ねこのフレンズ

楠乃小玉

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三章

七話 シアンちゃんの鼻歌

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 「くたばりな!」
 トラコはドカンちゃんの頭上に鋭い爪を振り下ろす。
 「バキン!」
 大きな音がして火花が散る。

 「ここで死ぬワケにはいかない!またチカンちゃんと友情パンチが使えるまでは、
 またこの右手でチカンちゃんの頭をナデナデできるようになるまでは!」

 ドカンちゃんの右手から鋭い鉄の爪が伸びてトラコの爪を受け止める。

 「魂の武器はその心に依存するんだ。木は愛、火は礼、土は真実、金は正義、水は知恵。
 ドカンちゃんのその正義の心が、この鋭い爪を作り出したんだ!」

 チカンちゃんが叫んだ。

 ガチン!
 ガチン!
 ガチン!
 何度も、何度もトラコとドカンちゃんは対等に爪を打ち合わせる。

 「何故だ!どうして卑怯で汚い人間ごときがこの私の爪と対等に渡り合えるんだ!」

 「僕たちの大切な友達!猫ちゃんたちを守るためだ!お前こそ、
 人間をこんな場所に誘い込んで殺す不正義をしながら、
 何故正義の爪を使えるんだ!」

 バキン! 
 ガキン!

 「それは違う!私は人間を殺さない!」

 ガチン!

 「ボクを殺そうとしてるじゃないか!」

 「これは正当防衛だ。それ以外はいつも人間が人間を殺しているんだ!」

 「どういう事だ!」

 ゴキン!
 ガキン!

 「私らは人間を猫に変える。そして、こっそり、保健所に収容されている猫ちゃんたちと
 猫に変えられた人間をすり替えるんだ。すり替えた猫ちゃんはここでみんなと一緒に
 幸せに暮らす。
 すり替えられた人間は、人間が窒素を使って殺す。

 殺して捨てた猫になった死体をこの山に持ち帰って供養すると、
 そいつは、また元の人間の姿になる。
 それを、人間どもは私たちが殺したといっているんだ!
 殺したのは人間だ!私たちじゃない!」

 ガキーン!

 ドカンちゃんの爪の一本が折れて吹き飛んだ。

 「くっ!」
 ドカンちゃんが顔をしかめる。

 「それ!くたばれ!殺戮者の人間どもめ!!!」

 その時である。

 「くるしいよ~、死にたくないよ~、怖いよ~さびしいよ~」

 蒸発した化け猫たちが元に戻ろうとしている。しかし、
 水分が足りずに元に戻れずに苦しんでいる。

 「おお、お前達、今私の水分を分け与えてやるからな」

 トラコは自分の手から水を放出し、化け猫たちを元にもどしはじめる。

 「今だ!」
 サバンちゃんがトラコの前に飛び出して手から放出されている水を大量に吸い上げる。

 「くっ、やめろ!」
 トラコはサバンちゃんを突き飛ばす。

 「はあ、はあ、はあ、はあ」

 トラコは肩で大きく息をする。

 それでも、化け猫たちに自分の残った最後の水分を分け与える。

 力尽きたトラコはその場に座り込む。

 「クソッ、殺せ!」

 無表情にドカンちゃんはトラコを見下ろす。

 「……殺しませんよ」

 ドカンちゃんはサバンちゃんを見る。
 「お願いです、サバンちゃん、どうか、その水分をこの、可哀想な猫ちゃんたちに
 分け与えてください」

 「え~ボクたちを殺そうとしたクソ猫どもだよ~」

 「それでも、お願いします!」

 ドカンちゃんは深々と頭を下げた。
 
 「本当に馬鹿だなあ、ドカンちゃんは~」

 サバンちゃんはブツブツいいながら、化け猫たちに水分を分け与えた。

 「よ~し!元気になったぞ!悪者の人間をぶち殺してやる!」

 大量の化け猫たちがドカンちゃんに襲いかかる。

 「待て!」

 鋭い声が聞こえて化け猫たちの動きが止まる。

 「やめておけ」

 それはトラコだった。

 「疲れた……連れて帰ってくれ」
 トラコがそう言うと、化け猫たちは不服そうにしかめ面をしながら
 大勢でトラコを担ぎ上げて、山の奥に引き上げていった。
 
 「トラコさーん!ありがとうございまーす!」
 大声でドカンちゃんが叫んだ。

 トラコは右手だけをあげて、ヒラヒラと手を振った。


 その時である。
 「正義の味方、シアン参上!まだまだ戦えるわよ!」
 デデーン!と胸を張ってシアンちゃんが登場した。

 「終わりましたよ、帰りましょう」
 笑顔でドカンちゃんが言った。

 「はーっ?せっかく私が登場したのに、終わったですってえ!?」

 「あ、あの、ごめんなさい」
  ドカンちゃんは恐縮した。

 するとシアンちゃんはニッコリ笑った。

 「いいのよ、あなたたちが、全員、無事で生きてさえいれば」
 そういうと、シアンちゃんは「ふふふふふ~ん♪」と鼻歌を歌いながら
 山を降っていった。

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