ねこのフレンズ

楠乃小玉

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三章

八話 私を疑え

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 「人間って醜いと思う」
 高森に向かう道すがらドカンちゃんんがつぶやいた。
 「本当にそう思うかい?」
 チカンちゃんが答えた。
 「え?」
 ドカンちゃんは少し驚いた。
 今までチカンちゃんはずっとドカンちゃんの言う事を肯定しつづけてきたからだ。
 「違うの?」
 「それは自分の頭で考えなきゃ」

 「そうだね」
 ドカンちゃんはわざと、チカンちゃんに、いつもより砕けた言葉使いで接した。
 丁寧語を使って、ちょっと距離が開くのが怖かった。

 「都合のいい時だけペットを飼って、要らなくなったら殺す人間って悪だと思う」
 「それって、保健所が悪だと思ってる?」

 「うーん、ペットを殺すのは悪いことだと思う」

 「それは、ペットに飽きた飼い主が大人になったペットを持ち込むのが悪いのであって、
  保健所さんはその後始末をさせられているだけだよ。
  中にはどうしても仕方ない理由がある飼い主さんだっている。」
 
 「……よく分からないや」
 
 「じゃあ、話題を変えよう。お花ってあるじゃん。
 なんで、あんなに綺麗なお花を咲かせるか知ってる?」

 「みんなに喜んでもらうため?」

 「人間に喜んでもらうため」

 「え?でも、人間は動物を殺したり、自然を破壊する悪い存在でしょ」

 「それがどうして悪いと言い切れる?」

 「言ってることの意味がわからないよ」

 「お花はね、美しい花で人間を魅了して森に人を引き入れようとしているんだ」

 「森に人を引き入れて、迷わせて殺しちゃうため?」

 「違うね。森に人を引き入れて、木を切り倒してもらうため」

 「え?そんなの自然破壊じゃない」

 「それをお花は望んでいるのさ。小さいお花は大きい木々が生い茂る森じゃ
 生きていけないんだ。だから、人間を美しいお花で魅了して森に引き入れて、
 もっとお花畑を作りたいと思わせて、木を切り倒させるんだ」

 「え?でも中学校の時自然保護の映画見せられて、森の妖精が、森の木を切る
 悪い人間が許せないって言ってたよ」

 「そんなのウソだよ。森の木は怒ってるだろうけと、背丈の低い弱い草花は
 むしろ喜んでる」

 「でも、先生も人間は自然破壊をする悪い存在だって言ってた」

 「ははは、自然破壊って何?それなら蟻塚を作ってるアリも自然破壊だし、
 ビーバーダムを造ってるビーバーも自然破壊だよ。人間が木を切り倒して
 ビルを建てるのは蟻塚を作ってるアリとかわらないんだよ、
 人間だけを特別だと思ってる人間こそ傲慢だね」

 「そんなこと、考えたこともなかった」

 「先生の言うこと、テレビで言ってること、インターネットで偉い大学の先生が言ってること、
 それが全部正しいとはかぎらないんだよ」

 「じゃあ、何を信じたらいいんの?」
 「信じちゃだめ」
 「え?」

 「信じちゃダメなんだ。自分の頭で考えて、少しでもおかしいと思ったり、
 納得しなかったら、自分で調べなきゃ。大事なのは複数のルートで調べること。
 一つの情報源からだけ話を聞いているから騙されるんだ。一人じゃなく、
 色々な人の言っている情報を集めて、それを見比べて、自分の頭で考えて、
 正しいものを見つけ出す」

 「あれ?でも先生はインターネットに書いてあることは全部ウソだから
 インターネットなんて見ちゃダメだって言ってた」

 「それは、先生が自分が所属している組織の言っていることだけ信じて、
 自分の頭で考えず洗脳されちゃってるからだよ」

 「先生って悪だったの?」
  
 「悪じゃない。インターネットだって本だって、テレビだってラジオだって、
 本当の事もあるしウソの事もある。だからこそ、インターネットだけ、
 テレビだけ、本だけ、先生の言ってることだけ、を信じる人間は
 洗脳されて奴隷にされて破滅するんだよ。
 複数のルートから情報を得て、それを見比べて、自分の頭で正しい事を
 見つけ出して、判断する。そうしないと、人は騙され、利用され、滅びる。
 いままで、いつの時代でも、ずっとそうした愚かな人間をみつづけてきたよ」

 「コホン」
 
 ドカンちゃんは咳払いをした。

 そして、にんまり、笑う。

 「まず、私を疑え」

 「なんだよ、もう」

 ドカンちゃんは苦笑した。

 高森の街につくと、ドカンちゃんは右手をタオルやシャツでグルグル巻きにして
 薬局に行き、大量の包帯を買い込んだ。

 タオルとシャツを取ると、右手に包帯をグルグル巻きにした。

 その右手でそっとチカンちゃんの頭をなでてみる。

 「痛い?」
 「大丈夫」

 「あーよかった!」

 ドカンちゃんはチカンちゃんを抱きしめた。
 
 「よかったねー」
 チカンちゃんもドカンちゃんを抱きしめる。

 でも、ドカンちゃんは少しうかない顔をしている。
 「どうしたの?」
 チカンちゃんがドカンちゃんの顔をのぞき込む。

 「ダッコはできるけど、もう友情パンチは使えないね」

 「あのさ、子供の頃、自転車に乗り始めた時って、
 自転車に補助輪付けてたじゃん。おぼえてる?」

 「あ、そういえばそういうのあったね、最近見かけないけど」

 「あの補助輪、最初の頃って無かったら絶対困る!って思ってたけど、
 そのうち、運転が上手になってきたら、曲がるのが綺麗にまがれないから
 邪魔だって思わなかった?」

 「あーボクの場合は、いつまでも補助輪に頼ってて、お父さんに無理矢理
 一つはずされて、しばらくしたら慣れて普通に乗れたかな」

 「そうでしょ~、だから友情パンチがなくても、自分の力だけで戦えるようになったら
 自分一人で戦わないといけないんだよ。そうしないと、一人でいるときに
 狙われちゃうじゃない」

 「それはそうだけど……、あ!でもチカンちゃんはこれからもず~っとボクと
 一緒に居てね!」

 「それはまかしとけい!」
 チカンちゃんは拳で自分の胸をドンと叩いた。

 「うふふ」
 「えへへ」

 「あ~!ドカンちゃんとチカンちゃんがアッチチだ~」

 後ろから二人乗り自転車に乗っているサバンちゃんが大声でいった。
 
 「シッ、黙ってなさい。人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて入院三ヶ月なのよ!」
 シアンちゃんが言った。

 「あ、いや、恋路とかじゃないよ~」

 ドカンちゃんは顔を真っ赤にした。


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