やりなおしジュリアーナ姫の復讐劇

わらびもち

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危機

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「はあ……分かりました。ではお言葉に甘えて選ばせていただきます」

 婚約は破棄するつもりだから当然結婚する予定も無くなる。
 だから花嫁衣裳の作成自体が無駄なことなのだが、今は言う通りにしないとこの男はずっとこの場に留まりそうだ。

 布地の選択と採寸だけしてもらい、後でラティーシャ夫人に花嫁衣裳を作らないようお願いしておこう。オーガスタ領の民が納めた大切な税を無駄に浪費することは避けたい。

「おお! ありがとうございます、殿下!」

 嬉しそうな男の顔が腹立たしい。
 しかしそれで満足したのか後のことは商品を運ぶ女性達に任せてさっさと部屋を出ていった。

「それでは布地はどれに致しますか?」

 異国の服を身に纏った女性がたどたどしく尋ねてきた。
 その発音と訛りからこの国の者ではないことが分かる。

「そうね……」

 それにしても美しい布地ばかりだ。
 あの男の紹介でなければ個人的にいくつか購入したいくらい上質で見たこともない美しさの絹ばかり。これが憎い男との有りもしない結婚の為のものではなく、好いた相手との結婚式に向けての衣装ならば喜んで選ぶというのに……。

「じゃあ、こちらをお願い……」

 選んだ布はふんわりと軽やかでまるで羽のようだった。
 悔しいが本当にいい絹だ。いっそ買い取ってしまいたくなるほどの品。

(どうして、どうとも思っていない相手にこんな上質な絹を……?)

 ダニエルの考えがさっぱり分からない。
 あの男にとってジュリアーナはただの使い捨ての道具。しかも意味不明な使い道をされて壊される予定の、金をかけてやる価値などこれっぽっちもない道具。

 そんな道具を相手にわざわざこんな上等な品を用意すること自体がおかしい。

「こちらでございますね。それでは採寸に移るのですが……どちらで行いましょうか?」

 男の護衛騎士がいるこの場で採寸するわけには……と言わんばかりの女性にジュリアーナは別室を案内した。

 そういえば彼女達はどこの商会の従業員なのだろうか。
 いや、そもそも商会というのはこちらが勝手に想像したことだ。
 彼女達が本当にそうだというのは分からない。ダニエルが紹介もしないので分からず仕舞いだ。

「そういえば貴方達はどこから……」

 別室で採寸を行う際、気になったジュリアーナが声をかけようとすると女性がいきなり布地を手に取り両手で広げ始めた。

「え? 何を……っ!?」

 突然女性が布地をジュリアーナの頭から被せてきた 。
 急な息苦しさに驚いてもがくと何やら甘ったるい香りを吸い込んでしまう。

(なに……これ、意識が…………)

 その甘い香りを吸い込んだ途端急に意識が朦朧とし、妙な浮遊感の後ジュリアーナの視界は白く染まったのだった……。
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