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第一章 ー魔王と出会い編ー
第22話 ―魔王と出陣―
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ミリアは信号弾の魔術具を上空へと投げる。
それは一般家庭でも使われている光を放つ魔術具の効果時間を減らし、光量を増やしたものだ。
その光の色などで自軍への連絡用として利用される。
ミリアが投げたものは赤色の信号弾。
敵の接近を意味するものだ。
これでひとまずファーブル砦への連絡は問題ないだろう。
「さて、どうしたものか」
馬を失ってしまったのはかなりの痛手だ。
自軍に戻って加勢するにせよ、敵の増援を回避し補給線を絶つにせよ機動力が必要である。
「規模によるが竜騎士まで出て来ている現状で援軍に来られたら勝機は無さそうだな…」
何しろ竜騎士の攻撃力は恐ろしい。
馬を一撃で潰した事からもわかるとおり4~5メートル程の飛竜が重力の加速と共にやってくるのだ。
歩兵部隊の二十分の一の数であっても歩兵部隊側が負けることの方が多いのだ。
砦で戦っている兵士の数はすでに拮抗している。
「せめて補給線を絶つことが出来れば、援軍共々退却する可能性もあるのだが…」
あれだけの数である。
長期戦は想定していないだろう。
「うむ、だがその発見の報告もないな」
そう、もし誰かが見つけたならミリアが行ったように信号が上がるはずなのだ。
今の所それらしいものは見かけていない。
「クロウ、何か思い当たらないか?」
「…補給線ですがひょっとしたら現在構築中かもしれません」
「…詳しく聞かせてくれ」
この中で一番博識なのはクロウである。
知識に加えて先程から上空からの偵察など一番役に立っているのも彼だった。
「先程の竜騎士が援軍の偵察部隊なのは間違いないでしょう。飛竜の
脚でここまで来るということは遅くとも数時間の内に援軍の部隊はここまで到達します」
「……そうだろうな」
いくら何でも速過ぎる。
ミリアは唇を噛み締める。
これでは別部隊の援軍というより部隊を二つにわけて到着するタイミングをズラしただけだ。
そこまで思い至りミリアはハッと顔を上げた。
「そういうことか。これからやってくる援軍が補給部隊なのか」
「そうです。飛竜がいることを考えると戦力としても数えられるのでしょうが確実に補給部隊を兼ねているかと」
「クソ!そういうことか…」
大事な補給物資である。
勿論ある程度護衛が付いているのは当然だがミリアは自分とラースが奇襲を繰り返せばある程度対処できると考えていた。
大部隊の中に組み込まれているとなるとそういった奇襲も難しいかもしれない。
「まぁなんだ。要はまとめて敵を吹き飛ばしてしまえばいいのだろ?」
興味もなく戦略など詳しくもないラースはあっけらかんと告げる。
ミリアは大きなため息で返した。
「そんなことが出来ると思うのか?相手は飛竜を連れている軍隊だぞ?こちらは2人と1羽だ」
ラースはポリポリと頭を掻いた後、珍しく口を結ぶ。そして、
「どうも忘れられているようだが…」
それまでのニヤニヤとした笑みとは異なり今度は獰猛な獣のような笑みを浮かべる。
「オレ様は魔王様だぞ?」
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ラース達が飛竜の斥候に出会ってから約二時間後、2人と1羽の前方にはダザライ王子の援軍である約5,000の兵士が砂煙を上げながら行軍していた。
その上空には数は多くないがちらほらと飛竜が飛んでいるのが見える。
「…本当に大丈夫なのか?」
予想以上の敵の数にミリアは一度は撤退を提案していた。
砦と王都の防壁と二段構えで迎え討てば何とかなるだろうと。
だがこりたの増援がこなかった場合、それでも勝てる保証はなかった。
何せ敵は一万の大軍である。
不安そうなミリアにラースは自信満々に答えた。
「なんだオレ様の実力を信じないのか?無理して着いてこなくてもいいんだぞ?」
「バカを言うな。第一、ここで貴様を見捨てると姫様に合わせる顔がない」
「ミリアは本当に姫様~姫様~だなぁ。そろそろオレ様の偉大さが伝わっているだろうに」
「…その根拠のない自信がどこから来るのか解らんが、姫様と自称魔王では話にもならないのは間違いないな」
「先程竜騎士を追っ払ったではないか」
「手を振っていただけの怪しい術でか?」
「カッカッカッ、なら今度はちゃんと戦ってやろう。それならば惚れ直すだろう?」
「見直すだけだ。そもそも惚れていない」
「…歓談中失礼します。ラース様、先頭の兵士の姿が目視できました。そろそろ頃合かと」
クロウの報告にそれまで笑っていたラースが表情を引き締める。
「……本当に大丈夫なんだな?」
「くどいぞ。せいぜいオレ様にどんな礼をするか考えておくんだな」
ミリアがラースから離れていく。
彼女は足手まといにならないよう少し離れた場所にある丘から彼と白竜帝国軍の状況を見守る予定だ。
戦況を見極め、最悪の場合、1人こっそりと戻り自国へ報告をする必要があるのだ。
「クロウ」
「は。何でしょうか」
「ミリアに付いていろ。フィリオナに連絡するにせよお前がいた方がいいだろ」
「かしこまりました」
クロウはあっさりと頷くと翼をはためかせミリアの肩に移動する。
2人はそのまま移動開始する。
「…ラースの傍にいなくていいのか?」
「その魔王様の命令です」
ミリアはこの1人と1羽の主従関係がよく理解できていなかった。
主が間違った道を進むなら、それを正すのも従者の務めだと考えているミリアにはクロウの対応余りに淡泊すぎる。
勿論人間にもそういう者がいるのは分かっているが鴉という外見のせいより計りきれないのだ。
「その、心配したりしないのか?」
「ミリア様、ラース様は魔王様ですよ?私が心配するようなことは何一つありません」
魔王だから。
同じ言葉を返す2人にミリアは自分にはわからない繋がりが有るのだと感じた。
それは一般家庭でも使われている光を放つ魔術具の効果時間を減らし、光量を増やしたものだ。
その光の色などで自軍への連絡用として利用される。
ミリアが投げたものは赤色の信号弾。
敵の接近を意味するものだ。
これでひとまずファーブル砦への連絡は問題ないだろう。
「さて、どうしたものか」
馬を失ってしまったのはかなりの痛手だ。
自軍に戻って加勢するにせよ、敵の増援を回避し補給線を絶つにせよ機動力が必要である。
「規模によるが竜騎士まで出て来ている現状で援軍に来られたら勝機は無さそうだな…」
何しろ竜騎士の攻撃力は恐ろしい。
馬を一撃で潰した事からもわかるとおり4~5メートル程の飛竜が重力の加速と共にやってくるのだ。
歩兵部隊の二十分の一の数であっても歩兵部隊側が負けることの方が多いのだ。
砦で戦っている兵士の数はすでに拮抗している。
「せめて補給線を絶つことが出来れば、援軍共々退却する可能性もあるのだが…」
あれだけの数である。
長期戦は想定していないだろう。
「うむ、だがその発見の報告もないな」
そう、もし誰かが見つけたならミリアが行ったように信号が上がるはずなのだ。
今の所それらしいものは見かけていない。
「クロウ、何か思い当たらないか?」
「…補給線ですがひょっとしたら現在構築中かもしれません」
「…詳しく聞かせてくれ」
この中で一番博識なのはクロウである。
知識に加えて先程から上空からの偵察など一番役に立っているのも彼だった。
「先程の竜騎士が援軍の偵察部隊なのは間違いないでしょう。飛竜の
脚でここまで来るということは遅くとも数時間の内に援軍の部隊はここまで到達します」
「……そうだろうな」
いくら何でも速過ぎる。
ミリアは唇を噛み締める。
これでは別部隊の援軍というより部隊を二つにわけて到着するタイミングをズラしただけだ。
そこまで思い至りミリアはハッと顔を上げた。
「そういうことか。これからやってくる援軍が補給部隊なのか」
「そうです。飛竜がいることを考えると戦力としても数えられるのでしょうが確実に補給部隊を兼ねているかと」
「クソ!そういうことか…」
大事な補給物資である。
勿論ある程度護衛が付いているのは当然だがミリアは自分とラースが奇襲を繰り返せばある程度対処できると考えていた。
大部隊の中に組み込まれているとなるとそういった奇襲も難しいかもしれない。
「まぁなんだ。要はまとめて敵を吹き飛ばしてしまえばいいのだろ?」
興味もなく戦略など詳しくもないラースはあっけらかんと告げる。
ミリアは大きなため息で返した。
「そんなことが出来ると思うのか?相手は飛竜を連れている軍隊だぞ?こちらは2人と1羽だ」
ラースはポリポリと頭を掻いた後、珍しく口を結ぶ。そして、
「どうも忘れられているようだが…」
それまでのニヤニヤとした笑みとは異なり今度は獰猛な獣のような笑みを浮かべる。
「オレ様は魔王様だぞ?」
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ラース達が飛竜の斥候に出会ってから約二時間後、2人と1羽の前方にはダザライ王子の援軍である約5,000の兵士が砂煙を上げながら行軍していた。
その上空には数は多くないがちらほらと飛竜が飛んでいるのが見える。
「…本当に大丈夫なのか?」
予想以上の敵の数にミリアは一度は撤退を提案していた。
砦と王都の防壁と二段構えで迎え討てば何とかなるだろうと。
だがこりたの増援がこなかった場合、それでも勝てる保証はなかった。
何せ敵は一万の大軍である。
不安そうなミリアにラースは自信満々に答えた。
「なんだオレ様の実力を信じないのか?無理して着いてこなくてもいいんだぞ?」
「バカを言うな。第一、ここで貴様を見捨てると姫様に合わせる顔がない」
「ミリアは本当に姫様~姫様~だなぁ。そろそろオレ様の偉大さが伝わっているだろうに」
「…その根拠のない自信がどこから来るのか解らんが、姫様と自称魔王では話にもならないのは間違いないな」
「先程竜騎士を追っ払ったではないか」
「手を振っていただけの怪しい術でか?」
「カッカッカッ、なら今度はちゃんと戦ってやろう。それならば惚れ直すだろう?」
「見直すだけだ。そもそも惚れていない」
「…歓談中失礼します。ラース様、先頭の兵士の姿が目視できました。そろそろ頃合かと」
クロウの報告にそれまで笑っていたラースが表情を引き締める。
「……本当に大丈夫なんだな?」
「くどいぞ。せいぜいオレ様にどんな礼をするか考えておくんだな」
ミリアがラースから離れていく。
彼女は足手まといにならないよう少し離れた場所にある丘から彼と白竜帝国軍の状況を見守る予定だ。
戦況を見極め、最悪の場合、1人こっそりと戻り自国へ報告をする必要があるのだ。
「クロウ」
「は。何でしょうか」
「ミリアに付いていろ。フィリオナに連絡するにせよお前がいた方がいいだろ」
「かしこまりました」
クロウはあっさりと頷くと翼をはためかせミリアの肩に移動する。
2人はそのまま移動開始する。
「…ラースの傍にいなくていいのか?」
「その魔王様の命令です」
ミリアはこの1人と1羽の主従関係がよく理解できていなかった。
主が間違った道を進むなら、それを正すのも従者の務めだと考えているミリアにはクロウの対応余りに淡泊すぎる。
勿論人間にもそういう者がいるのは分かっているが鴉という外見のせいより計りきれないのだ。
「その、心配したりしないのか?」
「ミリア様、ラース様は魔王様ですよ?私が心配するようなことは何一つありません」
魔王だから。
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