侯爵令嬢アリスティアの愛する人

わらびもち

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アリスティアの目覚め

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 頭を優しく撫でる手の温もりに私の意識は夢の世界から現実へと戻りました。

 温かくて大きな手。
 この手の持ち主が誰かを、私は知っています。

「陛、下……?」

 重い瞼を開くと視界一杯に愛しい陛下のお顔が映りました。
 
 もう見れないと思った大好きな顔。

 それが目の前にあるだなんて、夢でも見ているのでしょうか?

「アリスティア!? よかった……目が覚めて……! 誰か、侍医を連れて参れ! アリスティアが目覚めたぞ!!」

 愛する方のお声が響くと、部屋の外が急にバタバタと慌ただしくなりました。
 
 あれ? もしかしてこれは夢じゃない?
 
 でも、ならどうして陛下がここに……?

「陛下……? どうしてここにいらっしゃるのですか?」

「アリスティアが心配で居ても立っても居られなくてな……。侯爵に我儘を言ってここ数日通わせてもらったのだよ。もう其方が目覚めないんじゃないかと心配で心配で……」

 陛下、泣いてらっしゃるの!?
 
 そこまで私のことを想ってくださってるの?
 
 嬉しい……嬉しいです。

「陛下、申し訳ございません……私の不注意でこんなことに……! 私はもう、陛下の公妾にはなれないでしょうか……?」

「何を言うんだアリスティア! 此度のことは其方のせいではない! そんなに自分を責めてはならぬ。それに余は決して其方を手放したりはしない。 愛しておるのだアリスティア……。其方は余の半身、其方がいなくては生きていけぬ」

「陛下……! 私がお傍に侍ることをお許しくださるのですか?」

「許すも何も、其方が余の傍にいない未来などあってはならない。愛してる……アリスティア……」

 陛下の言葉が嬉しくて涙が溢れて止まらない。
 
 私は貴方ともう二度とお会いできないものだと思っておりました……。

「私も愛しております、陛下……。私も貴方様だけが唯一でございます……」

 私を見つめる海色の瞳。この優しい眼差しを向けられる特権は誰にも渡したくない。
 どちらからともなく唇を重ね、久方ぶりの口付けに酔いしれていると不意に咳払いが聞こえてきました。

「あー……、ご歓談中のところ失礼いたします陛下。アリスティアが目覚めたと聞きましたので、その……侍医に診せてもよろしいでしょうか?」

 声の方を向くと、ばつが悪そうな顔をする両親と使用人の皆がおりました。

 それにまあ……お医者様まで。

 一部始終を見られてしまったのですね、恥ずかしいわ……。

「おお、侯爵よ、すまぬな。3日も目を覚まさなかったから嬉しくてつい、な」

「はは……娘と仲睦まじくして頂いて大変光栄にございます」

 お父様ったら棒読みですわ! 
 
 娘のラブシーンなんて見ちゃったから気まずいですわよね……。

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