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痕跡と材料
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ジュリアーナが敵地同然のオーガスタ家にやって来たもう一つの理由は青年魔女に別邸を探ってもらう為だ。彼が言うにはマーサの使用した魔法は稚拙なのに複雑で解読が難しいらしく、せめてそれを使用した痕跡を探れば糸口が掴めるとのこと。その痕跡は時戻り前にその魔法を使用した場所を彼の目で直接見ることで確認できるらしい。
なので、青年から移動用の手鏡を預かりそれを用いて彼をこの場へと出現させた。
誰かの目に触れると困るので使用人が全員部屋から下がる深夜まで待ったうえで。
「うわっ……ぼろい。それに埃っぽい……。こんな場所に姫君を監禁したのかよ……腹立つ」
青年魔女は別邸の様子を見まわして毒づいた。
扉に鍵がかかっていようと、中が真っ暗だろうと魔女には関係が無い。
いくらでも出入りできるし、暗闇でも目が利く。それこそ昼間並みに細かい埃までよく見えた。
それにしても狭いし汚い。禄に掃除をしていないことが一目瞭然だ。
こんな場所に一国の王女を閉じ込めるとか正気ではないな、と青年は苛立ちながらもマーサの痕跡を探した。
「お、あったあった……。……ふーん、はあ……なるほど、そういうことか……」
マーサの魔法を使用した痕跡とやらを見つけた青年はその場所に手をかざし、渋い顔をする。まるで何か不味いものでも見てしまったかのような表情だ。
「なるほどね……。これは思ったより材料が必要になりそうだ」
ガシガシと面倒くさそうに頭を掻いて呟く。
そしてそのままとある方角に目を向けた。
「じゃあ早速材料集めを始めるとしますか。必要な量を集められるといいんだけど……どうだろうな」
再び青年の姿が煙のようにその場から消えた。
無人となった邸に再び静寂が戻る。
次に青年が現れたのは黴臭い地下牢だった……。
「お、いたいた。おーい、起きて」
地下にある牢の中に中年の男が一人膝を抱えたまま眠りに就いていた。
近くにベッドがあるというのに、男は何故か石造りの床に座ったまま寝ている。
青年は男の肩を揺すり、場違いに呑気な声で眠りから覚ます。
「…………へ? え? な、なんだあんたは……!?」
男はいきなり目の前に現れた青年にひどく驚いた。
人ではなく魔性の者と見紛うほど恐ろしく整った美貌に恐怖を感じる。
「名乗るつもりはないよ。猿並の知能しかない人間に僕の名を記憶されることも、僕という存在を認識されることも不愉快だ」
「なっ……なんだと!? 俺を馬鹿にしているのかお前!」
「馬鹿にしてなんていないよ。ただ馬鹿だと思っているだけさ。よくもまあ君主の姫君を監禁しようなんて大それた考えが浮かぶものだよ」
「は……? ま、まて……どうしてそれを……」
まだ知られていないはずの計画を何故この青年は知っているのかと男は焦りだす。
それを知るのはごくわずかな者だけなのに……。
なので、青年から移動用の手鏡を預かりそれを用いて彼をこの場へと出現させた。
誰かの目に触れると困るので使用人が全員部屋から下がる深夜まで待ったうえで。
「うわっ……ぼろい。それに埃っぽい……。こんな場所に姫君を監禁したのかよ……腹立つ」
青年魔女は別邸の様子を見まわして毒づいた。
扉に鍵がかかっていようと、中が真っ暗だろうと魔女には関係が無い。
いくらでも出入りできるし、暗闇でも目が利く。それこそ昼間並みに細かい埃までよく見えた。
それにしても狭いし汚い。禄に掃除をしていないことが一目瞭然だ。
こんな場所に一国の王女を閉じ込めるとか正気ではないな、と青年は苛立ちながらもマーサの痕跡を探した。
「お、あったあった……。……ふーん、はあ……なるほど、そういうことか……」
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「なるほどね……。これは思ったより材料が必要になりそうだ」
ガシガシと面倒くさそうに頭を掻いて呟く。
そしてそのままとある方角に目を向けた。
「じゃあ早速材料集めを始めるとしますか。必要な量を集められるといいんだけど……どうだろうな」
再び青年の姿が煙のようにその場から消えた。
無人となった邸に再び静寂が戻る。
次に青年が現れたのは黴臭い地下牢だった……。
「お、いたいた。おーい、起きて」
地下にある牢の中に中年の男が一人膝を抱えたまま眠りに就いていた。
近くにベッドがあるというのに、男は何故か石造りの床に座ったまま寝ている。
青年は男の肩を揺すり、場違いに呑気な声で眠りから覚ます。
「…………へ? え? な、なんだあんたは……!?」
男はいきなり目の前に現れた青年にひどく驚いた。
人ではなく魔性の者と見紛うほど恐ろしく整った美貌に恐怖を感じる。
「名乗るつもりはないよ。猿並の知能しかない人間に僕の名を記憶されることも、僕という存在を認識されることも不愉快だ」
「なっ……なんだと!? 俺を馬鹿にしているのかお前!」
「馬鹿にしてなんていないよ。ただ馬鹿だと思っているだけさ。よくもまあ君主の姫君を監禁しようなんて大それた考えが浮かぶものだよ」
「は……? ま、まて……どうしてそれを……」
まだ知られていないはずの計画を何故この青年は知っているのかと男は焦りだす。
それを知るのはごくわずかな者だけなのに……。
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