ダンジョンフォーミング

美山 毛先

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低階層 編

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 十八階層からはゴブリンマジシャンしか出てこなかった。倒しても本であったり、杖であったりとなかなかに調べる意欲が湧くものであったが今は区切りよく二十階層まで進めることを優先しているので背嚢に無造作に放り込んでいるだけである。
 階層ドロップなどもゆっくりと調べたいところだが、取り急ぎ必要なものも現状ではないために見つけては背嚢に放り込みしているのでぐんぐん攻略速度は上がっていく。

 複数のゴブリンマジシャンが出だした十九階層は流石に焦ることとなった。複数の属性の魔法が飛んできた際に融合のような状態になり思わぬ威力を出したことがあったためだ。さすがにその時ばかりは油断を戒めることとなったが、接敵さえしてしまえものの数ではなかった。思いの外使い勝手がいいクリスタル製の武器は暇を見つけては練習していたせいか、様々な形状、出現までの速度などが目に見えて向上しており性質もコントロールできるようになっている。結果として切れ味も増したため気を使わなくてもかなり戦えるようになっている。

「さて、定石ではこの先にはゴブリンやアーチャー、マジシャンの混合軍だろうが果たしてどうかな」

 以前までの経験を参考に予想を立ててみるが当たっている保証はないので油断しないように注意する。クリスタル製の長剣を抜き身でぶら下げながら扉を勢いよく開けはなつと、飛翔する物体がないか前方を確認しようとして驚きのあまり固まってしまった。

「ここで騎士が出て来るかね・・・」

 部屋の中央に長剣を胸の前に掲げた西洋鎧姿のゴブリンが佇んでいた。威圧感などは今までのゴブリンとは違いかなり強く、戦い慣れていることが仕草から見て取れる。俺は思わぬ強敵の出現に全開で気を練り上げ、クリスタルの剣を程よく脱力しながら握り自己流の構えを取ると駆け出した。

 いちいち向こうの流儀に合わせる必要などないのである。

 地面を蹴って高速で接敵し気で強化した身体能力を生かし、相手が剣を振り下ろして来るタイミングに合わせ体を入れ替えるように後方にすり抜ける。停まるのではなく勢いを回転へと変換しその勢いを利用して長剣を振り抜いた。

「・・・あっれー?案外歯ごたえがなかったんだけどあっれー?」

 俺の早さに振り向くこともできず、振り下ろした剣ごと身体を真っ二つに切り裂かれたゴブリンナイトはあっという間に光の粒子に変わっていった。

 強者の風格を漂わせていたゴブリンナイトであったがいざ戦ってみると拍子抜けであった。そしてドロップアイテムは剣でも、鎧でもなく鍬であった。農作業用のクワである。

「なぜクワ・・・」

 腑に落ちないドロップアイテムを回収しつつ、ボス部屋の宝箱を開けお宝らしき複数の棒を回収する。複数の棒はかなりしっかりとした作りになっており武器のような気がするのだが今のところは使い道がわからない。そのため俺はホーム帰還用のドアから帰ることにした。

「・・・田舎騎士ってことだったのか?」

 今回のドロップアイテムの出た理由を無理やり考えながら二日ぶりのホームへ帰ることにした。
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