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新居に現れた不審人物②
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「その男女の顔は見たの?」
「は、はい……それが、女の方は見たのですが、男の方は帽子を深く被っていたので見ておりません」
「そう……。なら、女の方に何か特徴は?」
「いえそれが……どちらかといえば地味な外見だったのであまり覚えていないのです。ブローチがやけに目立っていたから、そちらにばかり目が行ってしまって……」
「そうなの……」
どうしたものかと判断に迷う。
その男女が何の目的があってここに来たのかイマイチ掴めない。
物盗り目的だとしても、ここには家具すら置いていないのだから盗む物もない。
考えられるとしたら、政敵が私かルイを害す目的で忍びこんだのかもしれない。
だがそれにしては、その男女はどうも服装と持ち物がちぐはぐだ。
エメラルドのブローチを用意できるほどの財力があるならば、どうして荷物に空の酒瓶などという物を用意したのか。もっとそれっぽい調度品などを持参し、更に言えばどこぞの家からの贈り物というていにすれば怪しまれることもなかっただろうに。
なんというか間者にしては行動が稚拙過ぎる。
エメラルドのブローチにしても、情報がどうも中途半端だ。
素人仕事だとしか思えないくらいおかしな行動。何が目的なのか全く掴めない。
「その男女がここに来たのは一度だけかしら?」
「はい、さようでございます」
「そう、何か不審な動きは無かった?」
「あ、そういえば一つだけありました。その荷物を運んだのは女の方なんですよ。男は手伝おうともしないで、ただ前の方を歩いていただけでした。か弱い女性に重い荷物を運ばせるなんて酷い奴だなと思ったのです」
「女性に荷物を……?」
女性だけに荷物を持たせるという行為はどうかと思うが、何も持たないというのならその男は何をしに来たのだろうか。
「フラン、衛兵を呼んで調査してもらおう」
「ルイ……ええ、そうね。それなら王宮の衛兵をここに派遣するわ」
得体の知れない者が侵入した邸に安心して住めるわけがない。
だけど……一度しか来ていない訪問者を特定することなど出来るだろうか。
前世では防犯カメラという便利な文明の利器が存在したが、この世界にはそんなもの存在しないというのに……。
(あ……! そうだ、あるじゃない、防犯カメラのような物が!!)
そうだ、私には王族だけが使用可能な便利道具がある。
アレをこの邸の中に設置して、もう一度侵入者が来たのなら顔を拝めるかもしれない。
「今日はもう帰りましょう。王宮まで送ります」
「ええ、そうね。ありがとうルイ……」
ルイに肩を抱かれ、守られるような状態で馬車へと乗り込む。
その時、ふと彼の後ろの光景に目を奪われた。
(あ……これは、もしかして……)
目に映ったのは公爵家の侍女がルイの荷物を持ち、しずしずと彼の後ろを歩く様子。
主人の荷物を侍女が持つという、ごくありふれた様子。
だが私はこれにピンときた。
(高貴な身分の男なら……女性に荷物を持たせても何とも思わないはず)
女が重い荷物を持ち、男は何も持たずに手ぶらで歩く。
それは傅かれることを当然とした貴族なら当たり前のこと。
その侵入者の男が貴族ならば、女性に重い物を持たせても何とも思わないはず。
(でも、もしそうなら貴族がどうしてわざわざ酒の空瓶をこの邸に持ってくるの? それとも荷物は単なるカモフラージュで、本来の目的は別にある……?)
いずれにせよ対処は必要だ。
せっかくの新居なのに厄介なことが起きてしまったと私は頭を抱えた。
「は、はい……それが、女の方は見たのですが、男の方は帽子を深く被っていたので見ておりません」
「そう……。なら、女の方に何か特徴は?」
「いえそれが……どちらかといえば地味な外見だったのであまり覚えていないのです。ブローチがやけに目立っていたから、そちらにばかり目が行ってしまって……」
「そうなの……」
どうしたものかと判断に迷う。
その男女が何の目的があってここに来たのかイマイチ掴めない。
物盗り目的だとしても、ここには家具すら置いていないのだから盗む物もない。
考えられるとしたら、政敵が私かルイを害す目的で忍びこんだのかもしれない。
だがそれにしては、その男女はどうも服装と持ち物がちぐはぐだ。
エメラルドのブローチを用意できるほどの財力があるならば、どうして荷物に空の酒瓶などという物を用意したのか。もっとそれっぽい調度品などを持参し、更に言えばどこぞの家からの贈り物というていにすれば怪しまれることもなかっただろうに。
なんというか間者にしては行動が稚拙過ぎる。
エメラルドのブローチにしても、情報がどうも中途半端だ。
素人仕事だとしか思えないくらいおかしな行動。何が目的なのか全く掴めない。
「その男女がここに来たのは一度だけかしら?」
「はい、さようでございます」
「そう、何か不審な動きは無かった?」
「あ、そういえば一つだけありました。その荷物を運んだのは女の方なんですよ。男は手伝おうともしないで、ただ前の方を歩いていただけでした。か弱い女性に重い荷物を運ばせるなんて酷い奴だなと思ったのです」
「女性に荷物を……?」
女性だけに荷物を持たせるという行為はどうかと思うが、何も持たないというのならその男は何をしに来たのだろうか。
「フラン、衛兵を呼んで調査してもらおう」
「ルイ……ええ、そうね。それなら王宮の衛兵をここに派遣するわ」
得体の知れない者が侵入した邸に安心して住めるわけがない。
だけど……一度しか来ていない訪問者を特定することなど出来るだろうか。
前世では防犯カメラという便利な文明の利器が存在したが、この世界にはそんなもの存在しないというのに……。
(あ……! そうだ、あるじゃない、防犯カメラのような物が!!)
そうだ、私には王族だけが使用可能な便利道具がある。
アレをこの邸の中に設置して、もう一度侵入者が来たのなら顔を拝めるかもしれない。
「今日はもう帰りましょう。王宮まで送ります」
「ええ、そうね。ありがとうルイ……」
ルイに肩を抱かれ、守られるような状態で馬車へと乗り込む。
その時、ふと彼の後ろの光景に目を奪われた。
(あ……これは、もしかして……)
目に映ったのは公爵家の侍女がルイの荷物を持ち、しずしずと彼の後ろを歩く様子。
主人の荷物を侍女が持つという、ごくありふれた様子。
だが私はこれにピンときた。
(高貴な身分の男なら……女性に荷物を持たせても何とも思わないはず)
女が重い荷物を持ち、男は何も持たずに手ぶらで歩く。
それは傅かれることを当然とした貴族なら当たり前のこと。
その侵入者の男が貴族ならば、女性に重い物を持たせても何とも思わないはず。
(でも、もしそうなら貴族がどうしてわざわざ酒の空瓶をこの邸に持ってくるの? それとも荷物は単なるカモフラージュで、本来の目的は別にある……?)
いずれにせよ対処は必要だ。
せっかくの新居なのに厄介なことが起きてしまったと私は頭を抱えた。
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