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国王陛下が外遊先から戻り、セレスタンの件について説明すると見る見るうちに顔色を悪くさせ、大きなため息をついた。
「そんな非常識な阿呆だったとは……。そんな奴と婚約させてしまい、すまなかったなフランチェスカ……」
さすがの父もセレスタンほど非常識で頭のおかしい人間は今まで会ったことがないのかもしれない。
そしてそんな頭のおかしい輩と娘を婚約させてしまったと、深く後悔しているようだ。
「それでお父様、セレスタン様との婚約を解消させて頂きたいのですが……」
「うむ……だが、ヨーク公爵家との関係性についてはどうしたものか……」
「ああ、それでしたら公爵閣下が……」
ヨーク公爵よりセレスタンの代わりに年の離れた弟を婚約者にどうかと提案されたことを父に話す。
すると父は顎に手を添え、渋い顔を見せた。
「ううむ……庶子と婚約させるのは些か抵抗があるが、致し方あるまい」
「はい。それに今度は一度顔合わせをしてから婚約を決めようかと」
「そうだな、またセレスタンのような非常識な男だと困るしな。ああ……それとセレスタンは”病気療養”といった形にしよう。それなら婚約者変更もやむを得ないと周囲に印象付けられるしな」
「”病気療養”ですか? でも、セレスタン様が元気にやらかした所は既に他の貴族家の皆様に見られておりますよ? 病気というのは無理がありませんか?」
「病気だろう、頭のな。王宮で王女を罵倒するなど、まともな頭の人間がやることじゃない。どう考えても頭が病んでいると言えるだろう?」
「ああ、成程。確かに……」
確かに彼は頭が病んでいる。
婚約者の住む王宮で、婚約者の侍女と浮気が出来るなんて頭のおかしな人間がやることだ。
「セレスタンの所業を公にすると、もうヨーク公爵家から婚約者を迎えられなくなる。王家に仕える臣下の身分で王女を裏切り続けていたなどと、本来であれば王家に叛意有りとしてヨーク公爵家を罰せねばならないことだ」
「既に結構な人数の方に知られてしまっておりますが……。王宮の門前で騒いだので、多数の貴婦人に目撃されております」
「それは知っている。だが王家が公にしなければ他家も表立ってヨーク公爵家を非難出来ぬ。……余も父親としては娘を愚弄した屑男を処刑してやりたい。済まぬな、フランチェスカ……」
「お父様……。わたくしはお父様のそのお気持ちだけで十分です」
痛々しい表情で俯く父親を見るとなんともやるせない気持ちになる。
きっと父は私が婚約者に裏切られてひどく傷ついていると思っているはずだ。
だが実際はセレスタンの浮気を知っていたうえで泳がせていただけ。
一思いに破滅させるのではなく、じわじわと彼が苦しむ姿が見たかったという理由で。
そんなことをせず、最初から素直に浮気をしていると伝えていればよかったのだろうか。
(いや、それは悪手だわ……)
今回の場合、セレスタンが勝手に暴走してくれたおかげで私は完全な被害者の立場でいられる。
だが、仮に私がセレスタンの浮気を責め立てた場合『男の浮気くらいで騒いで情けない』と言われかねない。
社交界では男の浮気を騒ぎ立てるのはみっともないという理不尽な空気が蔓延している。
正妻ならば愛人の存在に動揺せず、どっしりと構えるべきだという男尊女卑な考えだ。
男女問わずパートナーが浮気するのは許しがたいだろうに、女だけに我慢を強いるのは如何なものか。
文句は山のようにあるが、この考えが浸透しているのが貴族社会だ。
今回の件で私は一度も騒いでいないし、浮気についてセレスタンを直接責めてもいない。
嫌味は言ったがそれは許される範囲の行いだ。
セレスタンが勝手に浮気して、勝手に騒いでくれたおかげで社交界での私の評価は下がらなかった。
むしろ”婚約者が不貞を働いても騒がず、泰然と構えている”と称賛されたのだ。
あの二人があっさりと表舞台から姿を消すことになったのは、少々張り合いがないしつまらないのだが、これでよかったのかもしれない。
セレスタンは”病気療養”とされるなら、もう二度と社交界には顔を出せない。
ヨーク公爵家に監視されながら一生を過ごすことになるだろう。
侍女であるアンヌマリーの処罰は”王宮からの追放及び一生涯において立ち入りを禁ずる”ことと、”鞭打ち10回の刑”だ。彼女は私の助言通り、ひたすらセレスタンに罪を着せたことにより比較的軽い罰で済んだ。
本来であれば処刑ものだし、彼女の生家も爵位を剥奪されかねない。
王宮の侍女への処遇は王妃に決定権があるため、罰も国王ではなく王妃が直々に下した。
王妃から追放と立ち入り禁止を宣言された令嬢はもうまともな縁談は望めない。
王家から睨まれた娘を娶りたがる貴族家が存在するはずもないのだから。
そうなると、セレスタンとアンヌマリーはどうするだろうか。
障害は多いが、それでも愛を貫こうとするだろうか。
もしそうだとしたら……二人の愛は真実と言えるのかもしれない。
「そんな非常識な阿呆だったとは……。そんな奴と婚約させてしまい、すまなかったなフランチェスカ……」
さすがの父もセレスタンほど非常識で頭のおかしい人間は今まで会ったことがないのかもしれない。
そしてそんな頭のおかしい輩と娘を婚約させてしまったと、深く後悔しているようだ。
「それでお父様、セレスタン様との婚約を解消させて頂きたいのですが……」
「うむ……だが、ヨーク公爵家との関係性についてはどうしたものか……」
「ああ、それでしたら公爵閣下が……」
ヨーク公爵よりセレスタンの代わりに年の離れた弟を婚約者にどうかと提案されたことを父に話す。
すると父は顎に手を添え、渋い顔を見せた。
「ううむ……庶子と婚約させるのは些か抵抗があるが、致し方あるまい」
「はい。それに今度は一度顔合わせをしてから婚約を決めようかと」
「そうだな、またセレスタンのような非常識な男だと困るしな。ああ……それとセレスタンは”病気療養”といった形にしよう。それなら婚約者変更もやむを得ないと周囲に印象付けられるしな」
「”病気療養”ですか? でも、セレスタン様が元気にやらかした所は既に他の貴族家の皆様に見られておりますよ? 病気というのは無理がありませんか?」
「病気だろう、頭のな。王宮で王女を罵倒するなど、まともな頭の人間がやることじゃない。どう考えても頭が病んでいると言えるだろう?」
「ああ、成程。確かに……」
確かに彼は頭が病んでいる。
婚約者の住む王宮で、婚約者の侍女と浮気が出来るなんて頭のおかしな人間がやることだ。
「セレスタンの所業を公にすると、もうヨーク公爵家から婚約者を迎えられなくなる。王家に仕える臣下の身分で王女を裏切り続けていたなどと、本来であれば王家に叛意有りとしてヨーク公爵家を罰せねばならないことだ」
「既に結構な人数の方に知られてしまっておりますが……。王宮の門前で騒いだので、多数の貴婦人に目撃されております」
「それは知っている。だが王家が公にしなければ他家も表立ってヨーク公爵家を非難出来ぬ。……余も父親としては娘を愚弄した屑男を処刑してやりたい。済まぬな、フランチェスカ……」
「お父様……。わたくしはお父様のそのお気持ちだけで十分です」
痛々しい表情で俯く父親を見るとなんともやるせない気持ちになる。
きっと父は私が婚約者に裏切られてひどく傷ついていると思っているはずだ。
だが実際はセレスタンの浮気を知っていたうえで泳がせていただけ。
一思いに破滅させるのではなく、じわじわと彼が苦しむ姿が見たかったという理由で。
そんなことをせず、最初から素直に浮気をしていると伝えていればよかったのだろうか。
(いや、それは悪手だわ……)
今回の場合、セレスタンが勝手に暴走してくれたおかげで私は完全な被害者の立場でいられる。
だが、仮に私がセレスタンの浮気を責め立てた場合『男の浮気くらいで騒いで情けない』と言われかねない。
社交界では男の浮気を騒ぎ立てるのはみっともないという理不尽な空気が蔓延している。
正妻ならば愛人の存在に動揺せず、どっしりと構えるべきだという男尊女卑な考えだ。
男女問わずパートナーが浮気するのは許しがたいだろうに、女だけに我慢を強いるのは如何なものか。
文句は山のようにあるが、この考えが浸透しているのが貴族社会だ。
今回の件で私は一度も騒いでいないし、浮気についてセレスタンを直接責めてもいない。
嫌味は言ったがそれは許される範囲の行いだ。
セレスタンが勝手に浮気して、勝手に騒いでくれたおかげで社交界での私の評価は下がらなかった。
むしろ”婚約者が不貞を働いても騒がず、泰然と構えている”と称賛されたのだ。
あの二人があっさりと表舞台から姿を消すことになったのは、少々張り合いがないしつまらないのだが、これでよかったのかもしれない。
セレスタンは”病気療養”とされるなら、もう二度と社交界には顔を出せない。
ヨーク公爵家に監視されながら一生を過ごすことになるだろう。
侍女であるアンヌマリーの処罰は”王宮からの追放及び一生涯において立ち入りを禁ずる”ことと、”鞭打ち10回の刑”だ。彼女は私の助言通り、ひたすらセレスタンに罪を着せたことにより比較的軽い罰で済んだ。
本来であれば処刑ものだし、彼女の生家も爵位を剥奪されかねない。
王宮の侍女への処遇は王妃に決定権があるため、罰も国王ではなく王妃が直々に下した。
王妃から追放と立ち入り禁止を宣言された令嬢はもうまともな縁談は望めない。
王家から睨まれた娘を娶りたがる貴族家が存在するはずもないのだから。
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