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第一章 ー魔王と出会い編ー
第31話 -ミリアと報酬-
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ささやかな宴の後、ラースはフィリオナの部屋の前に立っていた。
会食の終わりに「報酬の件でお話があります。」とフィリオナに呼び出されていたのだ。
「…なかなか長い道のりだった…」
報酬の件、そして寝室への誘い。
時刻は夜。
気遣いなのかこれまでフィリオナの部屋で見張っていた見張りの姿も今日はない。
ラースはようやくこの時が訪れたのだと確信していた。
侵入を繰り返し、邪魔者を追い払い、周囲に気配りまでしてここまできたのだ。
実に感慨深い。
これが魔王としての最初であることは悪くない選択だった。
「どうだ、クロウ。オレ様の魔王っぷりは」
『ラース様、まだ何一つ成し遂げておりません。評価を下すには些か早計かと』
「おぉ、そうだったな。…では、いざ」
フィリオナの部屋の扉に手を掛けたその時…
「ラース…?」
「…ミリアか」
鎧を外し、ラフなパンツスタイルになったミリアが近づいてきた。
手には小さな燭台を持っている。
ショートの髪は変わらないが、鎧姿しか見ていなかったラースにはなかなか新鮮な服装だった。
何より強調されるのは普段鎧に隠されている胸、である。
「こんな時間に姫様のところに何のようだ?」
「貴様こそ珍しい格好でどうしたのだ?」
「私は姫様に呼ばれて………。別にいつも鎧姿でいるわけじゃないぞ?」
「うむ、太ももが見えている鎧もいいが、胸が強調されるそっちもいいな」
ミリアは思わず自分の胸元を隠す。
その顔には嫌悪の表情がハッキリと見て取れる。
「しかしこんな急な呼出とは…何かあっただろうか……」
「…………」
ラースは考える。
報酬の話。
フィリオナの呼出。
フィリオナからミリアの呼出。
これは……つまり………3人で、ということか!
「グフ、グフフフ…」
「いきなり締まりのない顔で笑い出すな。…正直怖いぞ」
「まぁとにかく中に入るか」
ラースのヤらしい笑みは扉を開けて中にいるフィリオナと…………ホーミンの姿を見てすぐに消えた。
「…ホーミン先生?」
「おい、なぜこのオッサンがここにいる」
どうやら期待していた展開ではなさそうだと悟ったラースは反動から一気に不機嫌になる。
その様子を見てとったフィリオナは神妙な表情で一歩前へとでた。
「…私から説明致します」
フィリオナの説明は約束した報酬が払えないという話だ。
少なくとも今は。
ルザードの毒は少しずつ回復しているものの抜けきってはおらず、戦後の残務処理で無理をしたためか体調は以前より悪化していた。
それでも今日まではと頑張っていたがホーミンによるドクターストップがかかったのだ。
「…申し訳ありません」
深々と頭を下げるフィリオナをラースは無表情で見下ろしていた。
「…で、どうする気だ?このまま踏み倒す気か?」
「決してそのような事は致しません。ただ、もう少々お時間を頂けないかと…」
「オレ様に抱かれる意思はあるんだな?」
「はい!」
即答である。
力強く返事をしたフィリオナの瞳は真っ直ぐにラースを見ていた。
これにはラースも破顔する。
「そうか。なら待とう。オレ様は器の大きな男だからな」
盛大に笑うラースにクロウが「流石です。ラース様」と合いの手を入れる。
「とはいえ、手付け金は頂くからな。そのつもりでいろ」
「…手付け金…ですか?」
「そうだ。要は激しい運動をしなければいいんだろ?」
「え、えぇそうですが…」
いきなり話を振られたホーミンが慌てて頷く。
ラースは満足そうに頷き返すと、
「ならキスやオサワリは問題ないわけだ!」
「それは…そうですな」
「……キス……」
ラースとの口付けを思い出したのか、フィリオナの頬が朱くなる。
「………私の心臓保ちますでしょうか…?」
「ガッハッハッ、医者の御墨付きだ。大丈夫に決まっているだろう」
フィリオナの羞恥や緊張、『恋』の鼓動の高鳴りなどまるで気にしていないラースにとってはそうだろう。
フィリオナは改めて早々に解毒剤を入手する決意を固めた。
「…あの、姫様」
先程から所在なさげに立っていたミリアが口を開いた。
「あ、そうでした。ミリアにもお願いがあるのでした」
「はっ、何なりと。姫様の守護騎士として必ずや御用命に答えて見せます!」
すぐさま跪き、フィリオナに礼を尽くす。
守護騎士という大役に就任した彼女はやる気に溢れていた。
「では、初めての命令ですね。ミリアは今後ラース様と行動を共にして下さい」
「…は?」
「ラース様と寝食を共にしてください。彼の身の回りの世話と何かあった場合の連絡係としてお願いします」
「…あの、どういうことでしょうか…?姫様の世話ではなく…?」
「はい、そうです。…ラース様」
「なんだ?」
「勝手ながら王都にお屋敷を用意させていただきました。もし宜しければ王都滞在の際にはご利用ください」
「うむ、そうさせてもらおう」
「ということなのでミリア、屋敷の場所は後で教えますのでよろしくお願いしますね」
笑顔で告げるフィリオナにミリアは膝をつき崩れ落ちる。
「な、なぜこんな事になったのだ…」
答えるものは誰もいない。
何故なら彼女に非は無いのだから。
だが拒否する権利も彼女には無い。
「あ、安心してください。給金とラース様の世話にかかったお金はちゃんと支給します。ミリアも一緒に美味しいもの食べて下さいね」
「そこじゃないのです!姫様ぁああああーー」
彼女の慟哭が誰かに届く日は……来るのだろうか?
会食の終わりに「報酬の件でお話があります。」とフィリオナに呼び出されていたのだ。
「…なかなか長い道のりだった…」
報酬の件、そして寝室への誘い。
時刻は夜。
気遣いなのかこれまでフィリオナの部屋で見張っていた見張りの姿も今日はない。
ラースはようやくこの時が訪れたのだと確信していた。
侵入を繰り返し、邪魔者を追い払い、周囲に気配りまでしてここまできたのだ。
実に感慨深い。
これが魔王としての最初であることは悪くない選択だった。
「どうだ、クロウ。オレ様の魔王っぷりは」
『ラース様、まだ何一つ成し遂げておりません。評価を下すには些か早計かと』
「おぉ、そうだったな。…では、いざ」
フィリオナの部屋の扉に手を掛けたその時…
「ラース…?」
「…ミリアか」
鎧を外し、ラフなパンツスタイルになったミリアが近づいてきた。
手には小さな燭台を持っている。
ショートの髪は変わらないが、鎧姿しか見ていなかったラースにはなかなか新鮮な服装だった。
何より強調されるのは普段鎧に隠されている胸、である。
「こんな時間に姫様のところに何のようだ?」
「貴様こそ珍しい格好でどうしたのだ?」
「私は姫様に呼ばれて………。別にいつも鎧姿でいるわけじゃないぞ?」
「うむ、太ももが見えている鎧もいいが、胸が強調されるそっちもいいな」
ミリアは思わず自分の胸元を隠す。
その顔には嫌悪の表情がハッキリと見て取れる。
「しかしこんな急な呼出とは…何かあっただろうか……」
「…………」
ラースは考える。
報酬の話。
フィリオナの呼出。
フィリオナからミリアの呼出。
これは……つまり………3人で、ということか!
「グフ、グフフフ…」
「いきなり締まりのない顔で笑い出すな。…正直怖いぞ」
「まぁとにかく中に入るか」
ラースのヤらしい笑みは扉を開けて中にいるフィリオナと…………ホーミンの姿を見てすぐに消えた。
「…ホーミン先生?」
「おい、なぜこのオッサンがここにいる」
どうやら期待していた展開ではなさそうだと悟ったラースは反動から一気に不機嫌になる。
その様子を見てとったフィリオナは神妙な表情で一歩前へとでた。
「…私から説明致します」
フィリオナの説明は約束した報酬が払えないという話だ。
少なくとも今は。
ルザードの毒は少しずつ回復しているものの抜けきってはおらず、戦後の残務処理で無理をしたためか体調は以前より悪化していた。
それでも今日まではと頑張っていたがホーミンによるドクターストップがかかったのだ。
「…申し訳ありません」
深々と頭を下げるフィリオナをラースは無表情で見下ろしていた。
「…で、どうする気だ?このまま踏み倒す気か?」
「決してそのような事は致しません。ただ、もう少々お時間を頂けないかと…」
「オレ様に抱かれる意思はあるんだな?」
「はい!」
即答である。
力強く返事をしたフィリオナの瞳は真っ直ぐにラースを見ていた。
これにはラースも破顔する。
「そうか。なら待とう。オレ様は器の大きな男だからな」
盛大に笑うラースにクロウが「流石です。ラース様」と合いの手を入れる。
「とはいえ、手付け金は頂くからな。そのつもりでいろ」
「…手付け金…ですか?」
「そうだ。要は激しい運動をしなければいいんだろ?」
「え、えぇそうですが…」
いきなり話を振られたホーミンが慌てて頷く。
ラースは満足そうに頷き返すと、
「ならキスやオサワリは問題ないわけだ!」
「それは…そうですな」
「……キス……」
ラースとの口付けを思い出したのか、フィリオナの頬が朱くなる。
「………私の心臓保ちますでしょうか…?」
「ガッハッハッ、医者の御墨付きだ。大丈夫に決まっているだろう」
フィリオナの羞恥や緊張、『恋』の鼓動の高鳴りなどまるで気にしていないラースにとってはそうだろう。
フィリオナは改めて早々に解毒剤を入手する決意を固めた。
「…あの、姫様」
先程から所在なさげに立っていたミリアが口を開いた。
「あ、そうでした。ミリアにもお願いがあるのでした」
「はっ、何なりと。姫様の守護騎士として必ずや御用命に答えて見せます!」
すぐさま跪き、フィリオナに礼を尽くす。
守護騎士という大役に就任した彼女はやる気に溢れていた。
「では、初めての命令ですね。ミリアは今後ラース様と行動を共にして下さい」
「…は?」
「ラース様と寝食を共にしてください。彼の身の回りの世話と何かあった場合の連絡係としてお願いします」
「…あの、どういうことでしょうか…?姫様の世話ではなく…?」
「はい、そうです。…ラース様」
「なんだ?」
「勝手ながら王都にお屋敷を用意させていただきました。もし宜しければ王都滞在の際にはご利用ください」
「うむ、そうさせてもらおう」
「ということなのでミリア、屋敷の場所は後で教えますのでよろしくお願いしますね」
笑顔で告げるフィリオナにミリアは膝をつき崩れ落ちる。
「な、なぜこんな事になったのだ…」
答えるものは誰もいない。
何故なら彼女に非は無いのだから。
だが拒否する権利も彼女には無い。
「あ、安心してください。給金とラース様の世話にかかったお金はちゃんと支給します。ミリアも一緒に美味しいもの食べて下さいね」
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