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二人の態度
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「ハンスは……王女殿下に乱暴を働いた罪でラティーシャ夫人により投獄されました」
「何だと!? ハンスが? すぐに出すよう夫人に伝えてくる!」
「いえ……その必要はございません。ハンスは投獄されたその晩に獄死しておりますので……」
長年自分に忠実だった使用人の突然の死を聞きダニエルは絶句した。
「ハンスが死んだ……? そんな……嘘だ!」
「いえ、残念ながら嘘ではございません。遺体は遺族が引き取りを拒否したので領地内にある教会へと埋葬されましたが……」
「は? 遺族が拒否? 何だそれは……酷いじゃないか!」
「……遺族の反応は致し方ないものかと。王女への暴挙は王家への反逆と見做されておかしくない行為です。そんな大罪を犯そうとしたハンスを引き取ることを嫌がるのは当然のことではありませんか?」
自分の怒りに同意せず、ハンスの遺族を庇う発言をする家令にダニエルはひどく驚いた。
同情するような視線のまま、家令はダニエルに向かって優しく声をかける。
「申し訳ございません、坊ちゃま……。私どもが貴方様を甘やかしてきたばっかりに……」
言葉の途中で嗚咽を漏らす家令。見ればその目からは涙が溢れ頬を伝っていく。
「坊ちゃま、この国で貴族として生きていく以上、王族への反逆行為は絶対にしてはいけないことなのです。家族どころか一族郎党全員が処刑されてもおかしくないのです。王女に暴挙を働いた反逆者を引き取って一族に累が及んだらどうします? 貴族も平民も自分の生活と家族を守りたいという気持ちは同じです」
まるで子供に言い聞かせるような声音と涙を流す姿にダニエルは何も言えなかった。
「そういったことをお教えせず、貴方様のやることを全て肯定し、叱ることすらしなかった私どもが全て悪いのです……。私どもは坊ちゃまが幸せであれと願うより、坊ちゃまがご立派な当主となるよう助力すべきでした」
暗に今は立派ではないと言われたことがショックだったが、それを非難する言葉は出なかった。ただ黙って話の続きに耳を傾ける。
「坊ちゃま、アニー様とは縁を切りなさい。平民として子供を育てていくのに十分な金を手切れ金として渡し、それきり会うのはお止めになることです。そして王女様を妻としてお迎えし、丁重に扱ってください。間違ってもアニー様との子を王女様との子だと偽るような神をも恐れぬ所業をしてはいけません」
「は? なんで今更そんなことを言うんだ? あんなに賛成してくれていたじゃないか!?」
「賛成してしまったこと自体が間違えだったのです……! 王族の姫君にそのような真似をすれば全員の首が飛びます! 貴方様も、私どもも、アニー様やアニー様が産んだ赤子までもが……!」
鬼気迫る表情で叫ぶ家令にダニエルはびくりと体を震わせる。
内容もそうだが、優しかった家令のこんな恐ろしい顔は初めて見たからだ。
「坊ちゃま、わたくしも家令さんと同じ意見です。もう、これ以上貴方様の我儘を聞くことは致しません。それは結果的に貴方様の為になりませんから……」
「ばあやまでそんなことを言うのか!? 好きな女性を妻に迎えたいというささやかな願いが我儘なものか!」
「いいえ、我儘です! 自分の願いを叶えてほしいと駄々をこねる幼子のような真似はもうやめましょう……。貴方様の言う事全てが正しいように肯定してきたわたくし達のせいでございますが……ここで止めておきませんと取り返しのつかないことになります。先ほど家令さんがおっしゃったことは脅しではありません。ここで止まらないと確定する未来です」
そんな大袈裟な……と呟くダニエルに二人は揃って首を振る。
「大袈裟ではございません。もう、今後はアニー様に会うのはお止めください」
「はあ? もうすぐ私の子が産まれるんだぞ! それなのに会うなとはあんまりだ!」
「自分の子を一度見てしまえば情が沸きます! そうなれば離れがたくなることでしょう……。悪い事は言いません。産まれた子に会っては駄目です。産後のアニー様と、アニー様とお子様が住むための家の用意、手切れ金等につきましては手配させていただきますのでどうかご了承を」
何を言っても味方になってくれず、それどころかアニーと別れろと苦言を呈してくる二人にダニエルは信じられないものを見るような目を向けた。しかし、そんな哀れさを催す姿に絆されはしない。何せ大切な坊ちゃまの命がかかっているのだから。
頑なな二人の態度に酷く絶望するダニエル。
そんな彼を放置したまま二人は執務室を後にした。
「何だと!? ハンスが? すぐに出すよう夫人に伝えてくる!」
「いえ……その必要はございません。ハンスは投獄されたその晩に獄死しておりますので……」
長年自分に忠実だった使用人の突然の死を聞きダニエルは絶句した。
「ハンスが死んだ……? そんな……嘘だ!」
「いえ、残念ながら嘘ではございません。遺体は遺族が引き取りを拒否したので領地内にある教会へと埋葬されましたが……」
「は? 遺族が拒否? 何だそれは……酷いじゃないか!」
「……遺族の反応は致し方ないものかと。王女への暴挙は王家への反逆と見做されておかしくない行為です。そんな大罪を犯そうとしたハンスを引き取ることを嫌がるのは当然のことではありませんか?」
自分の怒りに同意せず、ハンスの遺族を庇う発言をする家令にダニエルはひどく驚いた。
同情するような視線のまま、家令はダニエルに向かって優しく声をかける。
「申し訳ございません、坊ちゃま……。私どもが貴方様を甘やかしてきたばっかりに……」
言葉の途中で嗚咽を漏らす家令。見ればその目からは涙が溢れ頬を伝っていく。
「坊ちゃま、この国で貴族として生きていく以上、王族への反逆行為は絶対にしてはいけないことなのです。家族どころか一族郎党全員が処刑されてもおかしくないのです。王女に暴挙を働いた反逆者を引き取って一族に累が及んだらどうします? 貴族も平民も自分の生活と家族を守りたいという気持ちは同じです」
まるで子供に言い聞かせるような声音と涙を流す姿にダニエルは何も言えなかった。
「そういったことをお教えせず、貴方様のやることを全て肯定し、叱ることすらしなかった私どもが全て悪いのです……。私どもは坊ちゃまが幸せであれと願うより、坊ちゃまがご立派な当主となるよう助力すべきでした」
暗に今は立派ではないと言われたことがショックだったが、それを非難する言葉は出なかった。ただ黙って話の続きに耳を傾ける。
「坊ちゃま、アニー様とは縁を切りなさい。平民として子供を育てていくのに十分な金を手切れ金として渡し、それきり会うのはお止めになることです。そして王女様を妻としてお迎えし、丁重に扱ってください。間違ってもアニー様との子を王女様との子だと偽るような神をも恐れぬ所業をしてはいけません」
「は? なんで今更そんなことを言うんだ? あんなに賛成してくれていたじゃないか!?」
「賛成してしまったこと自体が間違えだったのです……! 王族の姫君にそのような真似をすれば全員の首が飛びます! 貴方様も、私どもも、アニー様やアニー様が産んだ赤子までもが……!」
鬼気迫る表情で叫ぶ家令にダニエルはびくりと体を震わせる。
内容もそうだが、優しかった家令のこんな恐ろしい顔は初めて見たからだ。
「坊ちゃま、わたくしも家令さんと同じ意見です。もう、これ以上貴方様の我儘を聞くことは致しません。それは結果的に貴方様の為になりませんから……」
「ばあやまでそんなことを言うのか!? 好きな女性を妻に迎えたいというささやかな願いが我儘なものか!」
「いいえ、我儘です! 自分の願いを叶えてほしいと駄々をこねる幼子のような真似はもうやめましょう……。貴方様の言う事全てが正しいように肯定してきたわたくし達のせいでございますが……ここで止めておきませんと取り返しのつかないことになります。先ほど家令さんがおっしゃったことは脅しではありません。ここで止まらないと確定する未来です」
そんな大袈裟な……と呟くダニエルに二人は揃って首を振る。
「大袈裟ではございません。もう、今後はアニー様に会うのはお止めください」
「はあ? もうすぐ私の子が産まれるんだぞ! それなのに会うなとはあんまりだ!」
「自分の子を一度見てしまえば情が沸きます! そうなれば離れがたくなることでしょう……。悪い事は言いません。産まれた子に会っては駄目です。産後のアニー様と、アニー様とお子様が住むための家の用意、手切れ金等につきましては手配させていただきますのでどうかご了承を」
何を言っても味方になってくれず、それどころかアニーと別れろと苦言を呈してくる二人にダニエルは信じられないものを見るような目を向けた。しかし、そんな哀れさを催す姿に絆されはしない。何せ大切な坊ちゃまの命がかかっているのだから。
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そんな彼を放置したまま二人は執務室を後にした。
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