ねこのフレンズ

楠乃小玉

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三章

十九話 屋久杉

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 屋久島二日目、ドカンちゃんたちは営林署が運営している屋久杉観光の場所に行った。
 そこには、よくどこの山でも見る植林されたまっすぐの杉の木が一杯並んでいた。

 宿屋に帰って聞いてみると、余所から来た営林署の人が山にあった屋久杉を大量に伐採して
 そのあとに普通の杉を大量に植えたようだ。
 屋久杉は既存の杉に比べて密度が高くとても希少で、高く売れる。
 そういう話を昔から住んでいる旅館の方に教えてもらった。

 その夜は、朝日カニというものを食べた。平べったいカニで、ウチワみたいな格好の
 カニで、食べるところは少ないけど、すごくおいしかった。
 チカンちゃんもシアンちゃんもサバンちゃんも喜んで食べていた。

 次の日、ドカンちゃんは観光案内で紹介されているところではなく、
 観光化されていない普通の屋久島を一周することにした。

 東回りで自転車をこいでいると、マングローブ園があった。
 海水と真水の混ざり合った場所にあるそうで、屋久島以外では
 みたことのない木だった。
 そこからまたずっと先に進む。
 しばらく行くと変な石を一杯かざっているお店があった。
 何でも森の天使の石とかで、どの石も人間の顔に見える。
 観光客の間では人気らしくて、今買わないとすぐに無くなってしまう
 とのことだった。

 そういう店がいくつかあった。

 聞いてみると、不思議なことに、そういうファンシーなお店は
 全部、都会から来た人たちが運営しているようだった。

 そこからぐるっと回って山の奥に行くと、野生の猿が沢山道路にいた。
 はじめて小豆島で猿を見たとき、大興奮したけど、すごく一杯固まっていると、
 反対に襲われないか怖いので、自転車のスピードを出して通り過ぎた。

 思えば、小豆島で見つけた猿はけっこうビビっていたが、
 一杯の人間と地霊の集団を見てさぞ怖かったことだろう。
 今は、ドカンちゃんたちが逆の立場だ。

 そこからしばらく行って、山を越えたあたりに砂浜があった。
 そこは田舎浜というらしい。
 真っ白な砂浜。

 ドカンちゃんたちはその砂浜に降り立った。

 波打ち際に行ってみると、見たことも無い貝がいっぱい落ちていた。
 うわ、おもしろい!

 「これは宝貝といって、昔は貨幣としてつかわれていたんだよ」

 チカンちゃんが言った。

 「あ~ほしいな~」

 ドカンちゃんが言った。

 「やめといたほうがいいよ。どうしても欲しかったら、売っているものを
 買ったほうがいい。浜から勝手に取ってきちゃったら、付いてくるものが
 ある場合があるから」
 
 「そうなの?わかった。ドカンちゃんの言う通にするよ」

 ドカンちゃんは素直に宝貝を浜に返した。

 ふと、浜の南側を見た。

 ドカンちゃんはハッとした。
 この風景、昔、みたことがる。そう、夢で見た風景だった。

 「屋久島に来たのは生まれて初めてだけど、この風景、見たことある」

 ドカンちゃんがつぶやいた。

 「そういうのをデジャブーって言うんだよ、人間は時々、そういう不思議な体験をするんだ」

 「へーそうなんだ。なんでだろうね」

 その浜を後にして、先に進んだ。
 大きな草むらを通かかったときだ。

 ドーン!
 
 すさまじい爆音がした。
 ライフル銃だと分かった。

 もし、鹿と間違えられて撃たれたら怖いから、ドカンちゃんは
 一生懸命、自転車をこいだ。

 「きゃー!逃げるのよ-!えいほ!えいほ!」

 サバンちゃんとシアンちゃんの自転車のほうが猛スピードを出して、
 ドカンちゃんの自転車を追い抜いていった。

 しばらくいくと、道路沿いにトローキの滝という看板を見つけた。
 地元の人が歩いていたのでドカンちゃんは聞いてみた。
 「この先に大きな滝があるんですか?」
 
 「ああ、あるよ、でももっとすごいのがこの奥にある。
 千尋の滝っていうんだ。昔なんだかって漫画映画があったでしょ、
 あの名前の元となった滝だよ」

 「そうなんですね、教えてくださってありがとうございます!」

 ドカンちゃんはトローキの滝を見たあと、千尋の滝を見に行った。
 すぐ近くまではいけなかったけど、遠景から滝を眺めた。
 屋久島の大自然は本当にすごいとドカンちゃんは思った。
 観光化されている植林の森だけでなく、こういうところに

 本当の屋久島のすばらしさがあると思った。

 この森は安心する。木がおりまがり、ねじまがり、自由に生えている。
 それこそが自然の雑木林だ。

 しかし、ずっとその森の中をするんで行くと急に不安になってきた。
 まったく人の気配が感じないのだ。
 静まりかえった森の中。
 人間の気配がまったくしない。
 むろん、チカンちゃんやサバンちゃん、シアンちゃんはいるが
 その気配と人間の気配は違う。

 自分一人、人間が誰もいない静寂の世界とは
 こんなにも閑散として恐ろしいものかとドカンちゃんは思い知った。

 そうしているうちに日が暮れてくる。

 しまった。また同じ過ちだ。
 しかし、今回は懐中電灯を自転車につけている。

 おかげで、足下は明るい。
 ドカンちゃんは電灯のない暗闇を自転車で進む。

 浜側に進もう。そうすれば道があるはずだ。
 ドカンちゃんはそう思い、意図的に細くても浜側に近い道を進んだ。
 まえに山の中で側溝に落ちた恐怖がよみがえったのだ。

 そのうち、ドカンちゃんは河口にたどり着いた。

 しまった。河口だから道がない。丸くてこぶし大の河原の暗闇をドカンちゃんが進む。
 「大丈夫だよ、ドカンちゃん私達がついているよ!」
 チカンちゃんがはげました。

 「私が炎で明るくしてあげようか」
 シアンちゃんが後ろから声をかける。

 「だめだよ、シアンちゃんの元気が無くなっちゃうし、また化け物が出てきたら
 戦わなくちゃいけなくなる。

 ジャリ、ジャリと丸石を踏みしめるたびに大きな音がする。

 「お~」
 「お~」

 足下から鈍いうめき声が聞こえてくる。
 無数のうめき声が。
 ふと、ドカンちゃんは何も考えずにそのうちの一つを拾い上げる。
 それは、石に三つの穴が開いた人間の顔に見える石だった。
 「うわっ」
 あわててドカンちゃんはそれをほうりなげた。
 
 ズキッ

 右手がうずる。

 「静まれ!ボクの右手!」
 必死の思いでドカンちゃんは右手を左手でおさえた。


 「おおおおおー!」

 声は巨大なわめき声となって、無数の黒い影がわきあがった。

 「うおおおおおおおー!」
 ドカンちゃんが叫ぶと、右手の包帯がちぎれ飛び、そこから鋭い爪がジャキン!と露出した。
 すると、それまでのうめき声がウソのように消えた。

 「やばいよ、やばいよ」
 サバンちゃんがつぶやいた。

 「やはくここを脱出しよう!」
 チカンちゃんが言った。

 「そうだね」

 河原沿いに歩いていくと、舗装された道に出た。
その道のアスファルトを、必死に人家がある方向に自転車をとばした。

 途中で旅館の看板があった。

 「あのすいません、今夜ここに泊めていただけませんか?」

  玄関口でそう言うと、中から女の人が出てきた。

 「え?そんな事言われても困るんだけど」

 「あの?ここ旅館ですよね」

 「違うよ、旅館は隣」
 
 「あ、ごめんなさい」

 ああ、びっくりした。

 隣の家の呼び鈴を鳴らす。

 「やあ、どうしたんだい」
 気のよさそうなおじさんが出てきた。

 「あの泊めていただけないでしょうか」

 「いいよ」

 よかった。

 どかんちゃんは胸をなでおろした。

 「じつは、近くの河原へ石に顔があるようなものが、いっぱいあって、
 うめいていたんです」

 ドカンちゃんは正直にさっき見てきたものの話しをした。

 「あー見ちゃったか~。これねえ、困ってるんだよねえ。
 地元の人間としちゃ、この狭い島で観光客の人が来てくれるから
 生活ができるのであって、外から来た人が人面石を売ったり、おもちゃにしても、
 文句は言えないんだよね」

 「人面石ですか?」

 「あのさ、屋久島の裏側ってほとんど観光案内してないでしょ」

 「あ、ああ、はい」
 
 「人面石がごろごろしてるばしょとか、あるんだよね」

 「あ、はい。天使の石ってテレビで言ってたし、東京から来た人がペンキとか塗って売ってました」

 「ああ、テレビとか映画とかすごく宣伝してくれるから
 助かるし、本当にたすかるんだけどねえ……」

 「何でしょうか」

 「これは、言って欲しいけど、いってほしくない。
 もし分かったとしても島には来てほしいんだ。
 だから、観光案内されてない場所には、本当は行ってほしくないんだ。
 君みたいに、みんなとは違った行動をする子は、本当は困ってしまうんだよ」


 「ごめんなさい」
 
 「ある意味、それが分かった上で、事実を黙って、ビジネスチャンスにしている人達のほうが
 じつは助かる。でも、本当は、私ら地元の人間は君みたいな人が来てくれることを
 本当は待ち続けていたのかもしれない」

 「どういう事でしょうか」

 「あの~これは史実とかじゃなくて、じじいの妄想だと思って聞いてほしいんだ。
 昔から先祖代々聞いてきた事だけど、本当かウソかもわからないしね。

 あの、島津家久って殿様がいてね、世間では頭がおかしいとか、狂った殿様と言われているんだ。
 特に戦前はね。でも、地元じゃ、実は偉い殿様、信仰心の篤い立派な殿様と言われ、尊敬されている
 面もある」

 「はい」

 「島津はね、戦国時代、外国から武器を買って肥大化した大友に侵略されて、
 滅亡の危機にあったんだ。そして、まさに滅亡しかけた時、一人の宣教師が島津を訪れたらしい。
 大友が使っている鉄砲と火薬を西洋から買えば、戦に勝てるよと。
 
 でも、島津は大友に押しまくられて、そんな財政的な余裕はない。
 宣教師は言ったそうだ。『娘五十人で火薬1樽』島津は生き残るために西洋人に人を売ってしまった。

 だが、そんなやり方に島津の末っ子、家久様は常々不満を持ってらしたそうな。
 それで、戦国時代も下火になった頃、西洋の窓口になって島津の人売りの窓口になっていた
 伊集院の一族を皆殺しにした。自分の妹婿だったそうだがね。

 それで、伊集院に味方した者たちを罪人として屋久島に連れて行き、
 屋久杉の伐採の中でも一番危険な地域の伐採に従事させたそうな。

 人売りがなくなって島津の民は感謝したが、
 屋久杉の伐採にかり出された罪人たちは倒れる大杉の下敷きになって大勢死亡したそうだ。
 その死体を捨てたのが、あの河原さ。以後、あそこには大量の人面石が出るようになったという。
 まあ、あくまでも言い伝えだけどね。
 あんまり、こんな事がしれたら、せっかくテレビの方が神聖な神の島って言ってくださっているのに
 申し訳がたたない。
 しかし、昔からひっそりと供養してきた人面石がおもちゃにされ、売られていくのも
 本当はしのびない。
 でも、観光客の方にはきてほしい。
 そういう揺れる思いがあったんだよ、ここの人間としてはね。
 いずれ、そういう事も知った上で屋久島には来て欲しいんだ。本当は」

 おじさんはそんな事を言った。

 「そんな事があったんですね」

 ドカンちゃんはチカンちゃん、シアンちゃんやサバンちゃんもおじさんの話をしんみりと聞いた。

 次の日の朝、ドカンちゃんたちを送り出すおじさんは言った。

 「どこか、大きな神社でお祓いしてもらってきなさい。それがいいよ」
 
 「はい、ありがとうございました」

 ドカンちゃんは旅館をあとにし、その足で港に向かった。

 ドカンちゃんは港で焼酎を買った。
 
 「何をするつもり?」

 シアンちゃんが聞いた。

 「また、あそこに戻って、人面石の皆さんにお酒をふるまおうかと思って」

 「素人考えで、そんなことはおやめなさい!あなたは、あの人達と一生つきあう

 気持ちがあるの!?あのおじさんは、これからも、一生つきあっていく
 覚悟で供養されているのよ。だいたい、神社の神官もまじえず、

 ただの一般人のあなたが供養しようなんて、傲慢だと思わなくて?」

 シアンちゃんの言葉にドカンちゃんはハッとした。

 「ごめんなさい」
 
 買った焼酎は、港でお酒を飲んでいた漁師風の人にあげた。 
 その人はよろこんでいた。

 ドカンちゃんはみんなと一緒に、鹿児島へと戻った。
 

 
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