ねこのフレンズ

楠乃小玉

文字の大きさ
62 / 113
第二章

七話 情けは人のためならず【改訂版】

しおりを挟む
 シアンちゃんとサバンちゃんは、やっとの思いで大阪南港にたどり着き、
 愛媛県東予港に向かうミカン汽船に乗り込むことにした。
  「ちょっと!ちゃんと切符も買ったのに船に乗れないってどういう事よ!
 ドカンちゃんの安全を見守ることを条件にお金はたんまり木戸健晴から
 貰ってきてるのよ!」
 
 「あの、ちょっと待ってください、子供だけで乗っちゃけないよ、
 お父さん、お母さんはどうしたの?君たちいくつ?」
 若い船員がシアンちゃんたちを止めた。
 「二千六十五才よ(適当)」
 「一千八百二十一才だよ!(もっと適当)」
 「あーはいはい、帰りましょうね」
 「切符持ってるでしょうが!こっちはお客様よ、お客様は地霊様って
 学校で習わなかったの!?」

 その時である。
 「おい、何してる!そこに置きっ放しにしているお客さんの自転車、
 早く中に入れんか」
 「いや、この子たち、子供だけで乗船しようとしてるんです」
 「は?誰も居ないじゃないか!早くお客さんの自転車を船に入れろ!
 自転車だけ港のおいてけぼりにしたら、あとでお客さんに怒られるぞ」
 「でも……」
 「でももへったくれもない!早くしろ!!」
 「はい……」

 「まあ、かわいそう、ちゃんと真面目に職務を務めようとしただけなのに、
 あんな事いわなくてもいいのにねえ」
 シアンちゃんが言った。
 「私達が原因だよ」
 サバンちゃんが突っ込みを入れる。

 「そういう心がけはいい心がけだはわ」
 「何が?」
 「自分たちが悪いことをしていると自覚しているということよ!
 自分たちも罪を負っているという自覚があるからこそ、
 自分は絶対的な正義だと思って他人を冷酷に断罪したり
 できなくなるのよ!そして人に優しくなれるの!」
  
 「なんか、うまいこと言ってるけど、
 私達、あの船員さんに迷惑かけてるよね」

 「それでもいいの。こうやって、私達がこの船に乗ることによって
 この船の従業員、お客、全員が幸せな加護を受けるのよ」
 「まあ、それはそうなんだけどね~」

 緩い調子でサバンちゃんが答えた。

 シアンちゃんとサバンちゃんは、東予港で降りると、
 そこから今治を目指した。

 今治といったら名城、今治城。
 早速、シアンちゃんとサバンちゃんは行った。

 「うわ~すごいよ、見て!海の魚がいる!あれ、グレだよ!すごい!」
 「ほんとうね、ここの城の堀は海の水を引き入れているのね。すごいわ
 じゃあ、お城の中も見てみましょ」

 「え~お城って人が戦った場所でしょ?幽霊とか出ないかな~」
 「何言ってるの、私達地霊よ、地霊が霊を恐れてどうするのよ」
 「それもそうだね~」

 シアンちゃんとサバンちゃんはお城に入っていく。
 誰もいない。薄暗い。ちょっと薄気味悪い雰囲気だ。

 と、ガラスのケースに入った展示物を見ながら歩いていたサバンちゃんが
 目を見張った。
 
 「うがっ!」
 
 「何変な声だしてるのよ、あがっ!」
 
 目の前に幽霊の掛け軸があった。
 
 「ぎゃー!おばけー!」
 シアンちゃんが逃げ出す。
 おいてかないでよー!」
 サバンちゃんも一緒に逃げ出した。

 「ああ、怖かったわね、これはちょっと気分を晴らす意味でも
 大きな神社にお参りに行かなきゃいけないわね」

 「この辺りにそんな神社あるの?」

 「あたりきしゃりきのこんこんちき よ!
 この近くにはね、日本総鎮守があるのよ!」

 「なに、それすごい!」

 「ここの近所の大三島にバスで行きましょ!」
 「え?島なのにバスで行けるの?」
 「そうよ、島に橋がかかっているのよ。橋をわたって
 広島までも行けるのよ」

 「すごいね~」
 「すごいわよ~」

 二人は前のトラブルを学習して、今治に有料駐輪場に自転車をおいて、
 大三島にバスでお参りにおくお年寄りの連れのふりをして大三島まで行った。
 お金は自分たちで払った。
 

 シアンちゃんとサバンちゃんは、そこの大きな神社を見た後、そこに生えている
 巨大な楠を見物したあと、刀剣博物館を見物した。
 そこに山中鹿之助の刀が展示してあったが、それがもうすごく大きい。
 しかも刃こぼれしていた。実際に戦場で使った刀だ。

 それから、ひときわ小さな鎧があった。
 大祝鶴姫オオホオリツルヒメという女武将の鎧だった。
 「かっこいいね~」
 「そうね~」

 シアンちゃんとサバンちゃんは目を輝かせてそれら刀剣を見物した。

 そして、満足して今治に帰るバスに乗り込む参拝客を物色していた。
 「あらまあ、可愛い子たちだねえ」
 おばあさんが声をかけてきた。
 「あら、私達に気づくとは殊勝な人ね」
 
 「そりゃ、かわいいものさ、あんたらに今治名物のタオルをあげるね」
 そう言っておばあさんがシアンちゃんとサバンちゃんに小さな手ふきタオルをくれた。
 「ありがとうございます。あばさま」
 「ありがとう、バアチャン」
 二人は礼をいった。
 「ここまでどうやって来たんだい」
 おばあちゃんが聞いてきたので、シアンちゃんはこれまでの経緯を話した。
 「そうかい、そうかい、それじゃ、帰りは私が一緒についていってあげるね」
 そのおばあさんはシアンちゃんが自分を地霊だと主張するのに、一切疑問を持たずに
 話を聞いてくれた。
 その事にシアンちゃんは感動したようだった。

 「これは、重ね重ねありがとうございます」
 シアンちゃんは深々と頭をさげた。
 「わ~い!気前のいいバアチャンだな!」
 サバンちゃんが喜んだ。

 「おばさまと言いなさい、失礼でしょ」
 シアンちゃんが叱った。
 「は~い」
 サバンちゃんが言った。
 
 そして、シアンちゃんとサバンちゃんにがま口の財布を買ってくれて、
 その中にそれぞれ、千円ずつ入れてくれた。
 「いや、こんなお金いただけませんわ」
 「ほんの気持ちだから、この私を喜ばすと思って受け取っておくれな」
 おばあさんはニコニコ笑いながら言った。

 「ほんとうに、本当にありがとうございます。
 なんとお礼を言っていいやら」
 シアンちゃんは涙ぐんだ。

 「いえいえ、いいんですよ、神様にお参りに来て人助けができて
 こんな嬉しいことはありませんよ」

 おばあさんは微笑みながらそう言い、行ってしまった。

 「ほんとうに、ほんとうに愛媛の人達っていい人達ね」
 目を真っ赤に泣きはらしながらシアンちゃんがつぶやく。

 「本当に愛媛の連中はちょろいね。」

 「ちょろいじゃないでしょ!善意でしょ!人の善意でしょ!
 感謝なさい!!!」
 「はーい」
 サバンちゃんは返事をした。


しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...