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第一章 ー魔王と出会い編ー
第23話 ―魔王と帝国軍―
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そこは周囲を薄い樹木と短い下草、無造作に転がる岩に囲まれた広い平原だった。
本日は晴天。
視界は良好。
ファーニア王国領を進む帝国軍も進路上に人がいることは確認している。
こんな平原に1人だけポツンと佇んでいる。
そちらへと行軍していく兵士達はその存在に戸惑いながらも足を止めることはない。
このまま行けばあの人影はこの大軍に踏みつぶされることだろう。
誰だか知らないが死にたくなければ逃げればよいのに。
歩兵達がそう思う中、機動力に優れている飛竜隊の二騎が人影へと近づいた。
「そこの者!そこを退くがよい。我らの邪魔立てするなら容赦はせんぞ!」
二匹の飛竜とその背に乗る二人の騎士は槍を構え人影へと更に接近し、
唐突に地面へと落ちた。
それは本当に突然上空から何かに押し潰されたように垂直に墜落したのだ。
あまりの光景に最前列にいた数人の歩兵の足が止まる。
「あ、止まるなよ!」
「いてっ」
「おい、どうしたんだ!?」
突然の停止に後続は軽い混乱に陥った。
「止まるな!進めぇい!」
各隊長からの号令で軍は再び動き出すと同時に再び飛竜部隊が躍り出る。
4騎の飛竜は今度は最初から槍を構え戦闘態勢だ。
人影に接近……そして人物は妙な姿をしていた。
黒髪自体はそう珍しくない。
だが手足が片方ずつ真っ黒なのである。
鎧を着ている訳でもない。
一見、どこかの町民のようなシンプルな服を着ているが不釣り合いな外套を羽織っている。
では魔術師かと思えば杖も持っていない。
だが明確にわかることはある。
彼の足元、数メートル離れた場所には自分達の大事な飛竜とこれまで共に戦った同僚が地面にめり込むように転がっている。
そう、あれは我々の敵だ。
竜騎士の1人が「アイツはさっきの!」と叫ぶ。
どうやら先程ラースに弄ばれた竜騎士のようだ。
彼等は油断なくラースを四方から迫り、そして彼が右手を突き出したと同時に発生した突風に吹き飛ばされる。
それは先の竜騎士を翻弄した突風とは異なり竜巻のような暴風だ。
四騎の竜騎士は吹き飛ばされ錐揉み状態になりながら行軍している軍列の何れかに墜落した。
その各所で悲鳴と怒号が飛び交い、今度こそ帝国軍全体の足が止まった。
ラースは彼等が止まったことを確認するとニヤリと笑みを浮かべ、トントンと踵で地面を鳴らす。
すると足元の地面が隆起し彼を敵軍全体が見渡せるほどの高所へと持ち上げる。
大地が形を変えるというお伽話のような光景に帝国軍の兵士達は呆けていた。
ラースは大きく息を吸い込み、全員に声が届くよう風と風の精霊に載せる。
「我はラース。魔王ラース。もし貴様等の中に可愛い女の子か美女がいるならこちらへ寄越すがいい。男は大人しく引き下がるか死ぬがいい」
ラースの物言いに一部の兵士が怒り、一部は呆れたが多くは彼の存在を把握仕切れない為にその場で固まっていた。
それは無理もないことだ。
少なくとも公式には大地が形変えるほどの魔術などこの世界には存在していない。
軍に属している以上一度は魔術というものを体験しているが戦争使われる魔術など『強風』や『火球』、『氷の槍』などが精々であり何れも「当たりどころと運が悪けりゃ死ぬ」程度の脅威なのだ。
いくら魔術を駆使しても大地を変えるなど不可能なのだ。
そんな事が出来るとすれば軽く一個大隊の軍事力に匹敵するだろう。
「何をしている!ヤツは敵だ!殺せっ!」
隊長からの怒号が飛ぶ。
そうだ。自分達兵士なのだ。
軍隊における上司の命令は絶対である。
例え相手が得体の知れない自称魔王であるとしても自分達のやることは変わらない。
手にした武器持って相手を倒す。
反撃されれば盾で防ぐ。
これだけだ。
非常にシンプル。
余計な事を考える必要などない。
例え相手が獰猛な笑みとその手に見たこともない光球を掲げていようとも何も気にする必要はないのだ。
「それが答えと言うことでいいな?…では、滅べ」
彼は自分に迫る数千の兵士を前に余裕を崩さない。
いつの間にか右手に現れた光球はキィンと甲高い耳の痛くなるような音を発している。
彼はそれを軍の中央に向けると、突き出した右腕を支えるように左手を添える。
そして、
「『一閃』」
彼の呟きは光球から放たれた光の奔流に呑み込まれた。
ラースの放った魔法は先代魔王から授かった武具生成魔法の1つだ。
光る球のどこが武具なんだ、というツッコミは置いておくとしてこの魔法は直線上の敵や障害物を焼き払う術である。
最も鉄製の剣や鎧を消滅させていることからその焦点温度は優に3,000度を越えているだろう。
この世界には存在しないがこれは一種の光学兵器だ。
光と熱を集束した直径1メートル程度の光の帯はその途中にいた帝国軍を吹き飛ばし、徐々に威力を減衰させながらそれでも帝国軍の陣形の末尾まで辿り着く。
数秒の放出の後、残ったのはそれまで歩んでいた兵士の足先と焦げた肉と鉄の匂い。
そして数百の兵士を吹き飛ばしておきながら不満顔の魔王だった。
「むぅ。思ったより細いのだな…」
威力は申し分ないが、前面にしか放射できないことと放った光の帯が思ったより細かったのがご不満のようだ。
ラースとしては身の丈程の光でド派手にかましておきたかったのだ。
「しかし戦果としては上々か」
撃ち抜いた中央部分はほとんど恐慌状態だった。
上半身や身体のほとんどをラースの魔法に持って行かれた者はまだいい。
一番悲惨だったのは手足や腹部など身体の一部を焼失した者達だった。
それまであった自分の身体が無いのである。
だというのに血は吹き出ない。
その表面が灼かれ炭化などという言葉では生温い状態になっているからだ。
その非現実的な状態に兵士達は訳も分からず悲鳴を上げ、涙を流し、周囲の兵士に助けをを求めた。
その様子を見た周辺の兵士の多くは助ける訳でもなく我先にと後方へと駆け出す。
軍事で多くが成り立っている白竜帝国において敵前逃亡は大罪であるが、たった一撃で自分の仲間が姿を消し、体を削られ、血も流さず悲鳴を上げている姿はそれらを忘れさせるには十分だった。
帝国軍の死者はまだ数百人という程度だが、戦える兵士はそれ以上に削られていた。
このまま放置すれば中央を中心に更に逃亡兵が出るところだったが
「静まれぇい!貴様等はそれでも軍人か!」
耳を塞ぎたくなるほどの大声が平原に響き渡った。
「敵はたった1人だ!あれだけの大魔術なら連続しては来ないぞ。突撃せよ!」
それはこの帝国軍司令官の声だった。
恐慌状態だった兵士達は辛うじて理性を取り戻し、再び陣を組む。
そしてラースへの突撃を敢行するのだった。
一方ラースはというと、突撃に先立ってやってきた飛竜部隊を相手にしていた。
飛竜の数は12騎。
先に倒された竜騎士と合わせてこれが援軍内にいる飛竜部隊の全部である。
それが上空の四方八方から間断無く襲ってくる。
ラースはそれに強風を当てながら身をかわしている。
無論倒せない訳ではない。
その気になれば魔法で圧倒することは簡単だったが、彼はいくつかやってみたいことがあったのだ。
「そうだな、少し遊ぶか」
バサリと大きく外套を翻すと両手にはいつの間にか長さ30センチもない光り輝く曲刀が握られていた。
「『二刃』」
竜騎士から突き出された槍を左手の刃で滑らせ、右手の刃で竜騎士の頭を刈る。
余程の切れ味なのか兜ごと斬ったにも係わらず、ラースの手に大した抵抗は伝わってこなかった。
しかし、槍を受けた左手の刃はパキンといった音を立てて砕けてしまった。
どうやら切れ味は良くても耐久性はないようだ。
「ちっ、脆すぎる。『三槍』!」
次いでラースの手元に現れたのは三叉の槍である。
こちらも白い輝きを放っており、
「伸びろ!」
掛け声と共に唐突に柄が伸びて空中にいた竜騎士の1人を打ち倒す。
これは先代魔王から受け継いだ武具生成魔法だ。
一応クロウと2人で一通り使えるか試したのだが実戦での使用はしたことがなかった。
そのためラースはこの帝国軍に対して各武具の威力を確認しようと思ったのだ。
「『四潰』」
槍が霧のように消滅し、今度は巨大なハンマーが現れる。
見た目の巨大さに対して重さはあまりない。
横凪ぎに振り払うと、更に二騎の飛竜を吹き飛ばす。
打撃の為か吹き飛ばされはしたものの命は落とさなかった。
だが攻撃と墜落の衝撃で飛竜もその背に乗る騎士も複数箇所を骨折しており戦線復帰は不可能だ。
…次々と倒される自軍の精鋭を眺めつつ指揮官は唖然としていた。
「なんなのだ、あの化け物は!」
あんなのがいるとは聞いていない。
今回の進軍はダザライ王子の個人的な要望から始まっているのは確かだが、内通者を利用し一気に王都を制圧するという簡単な任務だったはずだ。
竜騎士を含む王子の動かせる手勢を全て集め、ファーニアという小国を落とすには十分な戦力で望んだはずだ。
だというのに魔王などと名乗った男の出現でこの部隊が崩れようとしている。
「そんなバカな事があるか!こちらは五千にも及ぶ大隊だぞ!?」
司令官は奥歯を噛み締める。
「全部隊!やつの首を取れ!絶対に逃がすなよ!」
「「おぉっ!」」
地上の歩兵部隊がラースに接触する頃、ちょうど最後の竜騎士が彼に打ち倒されていた。
本日は晴天。
視界は良好。
ファーニア王国領を進む帝国軍も進路上に人がいることは確認している。
こんな平原に1人だけポツンと佇んでいる。
そちらへと行軍していく兵士達はその存在に戸惑いながらも足を止めることはない。
このまま行けばあの人影はこの大軍に踏みつぶされることだろう。
誰だか知らないが死にたくなければ逃げればよいのに。
歩兵達がそう思う中、機動力に優れている飛竜隊の二騎が人影へと近づいた。
「そこの者!そこを退くがよい。我らの邪魔立てするなら容赦はせんぞ!」
二匹の飛竜とその背に乗る二人の騎士は槍を構え人影へと更に接近し、
唐突に地面へと落ちた。
それは本当に突然上空から何かに押し潰されたように垂直に墜落したのだ。
あまりの光景に最前列にいた数人の歩兵の足が止まる。
「あ、止まるなよ!」
「いてっ」
「おい、どうしたんだ!?」
突然の停止に後続は軽い混乱に陥った。
「止まるな!進めぇい!」
各隊長からの号令で軍は再び動き出すと同時に再び飛竜部隊が躍り出る。
4騎の飛竜は今度は最初から槍を構え戦闘態勢だ。
人影に接近……そして人物は妙な姿をしていた。
黒髪自体はそう珍しくない。
だが手足が片方ずつ真っ黒なのである。
鎧を着ている訳でもない。
一見、どこかの町民のようなシンプルな服を着ているが不釣り合いな外套を羽織っている。
では魔術師かと思えば杖も持っていない。
だが明確にわかることはある。
彼の足元、数メートル離れた場所には自分達の大事な飛竜とこれまで共に戦った同僚が地面にめり込むように転がっている。
そう、あれは我々の敵だ。
竜騎士の1人が「アイツはさっきの!」と叫ぶ。
どうやら先程ラースに弄ばれた竜騎士のようだ。
彼等は油断なくラースを四方から迫り、そして彼が右手を突き出したと同時に発生した突風に吹き飛ばされる。
それは先の竜騎士を翻弄した突風とは異なり竜巻のような暴風だ。
四騎の竜騎士は吹き飛ばされ錐揉み状態になりながら行軍している軍列の何れかに墜落した。
その各所で悲鳴と怒号が飛び交い、今度こそ帝国軍全体の足が止まった。
ラースは彼等が止まったことを確認するとニヤリと笑みを浮かべ、トントンと踵で地面を鳴らす。
すると足元の地面が隆起し彼を敵軍全体が見渡せるほどの高所へと持ち上げる。
大地が形を変えるというお伽話のような光景に帝国軍の兵士達は呆けていた。
ラースは大きく息を吸い込み、全員に声が届くよう風と風の精霊に載せる。
「我はラース。魔王ラース。もし貴様等の中に可愛い女の子か美女がいるならこちらへ寄越すがいい。男は大人しく引き下がるか死ぬがいい」
ラースの物言いに一部の兵士が怒り、一部は呆れたが多くは彼の存在を把握仕切れない為にその場で固まっていた。
それは無理もないことだ。
少なくとも公式には大地が形変えるほどの魔術などこの世界には存在していない。
軍に属している以上一度は魔術というものを体験しているが戦争使われる魔術など『強風』や『火球』、『氷の槍』などが精々であり何れも「当たりどころと運が悪けりゃ死ぬ」程度の脅威なのだ。
いくら魔術を駆使しても大地を変えるなど不可能なのだ。
そんな事が出来るとすれば軽く一個大隊の軍事力に匹敵するだろう。
「何をしている!ヤツは敵だ!殺せっ!」
隊長からの怒号が飛ぶ。
そうだ。自分達兵士なのだ。
軍隊における上司の命令は絶対である。
例え相手が得体の知れない自称魔王であるとしても自分達のやることは変わらない。
手にした武器持って相手を倒す。
反撃されれば盾で防ぐ。
これだけだ。
非常にシンプル。
余計な事を考える必要などない。
例え相手が獰猛な笑みとその手に見たこともない光球を掲げていようとも何も気にする必要はないのだ。
「それが答えと言うことでいいな?…では、滅べ」
彼は自分に迫る数千の兵士を前に余裕を崩さない。
いつの間にか右手に現れた光球はキィンと甲高い耳の痛くなるような音を発している。
彼はそれを軍の中央に向けると、突き出した右腕を支えるように左手を添える。
そして、
「『一閃』」
彼の呟きは光球から放たれた光の奔流に呑み込まれた。
ラースの放った魔法は先代魔王から授かった武具生成魔法の1つだ。
光る球のどこが武具なんだ、というツッコミは置いておくとしてこの魔法は直線上の敵や障害物を焼き払う術である。
最も鉄製の剣や鎧を消滅させていることからその焦点温度は優に3,000度を越えているだろう。
この世界には存在しないがこれは一種の光学兵器だ。
光と熱を集束した直径1メートル程度の光の帯はその途中にいた帝国軍を吹き飛ばし、徐々に威力を減衰させながらそれでも帝国軍の陣形の末尾まで辿り着く。
数秒の放出の後、残ったのはそれまで歩んでいた兵士の足先と焦げた肉と鉄の匂い。
そして数百の兵士を吹き飛ばしておきながら不満顔の魔王だった。
「むぅ。思ったより細いのだな…」
威力は申し分ないが、前面にしか放射できないことと放った光の帯が思ったより細かったのがご不満のようだ。
ラースとしては身の丈程の光でド派手にかましておきたかったのだ。
「しかし戦果としては上々か」
撃ち抜いた中央部分はほとんど恐慌状態だった。
上半身や身体のほとんどをラースの魔法に持って行かれた者はまだいい。
一番悲惨だったのは手足や腹部など身体の一部を焼失した者達だった。
それまであった自分の身体が無いのである。
だというのに血は吹き出ない。
その表面が灼かれ炭化などという言葉では生温い状態になっているからだ。
その非現実的な状態に兵士達は訳も分からず悲鳴を上げ、涙を流し、周囲の兵士に助けをを求めた。
その様子を見た周辺の兵士の多くは助ける訳でもなく我先にと後方へと駆け出す。
軍事で多くが成り立っている白竜帝国において敵前逃亡は大罪であるが、たった一撃で自分の仲間が姿を消し、体を削られ、血も流さず悲鳴を上げている姿はそれらを忘れさせるには十分だった。
帝国軍の死者はまだ数百人という程度だが、戦える兵士はそれ以上に削られていた。
このまま放置すれば中央を中心に更に逃亡兵が出るところだったが
「静まれぇい!貴様等はそれでも軍人か!」
耳を塞ぎたくなるほどの大声が平原に響き渡った。
「敵はたった1人だ!あれだけの大魔術なら連続しては来ないぞ。突撃せよ!」
それはこの帝国軍司令官の声だった。
恐慌状態だった兵士達は辛うじて理性を取り戻し、再び陣を組む。
そしてラースへの突撃を敢行するのだった。
一方ラースはというと、突撃に先立ってやってきた飛竜部隊を相手にしていた。
飛竜の数は12騎。
先に倒された竜騎士と合わせてこれが援軍内にいる飛竜部隊の全部である。
それが上空の四方八方から間断無く襲ってくる。
ラースはそれに強風を当てながら身をかわしている。
無論倒せない訳ではない。
その気になれば魔法で圧倒することは簡単だったが、彼はいくつかやってみたいことがあったのだ。
「そうだな、少し遊ぶか」
バサリと大きく外套を翻すと両手にはいつの間にか長さ30センチもない光り輝く曲刀が握られていた。
「『二刃』」
竜騎士から突き出された槍を左手の刃で滑らせ、右手の刃で竜騎士の頭を刈る。
余程の切れ味なのか兜ごと斬ったにも係わらず、ラースの手に大した抵抗は伝わってこなかった。
しかし、槍を受けた左手の刃はパキンといった音を立てて砕けてしまった。
どうやら切れ味は良くても耐久性はないようだ。
「ちっ、脆すぎる。『三槍』!」
次いでラースの手元に現れたのは三叉の槍である。
こちらも白い輝きを放っており、
「伸びろ!」
掛け声と共に唐突に柄が伸びて空中にいた竜騎士の1人を打ち倒す。
これは先代魔王から受け継いだ武具生成魔法だ。
一応クロウと2人で一通り使えるか試したのだが実戦での使用はしたことがなかった。
そのためラースはこの帝国軍に対して各武具の威力を確認しようと思ったのだ。
「『四潰』」
槍が霧のように消滅し、今度は巨大なハンマーが現れる。
見た目の巨大さに対して重さはあまりない。
横凪ぎに振り払うと、更に二騎の飛竜を吹き飛ばす。
打撃の為か吹き飛ばされはしたものの命は落とさなかった。
だが攻撃と墜落の衝撃で飛竜もその背に乗る騎士も複数箇所を骨折しており戦線復帰は不可能だ。
…次々と倒される自軍の精鋭を眺めつつ指揮官は唖然としていた。
「なんなのだ、あの化け物は!」
あんなのがいるとは聞いていない。
今回の進軍はダザライ王子の個人的な要望から始まっているのは確かだが、内通者を利用し一気に王都を制圧するという簡単な任務だったはずだ。
竜騎士を含む王子の動かせる手勢を全て集め、ファーニアという小国を落とすには十分な戦力で望んだはずだ。
だというのに魔王などと名乗った男の出現でこの部隊が崩れようとしている。
「そんなバカな事があるか!こちらは五千にも及ぶ大隊だぞ!?」
司令官は奥歯を噛み締める。
「全部隊!やつの首を取れ!絶対に逃がすなよ!」
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