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「……あの時、あなたがあの不審な兵士を他の兵士に捕縛させ、わたくしにもとに届けるよう指示してくださって本当に助かりましたわ。ただ追い返しただけではあの兵士は逃亡していたかもしれません。もしくはあなたが流されるまま兵士の指示に従っていたら……あなたの身が危険だったかもしれません」
「ええ、私が生きていたと知った王女に危害を加えられていたかもしれませんね」
あの時、大人しく兵士の指示に従い連行されていたら、間違いなく王女に危害を加えられていたことだろう。
セシリアの腕ならば返り討ちも可能だが、そうすると今度はセシリアが王女に危害を加えたとして処罰を受ける恐れがある。嫁ぎ先を焼失された挙句に罪人扱いなど御免だ。
「ふふ、誠に見事な立ち回り。感服いたしますわ」
柔らかく微笑む王太子妃にセシリアもにこりと笑いかけ、場が穏やかに和む。
そこでセシリアはそっと侍女を呼び寄せ、ある品を持ってきてもらうよう頼んだ。
「妃殿下、本日、恐れながら殿下にお返し申し上げたい品がございます」
セシリアがそう告げると、王太子妃は笑顔を崩さなかったが頬のあたりがわずかにぴくりと動く。顔がわずかに強張り、微かに表情が乱れたのが見て取れた。
「まあ……何かしら?」
穏やかだが厳しさを含んだ声に、周囲の空気が張り詰める。
そんな中、セシリアの侍女が慎重に小箱を抱えて戻ってきた。
「はい。以前妃殿下より賜りました耳飾りと首飾りにございます」
セシリアは侍女から受け取った小箱をまるで宝物のように恭しくテーブルの上へと置いた。
この中に入っているのは宝物と言って差し支えないほどの高価な品。
王太子妃の生家アレキサンドライト公爵家で採れた希少な宝石であしらえた宝飾品。
家宝というより国宝と呼ぶに相応しいほどの逸品である。
王太子妃はテーブルの上の小箱をじっと見た後、視線をセシリアへと向けた。
「それはあなたに差し上げた品だったと記憶しているのですが……お気に召さなかったのかしら?」
厳しく問いかけるような声と視線に、場の空気がぴりりと冷えた。
セシリアはその緊張感に少しも怯むことなく、こう告げる。
「いいえ、とんでもございません。そうではなく、今の私はこの素晴らしい品を身に着けるに値しない存在になったということにございます」
「身に着けるに値しない存在とは……どういう意味です?」
「はい。私は離婚し、ガーネット侯爵夫人ではなくただの令嬢の身となりました。今の私には、何の力もありません。貴女の味方たるに相応しき立場を失いました」
以前、王太子妃が自分の派閥に勧誘したのは侯爵夫人であるセシリアだ。名門ガーネット家の一族であり、侯爵家の女主人であった立場ならば社交界で十分に発言権がある。だが、ただの令嬢に戻った今ではその権力は失われた。
ならばもう、王太子妃が派閥に勧誘する旨味はない。
今のセシリアにはこの首飾りと耳飾りが相応しいとは言えないことを、自分でもよく分かっている。
だからこそ、自分には過ぎたものだと思い、返すつもりで今日ここに持ってきたのだ。
しかし、王太子妃はそれに手を伸ばそうともせず、ただセシリアを見据え、荘厳な声で言葉を紡いだ。
「いいえ、これはあなたに差し上げたものです。それに、あなたはこれを身に着けるに相応しい方。あなたのように強く、冷静で、賢い御方にこそ、わたくしは味方になってほしいのです」
意外過ぎる王太子妃の言葉にセシリアは目を丸くして、ただ驚いた。
「ええ、私が生きていたと知った王女に危害を加えられていたかもしれませんね」
あの時、大人しく兵士の指示に従い連行されていたら、間違いなく王女に危害を加えられていたことだろう。
セシリアの腕ならば返り討ちも可能だが、そうすると今度はセシリアが王女に危害を加えたとして処罰を受ける恐れがある。嫁ぎ先を焼失された挙句に罪人扱いなど御免だ。
「ふふ、誠に見事な立ち回り。感服いたしますわ」
柔らかく微笑む王太子妃にセシリアもにこりと笑いかけ、場が穏やかに和む。
そこでセシリアはそっと侍女を呼び寄せ、ある品を持ってきてもらうよう頼んだ。
「妃殿下、本日、恐れながら殿下にお返し申し上げたい品がございます」
セシリアがそう告げると、王太子妃は笑顔を崩さなかったが頬のあたりがわずかにぴくりと動く。顔がわずかに強張り、微かに表情が乱れたのが見て取れた。
「まあ……何かしら?」
穏やかだが厳しさを含んだ声に、周囲の空気が張り詰める。
そんな中、セシリアの侍女が慎重に小箱を抱えて戻ってきた。
「はい。以前妃殿下より賜りました耳飾りと首飾りにございます」
セシリアは侍女から受け取った小箱をまるで宝物のように恭しくテーブルの上へと置いた。
この中に入っているのは宝物と言って差し支えないほどの高価な品。
王太子妃の生家アレキサンドライト公爵家で採れた希少な宝石であしらえた宝飾品。
家宝というより国宝と呼ぶに相応しいほどの逸品である。
王太子妃はテーブルの上の小箱をじっと見た後、視線をセシリアへと向けた。
「それはあなたに差し上げた品だったと記憶しているのですが……お気に召さなかったのかしら?」
厳しく問いかけるような声と視線に、場の空気がぴりりと冷えた。
セシリアはその緊張感に少しも怯むことなく、こう告げる。
「いいえ、とんでもございません。そうではなく、今の私はこの素晴らしい品を身に着けるに値しない存在になったということにございます」
「身に着けるに値しない存在とは……どういう意味です?」
「はい。私は離婚し、ガーネット侯爵夫人ではなくただの令嬢の身となりました。今の私には、何の力もありません。貴女の味方たるに相応しき立場を失いました」
以前、王太子妃が自分の派閥に勧誘したのは侯爵夫人であるセシリアだ。名門ガーネット家の一族であり、侯爵家の女主人であった立場ならば社交界で十分に発言権がある。だが、ただの令嬢に戻った今ではその権力は失われた。
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だからこそ、自分には過ぎたものだと思い、返すつもりで今日ここに持ってきたのだ。
しかし、王太子妃はそれに手を伸ばそうともせず、ただセシリアを見据え、荘厳な声で言葉を紡いだ。
「いいえ、これはあなたに差し上げたものです。それに、あなたはこれを身に着けるに相応しい方。あなたのように強く、冷静で、賢い御方にこそ、わたくしは味方になってほしいのです」
意外過ぎる王太子妃の言葉にセシリアは目を丸くして、ただ驚いた。
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