侯爵令嬢アリスティアの愛する人

わらびもち

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婚約の内容①

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 別室に着き、そこに置いてある長椅子に陛下が着席し、その隣の席を私に薦めてくださいました。
 お兄様は別の椅子を薦められ、縛られたラウロ様は床に転がされております。

 ラウロ様の扱い酷いですね……。
 でも王家主催の夜会で婚約破棄宣言するような人ですもの。陛下が怒るのも無理ないです。

 そのラウロ様は「どうして陛下の横にお前が!?」と言わんばかりの顔でこちらを見ています。
 その顔を見る限り、この人は私達の婚約の意味を全く分かっていなかったのですね、と呆れてしまいました。
 
 しばらくしてオレガノ伯爵夫妻が部屋を訪れ、土下座せんばかりの勢いで入ってくるなり床に膝をつきました。

「このような騒ぎを起こして申し訳ございません、陛下!! 愚息の愚行で夜会に水を差した罪、どう償ってよいやら……。どのような罰でもお受けいたす所存であります!」

 道中で事の子細を聞いたであろう伯爵夫妻は顔面蒼白で陛下に謝罪しました。
 それを見る限り、夫妻はこの婚約の意味をきちんと理解しているのでしょう。
 では、どうしてラウロ様はちっとも理解していないのかしら?
 今も目をキョトンとさせて自分の両親を見ているし……。

「オレガノ伯爵夫妻よ、其方たちの子息はアリスティアとの婚約を破棄するなどと宣言したのだぞ? 結婚式も半年後に控えているというのに……。王命を勝手に破棄しようとするなど、オレガノ伯爵家は王家に叛意を抱いておるのか?」

「叛意など滅相もございません! この愚息が勝手なことを申しているだけでございます! 当家はアリスティア様との婚約を破棄する気など毛頭ございませぬ!」

「ほう……? では子息に理由を聞いてみるか。おい、猿轡を外してやれ」

 騒がれないようにと猿轡までかまされていたラウロ様。
 兵士にそれを外され、ブハッと息を吐くとまた大声で騒ぎ始めました。

「陛下! 僕……いえ、私は愛のない婚姻など嫌なのです! 婚姻とは神聖なるもの、ならば真実の愛で結ばれた二人がすべきものではございませんか!?」

「ラウロ! お前は何を訳の分からないことを言っているんだ!?」

 ラウロ様の発言にお父君のオレガノ伯爵が信じられないものを見る眼を向けました。
 そうですよね、分かります。私も彼が何を言ってるか理解不能ですもの。

「父上は私の気持ちを分かってくださったじゃないですか!?  だからジェシーと別れなくてよいと、別邸に住まわせてよいと言ってくれたでしょう?」

「はあ? 本当に何を言っているんだ? 確かに分かれずともよいとは言ったが、それとアリスティア様との婚姻は別の話だろう?」

「別の話? 父上こそ何を仰っているんです! 婚姻すればアリスティアは私の妻、オレガノ伯爵夫人になるでしょう? そして私との子を成し、その子が跡継ぎとなってしまう! そうではなくて私は真実の愛で結ばれたジェシーを妻とし、ジェシーとの子を跡継ぎにしたいんだ!」

「は……? アリスティア様がお前と子を成す? ……何を言っているんだお前、そんなわけないだろう? お前とアリスティア様はになるのだから」

「は? え……? しょ、書類上だけの夫婦……?」

 そうです。私とラウロ様との婚姻はあくまで書類上だけのもの。
 まあ形式的に結婚式はあげますけど、婚姻後に私がオレガノ伯爵家に住むことはありませんよ?
 ラウロ様……ほんっとうにこの婚約の意味を分かってなかったのですね?

「……オレガノ伯爵、子息はこの婚約の意味が分かっていないようだが? 其方はきちんと説明したのか?」

「勿論でございます陛下! ラウロ! 私はお前にきちんと説明しただろう!? どうしてそんな馬鹿みたいな勘違いをしているんだ!」

「そうですラウロ! お父様は貴方に説明しましたし、婚約承諾書にもきちんと記載されていたでしょう? アリスティア様は国王陛下のになるので、そのための婚約だと! 貴方はきちんとそれに署名もしてたでしょう? どうしてそんな勘違いをしているの!」

「え……公妾? アリスティアが……?」

 そうです。私は元々国王陛下の公妾となるためにラウロ様と婚約を結んだのです。
 それは顔合わせの際にきちんと説明しましたし、私の家族もオレガノ伯爵夫妻も分かっているのに、どうしてラウロ様だけ理解していないのでしょう?
 
 もしかして話を聞いていなかったのですか……?
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