21 / 54
アリスティアの目覚め
しおりを挟む
頭を優しく撫でる手の温もりに私の意識は夢の世界から現実へと戻りました。
温かくて大きな手。
この手の持ち主が誰かを、私は知っています。
「陛、下……?」
重い瞼を開くと視界一杯に愛しい陛下のお顔が映りました。
もう見れないと思った大好きな顔。
それが目の前にあるだなんて、夢でも見ているのでしょうか?
「アリスティア!? よかった……目が覚めて……! 誰か、侍医を連れて参れ! アリスティアが目覚めたぞ!!」
愛する方のお声が響くと、部屋の外が急にバタバタと慌ただしくなりました。
あれ? もしかしてこれは夢じゃない?
でも、ならどうして陛下がここに……?
「陛下……? どうしてここにいらっしゃるのですか?」
「アリスティアが心配で居ても立っても居られなくてな……。侯爵に我儘を言ってここ数日通わせてもらったのだよ。もう其方が目覚めないんじゃないかと心配で心配で……」
陛下、泣いてらっしゃるの!?
そこまで私のことを想ってくださってるの?
嬉しい……嬉しいです。
「陛下、申し訳ございません……私の不注意でこんなことに……! 私はもう、陛下の公妾にはなれないでしょうか……?」
「何を言うんだアリスティア! 此度のことは其方のせいではない! そんなに自分を責めてはならぬ。それに余は決して其方を手放したりはしない。 愛しておるのだアリスティア……。其方は余の半身、其方がいなくては生きていけぬ」
「陛下……! 私がお傍に侍ることをお許しくださるのですか?」
「許すも何も、其方が余の傍にいない未来などあってはならない。愛してる……アリスティア……」
陛下の言葉が嬉しくて涙が溢れて止まらない。
私は貴方ともう二度とお会いできないものだと思っておりました……。
「私も愛しております、陛下……。私も貴方様だけが唯一でございます……」
私を見つめる海色の瞳。この優しい眼差しを向けられる特権は誰にも渡したくない。
どちらからともなく唇を重ね、久方ぶりの口付けに酔いしれていると不意に咳払いが聞こえてきました。
「あー……、ご歓談中のところ失礼いたします陛下。アリスティアが目覚めたと聞きましたので、その……侍医に診せてもよろしいでしょうか?」
声の方を向くと、ばつが悪そうな顔をする両親と使用人の皆がおりました。
それにまあ……お医者様まで。
一部始終を見られてしまったのですね、恥ずかしいわ……。
「おお、侯爵よ、すまぬな。3日も目を覚まさなかったから嬉しくてつい、な」
「はは……娘と仲睦まじくして頂いて大変光栄にございます」
お父様ったら棒読みですわ!
娘のラブシーンなんて見ちゃったから気まずいですわよね……。
温かくて大きな手。
この手の持ち主が誰かを、私は知っています。
「陛、下……?」
重い瞼を開くと視界一杯に愛しい陛下のお顔が映りました。
もう見れないと思った大好きな顔。
それが目の前にあるだなんて、夢でも見ているのでしょうか?
「アリスティア!? よかった……目が覚めて……! 誰か、侍医を連れて参れ! アリスティアが目覚めたぞ!!」
愛する方のお声が響くと、部屋の外が急にバタバタと慌ただしくなりました。
あれ? もしかしてこれは夢じゃない?
でも、ならどうして陛下がここに……?
「陛下……? どうしてここにいらっしゃるのですか?」
「アリスティアが心配で居ても立っても居られなくてな……。侯爵に我儘を言ってここ数日通わせてもらったのだよ。もう其方が目覚めないんじゃないかと心配で心配で……」
陛下、泣いてらっしゃるの!?
そこまで私のことを想ってくださってるの?
嬉しい……嬉しいです。
「陛下、申し訳ございません……私の不注意でこんなことに……! 私はもう、陛下の公妾にはなれないでしょうか……?」
「何を言うんだアリスティア! 此度のことは其方のせいではない! そんなに自分を責めてはならぬ。それに余は決して其方を手放したりはしない。 愛しておるのだアリスティア……。其方は余の半身、其方がいなくては生きていけぬ」
「陛下……! 私がお傍に侍ることをお許しくださるのですか?」
「許すも何も、其方が余の傍にいない未来などあってはならない。愛してる……アリスティア……」
陛下の言葉が嬉しくて涙が溢れて止まらない。
私は貴方ともう二度とお会いできないものだと思っておりました……。
「私も愛しております、陛下……。私も貴方様だけが唯一でございます……」
私を見つめる海色の瞳。この優しい眼差しを向けられる特権は誰にも渡したくない。
どちらからともなく唇を重ね、久方ぶりの口付けに酔いしれていると不意に咳払いが聞こえてきました。
「あー……、ご歓談中のところ失礼いたします陛下。アリスティアが目覚めたと聞きましたので、その……侍医に診せてもよろしいでしょうか?」
声の方を向くと、ばつが悪そうな顔をする両親と使用人の皆がおりました。
それにまあ……お医者様まで。
一部始終を見られてしまったのですね、恥ずかしいわ……。
「おお、侯爵よ、すまぬな。3日も目を覚まさなかったから嬉しくてつい、な」
「はは……娘と仲睦まじくして頂いて大変光栄にございます」
お父様ったら棒読みですわ!
娘のラブシーンなんて見ちゃったから気まずいですわよね……。
511
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
さよなら 大好きな人
小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。
政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。
彼にふさわしい女性になるために努力するほど。
しかし、アーリアのそんな気持ちは、
ある日、第2王子によって踏み躙られることになる……
※本編は悲恋です。
※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。
※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
元婚約者が愛おしい
碧井 汐桜香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。
留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。
フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。
リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。
フラン王子目線の物語です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる