ねこのフレンズ

楠乃小玉

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三章

十五話 都濃の名物はウニ

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 笑顔のガラに見送られながらドカンちゃんたちは南を目指した。

 ドカンちゃんは何かうかぬ顔をしている。

 「どうしたのドカンちゃん」
 心配してチカンちゃんがたずねた。

 「なんかさあ、世の中ってスパッと白か黒かで
 決着つかないよね」
 
 「そうなの?」
 「ボクがなにか、こうなんだ!って断定的に思ったら、
 そのつど新しい人が出てきて、違う価値観を言ってきたり、 
 否定したりするんだ。ボクはもう何を信じていいかわからないよ」

 「また言ってる。信じちゃダメなんだって、自分の頭で考えなきゃ」

 「自分の頭で考えた結論に対してえ、疑問が起こるような事を
  言ってくる人が出てくるんだ。なにか、スパッと
 何が正しいか、何が間違っているか、答えを出してくれる人が
 いたら楽でいいのに」

 「そんな人はいつの時代でも出てくるけど、化けの皮がはがれると、
 だいたいろくでもない人だから、そういう人に頼らないほうがいいよ」

 「考えるって難しいね」

 「そんなもんだよ、気楽に行こうよ」

  チカンちゃんがニコニコ笑った。

 「ボクがまだ小さい頃ね、織田信長に関する新資料が
 大量に発見されて、武功夜話とか従来信じられてきた資料が
 ねつ造だって分かったんだ。
 
 そしたら、実は織田信長は緊縮財政に反対してたり、
 道路を一杯作ってたり、改革を嫌っていて、

 実は一向宗本願寺が市場開放を一生懸命やってて、
 日本と外国の垣根を無くそうとしてて、信長は
 それに反対して本願寺や比叡山なんかのグローバリストと
 戦っていることが分かってきたんだ。

 そしたら、それまで言われてきた信長像と正反対でしょ。
 信長は緊縮財政やって増税して
 市場開放して、座を潰しまくって、
 新しいことは何でも取り入れて。

 それが全部ウソだって分かってきた。

 そしたら、織田信長は無能だったって本が山ほど出てきて、
 すごく情報が早い子は、得意げに織田信長って馬鹿だったんだぜ、
 とか最新の難しい本をビラビラ見せびらかしながら言ってた。

 ボクは勉強があんまりできなかったし、難しい本を読んでも
 何を書いてあるか分からなかったから、反論できなかったけど、
 でも、思ったんだ。

 そんなに信長が無能なら、どうして天下取れたの?って」
 
 「そしたらどうだったの?」

 「その子はボクを指さして、『ぎゃははは、そんなこともわかんないのかよ、
 こいつ馬鹿だ』って言った。そして、ボクが何度も何で?って聞いたら
 『馬鹿は相手にしないんだよ』って言われて、それ以降無視された」

 「それはひどいね」

 「学校の方針で、母校出身の偉い先生が月に一度、講演に来ることがあったんだけど、
 その先生が『日本はこれから少子化で人口が減るから、経済が衰退する。
 もう一度、経済を回復するためには、外国から大量の移民を入れて、
 大増税をするしかない。そうしたら、絶対経済は回復する。市場を開放して、
 ダメな日本企業を全部外国企業に買ってもらったら日本は復活する』
 って言ってたんだ。
 それで、本当かなって思って、人口が減っている国の経済が本当に経済が
 衰退しているか調べたんだ。
 そしたら、ジョージアとか日本よりはるかに人口減少が激しい国でも
 日本より経済発展している。他の国も調べたけど、日本より人口減少が
 激しい国でも、ちゃんと経済成長してたんだ。
 だから、次にその先生が来たとき、
 その資料をコピーして『人口減少している国でも経済発展してますよ。
 日本の経済停滞の原因は移民を入れないことではないですよ。むしろ、
 ドイツなどは移民を入れだしたら賃金が安くなって景気が悪くなってますよ』
 って言ったんだ」

 「そしたら?」

 「その偉い大学を出て教授をされている先生はものすごく怒って、
 何か訳の分からない言葉を言い出したんだ。あとで先生に聞いたら
 ドイツ語らしいけど、それで、『これがわかるか?』って言われた。
 そんなのわかんないよ。それから黒板に難しい数式を書いて、
 『これが分かるか』って言われた。わかんないよ、そんな数式。
 そしてわかんないと言ったら『この程度の簡単な数式も分からない
 人間が、無茶苦茶な質問などするべきではないですね』って言われて
 鼻で笑われたよ。そりゃ、ボクは馬鹿かもしれないけど、

 その先生が言ってたことはウソだったんだ。

 資料のデーターは
 馬鹿が見ても、偉い人が見てもかわらないよ。事実は事実だ。

 でも、その先生は質問に答えてくれなくて、とにかく、
 ボクのことを馬鹿にした。

 あとで、学校の先生に無茶苦茶
 怒られて、その偉い先生もすごく怒ってて二度と、
 学校には来てくれなかった。ボクの学校時代って
 そんな事ばっかりだよ。それで、先生から距離をおかれ、
 友達からも相手にされなくなった」

 「それは、その偉い先生が口から出任せを言って、それをドカンちゃんに
 見破られたから、怒ってごまかしたんだよ」

 「そうなの?じゃあ、偉い先生が馬鹿なの?」

 「そうじゃないよ、たぶん、その先生は勉強はできるから、
 普通に考えたら、ドカンちゃんの言ってることが正しいと理解できる。
 でも、世の中の人の大多数が『日本は少子化だから景気が悪い』って
 言ってるから、何も考えずに、それが正しいと思い込んでしまっているんだよ」

 「なんで、間違ったことを本当だと信じてしまうの?」

 「それが空気だからさ」

 「空気?」

 「みんなが言っていることに従って、反論しなければ、誰からも攻撃されない。
 そのほうが、その場は楽だから、みんな同じことをいう」

 「でも、それをやってるとみんな破滅するんだよね」

 「将来は破滅するだろうけど、今、自分が周囲から責められるのが嫌だから
 間違いだと気づいても、誰も間違いだと言わない」

 「でも、責められるのが嫌だって言っても、責められるのと
 将来破滅するのとだったら破滅するほうが嫌でしょ」

 「みんな、人任せにしてたら破滅しないよって思ってるんだよ。
 自分一人、戦わずに逃げても、誰かなんとかしてくれる。
 みんなそう思って黙ってウソをつきつづけているんだよ」

 「クロマニヨン人みたい」

 「だよね~」

 話がグルグルループする。


 ぐ~っ

 ドカンちゃんのお腹が鳴った。
 ドカンちゃんの顔がカーッと赤くなった。
 「照れなくてもいいよ~」

 チカンちゃんが笑った。

 「どっかお店はないかな~」

 チカンちゃんが周囲を見回す。

 「あそこがいいわ!」

 ドカンちゃんたちの後ろからシアンちゃんが大声で言った。

 ドカンちゃんが前を見ると、コンクリートでできた大きな鬼の像が置いてある店があった。
 店の名前は鬼の店。
 ウニ丼を出すお店だった。

 場所は都濃。
 都濃の名物はウニらしい。

 国道10号線沿いにある真っ赤な三角屋根の面白い建物の店。

 そこに入ってみんなでウニ丼を食べた。
 ご飯の上にウニが山盛りのっていて、
 くちゃくちゃおいしかった。
 ドカンちゃんは一生のうちで、こんなおいしいウニは食べたことがなかった。

 注意※
 ここで紹介しているお店、少し名前は変えてありますが、実際に作者が行ったウニ丼のお店は
 現在では閉店して無くなってしまいました。
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