侯爵令嬢アリスティアの愛する人

わらびもち

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国王陛下

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 私がショックで言葉を失くしたその時、威厳のある声がその場に響き渡りました。

「そこで何をしている」

 声の主はなんと国王陛下でした。

「国王陛下!」「え、国王陛下? どうしてここに!?」

 いきなりの国王陛下の登場に唖然とするラウロ様。
 私とお兄様はすぐさま陛下に臣下の礼をとります。

「よい、楽にせよ。してヴァージル小侯爵、この騒ぎは一体何ぞ?」
 
 国王陛下はラウロ様ではなく、お兄様にこの騒ぎの説明を求めました。

「はい、実は「国王陛下! 私はこのアリスティアとの婚約を破棄します!」」

 あろうことかラウロ様はお兄様の発言を妨げ、許しも得ていないのに国王陛下に直訴したのです。
 この方、礼儀というものがなっていないどころか常識すら持ち合わせていないのかしら?

「はあー……オレガノ伯爵子息、余は其方に直答を許しておらん。話にならんな。衛兵、この者を捕えよ。それとオレガノ伯爵夫妻を呼んで参れ、別室で詳しくこの騒ぎの原因を聞こう。ヴァージル小侯爵、それとアリスティアも悪いが共に来てくれるか?」

 確かにこの場でラウロ様がこれ以上失言を重ねると、最悪オレガノ伯爵家自体が取り潰される事態にまでなってしまいそう。当事者同士で話した方が無難ですね。

 ですが、あの方と初めて踊れると楽しみにしていた夜会なのに、こんなことになるなんて……。

 チラリとあの方に視線をやると、優しく微笑みを返してくれました。
 それだけで胸を高鳴らせてしまうなんて、私ってば現金ですね。

 こんな時でもあの方は私を想ってくださっている。
 そう考えただけで心が弾み、別室に向かう足取りも軽くなります。

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