前さんはそいつに嵌められたんだよ……」
「はあ!? 嵌められた? なんでアタシが……?」
憲兵の口から直接「嵌められた」と聞きアニーは困惑した。
それが分かっているならどうして自分はここに収容されたのか、訳が分からない。
「順を追って説明してやる。まず、今回の毒殺未遂事件だが、黒幕は貴族だ。菓子から検出された毒は平民が手に入れられるような代物じゃない」
「貴族ですって!? ならやっぱりあの女が犯人なのね!」
「だから違うって言ってるだろ? ロザリンドお嬢様でなく、団内部の者だ。さらに言うと、東方師団内の貴族全員が容疑者になる」
憲兵の話にアニーは困惑した。
東方師団内に貴族はごまんといる。それこそ高位貴族から低位貴族まで大勢だ。
なぜ彼等が自分の作った菓子に毒を盛られねばならないのか理解できない。
「囚人アニー、君の刑が確定した。取調室で話すからここを出てもらおう」
刑の内容を伝えるのにわざわざ取調室に連れていくという憲兵の対応に看守は首を傾げた。
こういう場合は牢屋越しに刑罰を伝えることがほとんどで、わざわざ個室に移動することなど滅多にない。
唯一の例外は上層部の意向が関わっている時のみ。
おそらくこの件はそういうことなのだろう。
そう納得した看守は黙ってアニーの牢屋の鍵を開け、彼女を憲兵達に引き渡した。
「刑って何よ!? アタシは無実だって言ってんでしょう! アタシじゃなくてあの女が犯人に決まっているじゃないのよ!!」
「騒ぐんじゃない! いいからさっさと歩け!」
噛みつかんばかりに喚くアニーを若い憲兵が拘束し、早く歩けと促す。
抵抗しようにも、力の弱い彼女が鍛えられた憲兵に敵うはずもない。
渋々彼等に着いて行き、向かった先にあるのは初日とは違う取調室だった。
「ここだ。入れ」
彼等の中でも一番年嵩の憲兵に促され、アニーはその部屋に入った。
窓が一つもない閉塞的な部屋に椅子が二つと簡素なテーブルが一つだけあり、そこにアニーと年嵩の憲兵が座る。
残りの憲兵は部屋の中には入らず、そのまま扉を閉めて出て行った。
扉にはめ込まれている硝子窓から見えたのは、彼等が部屋に誰も侵入しないように見張る姿であった。
「………………?」
アニーはこの厳重とも言える状態に疑問を抱く。
初日の取り調べはもっと軽い警備態勢で、部屋に窓もあったはずだ。
なのに、これではまるで凶悪犯に対する扱いのようではないか。
「―――――――っ!!」
自分は無実だというのに、まるで凶悪な犯罪者のように扱われていることにアニーは激高した。
怒りのままに目の前の憲兵に喚き散らしたが、彼は可哀想な者を見るような眼を向ける。
「まず初めに伝えておく。ライアス隊長は一命をとりとめた」
「え!? 本当? ああ、よかった~……!!」
「なのでお前さんの罪は殺人じゃなくて殺人未遂になる。殺人よりも処罰は軽いものになるぞ」
「だ・か・ら! 違うって言ってんでしょう!? 犯人はアタシじゃなくてあの女よ! ライアス隊長の嫁! アタシを捕まえるよりもあの女のこと調べなさいよ! ほんっとうに無能ねアンタ達は!! 罪を明らかにしないで何が憲兵よ! 馬鹿じゃないの!」
アニーの口汚い罵りに対し、憲兵は呆れた表情を向ける。
何故自分がそのような顔をされねばならないのかと再び激昂するアニーだが、憲兵の口から出た予想外の言葉に驚愕した。
「馬鹿はお前さんだろう? 真犯人は全く別の人物だ。お前さんはそいつに嵌められたんだよ……」
「はあ!? 嵌められた? なんでアタシが……?」
憲兵の口から直接「嵌められた」と聞きアニーは困惑した。
それが分かっているならどうして自分はここに収容されたのか、訳が分からない。
「順を追って説明してやる。まず、今回の毒殺未遂事件だが、黒幕は貴族だ。菓子から検出された毒は平民が手に入れられるような代物じゃない」
「貴族ですって!? ならやっぱりあの女が犯人なのね!」
「だから違うって言ってるだろ? ロザリンドお嬢様でなく、団内部の者だ。さらに言うと、東方師団内の貴族全員が容疑者になる」
憲兵の話にアニーは困惑した。
東方師団内に貴族はごまんといる。それこそ高位貴族から低位貴族まで大勢だ。
なぜ彼等が自分の作った菓子に毒を盛られねばならないのか理解できない。
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
【第19回恋愛小説大賞】で奨励賞を頂きました。投票して下さった皆様、読んで下さった皆様、本当にありがとうございました(^^)
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。