ねこのフレンズ

楠乃小玉

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三章

二十二話 逆鉾

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 霧山神宮の前までくると、神宮の前にあるユースホステルに荷物を置いて、
 ドカンちゃんは、早速神社にお参りに行ってお祓いをしてもらおうと思った。

 神社の前にある橋を渡って、大きな鳥居をくぐろうとする。

 ドン!

 ドカンちゃんは跳ね返された。

 「あ?!」

 思い当たるところはあった。
 自分の右手を見るドカンちゃん。手にはフサフサと毛が生えている。
 そうだ、屋久島で巻いていた包帯が砕け散ってしまったんだった。
 とりあえず、この右手を隠さないといけない。

 ドカンちゃんは神社の石段を降りて、近くの売店に向かう。
 売店の前に頭の毛が白黒のブチの女の子が座り込んでいた。

 白い洋服で下は黒のスパッツ。

 「うにゃうにゃうんにゃべ!」
 女の子はあたまの上にはえたネコ耳をピクピク動かして叫んだ。

 「え?」

 ドカンちゃんは首をかしげた。
 「ああ、他所の人か、ここはどかないよって言ったんだ」
 
 「あ、そうなんですね。わかりました。避けて通ります」

 ドカンちゃんはその女の子を避けて店の中に入ろうとする。

 「あんた、その右手じゃ、神社の中に入れんとよ、
 天野逆鉾で清めてもらってきなさい」

 「あ、そうすれば入れるんですね。分かりました。明日行ってきます。
 ところで貴方は誰ですか?」

 「私は和猫のブチ猫でブチだよ」

 「ここの神社のお使い様ですか?」

 「違うよ、この門前町の地霊だよ。私らも恐れ多くて
 鳥居から中には入らない。

 霊は入れて貰えんとよ。それだけ、この神社は
 格が高い神社だから、十分に気をつけていくようにね」

 「そうだったんですね。分かりました。ありがとうございます」


 ドカンちゃんはお礼を言って、一旦、ユースホステルに帰った。

 次の日、ドカンちゃん、サバンちゃん、シアンちゃんと一緒に
 天野逆鉾のふもとにある元宮のところまでタクシーで行く。

 そこの自動販売機で天然水を買う。リュックには新聞紙とか菓子パンとか、
 途中でみんなが空腹で動けなくならないように用意をしていった。

 元宮は元々霧山神社があったけど火山の噴火で焼けてしまった神社跡だ。
 その跡地をお参りしたあと逆鉾の山を登った。

 のぼりはじめると、雑木林があり、その奥から何匹か鹿がこちらの様子をうかがっていた。

 その雑木林を抜けると、小高い丘は一面茶褐色の火山岩で草木は生えていなかった。
 そこからが大変だ。

 少し登ると、ガラガラ、もうすこし登るとガラガラ。

 足下の火山岩が崩れて、なかなか登れない。

 これが大変だった。
 やっとの思いで登ったら、
 そこには大きな噴火口跡のクレーターがあった。

 中を覗き込んで、ドカンちゃんは思わず吹き出しそうになった。

 そのクレーターの底には石を並べて
 「I LOVE YOU 」

 と書いてあった。

 一つ間違えば、有毒ガスにやられたり、噴火が起こって黒焦げになるかもしれないのに 
 命がけで馬鹿な事をする人がいるもんだなあと思った。

 逆鉾は、まだその先の小高い峰の上にあった。

 この山の麓にあった説明文によると、この逆鉾は、二度と戦が起こって大勢の人が
 亡くならないよう、呪詛を込めて突き刺したようだ。

 そして、戦が起こらないよう、二度と抜いてはならぬものであったそうだ。

 抜いた者は命を失い、抜いた国は争いに巻き込まれ焼け野原になる。

 この山に刺さっている逆鉾は本物ではないらしい。

 明治時代に大噴火が起こって、折れてしまったそうだ。

 折れた先は麓の神社に納められたが、そこから、
 誰かが持ち去って、今は行方知れずだそうだ。

 現在刺さっているのはレプリカだそうがだ、
 折れた柄の本物は、まだそこに刺さったままなので、
 神通力はまど残っているとのことだった。

 山の頂上に登ると周囲の高原が一望できる。
 とてもさわやかな気持ちになった。

 ドカンちゃんはその峰の頂上にある天野逆鉾を見て、
 ドカンちゃんは胸が熱くなった。

 ドカンちゃんは天野逆鉾に向かって手を合わせる。

 「いちどは、強くなりたいと望みました。
 自分一人で、みんなを守れる強い力がほしいと望みました。

 でも、たとえ、苦労しても、自分一人では何にも
 できなくても、また素手でチカンちゃんをダッコしたいです。

 頭をなでなでしたいです。
 もとに戻りたいです」

 ドカンちゃんは小声そう唱えた。

 目尻か涙があふれ出て、ポタリと地上の岩の上に落ちた。

 パキーン!
 
 はじけるような音がしてドカンちゃんの右手から巨大な鋭い爪が浮き出してきて、

 ボロボロと剥がれて地表の落ちた。

 ビュウ!

 風が吹いて、ドカンちゃんの右手に生えていた毛が風にとびちった。

 「ああ、手が!手が!」

 ドカンちゃんの目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。

 「ドカンちゃん!」
 チカンちゃんがドカンちゃんに抱きつく。

 ドカンちゃんは恐る恐るチカンちゃんの頭をなでる。

 「大丈夫?痛くない?」
 「うん、痛くないよ!」
 チカンちゃんはニッコリと笑った。

 「チカンちゃん!」
 ドカンちゃんはチカンちゃんを抱きしめた。


 「ううう……良かったわね、ドカンちゃん、チカンちゃん」

 シアンちゃんは鼻の頭を真っ赤にして、目からボロボロと涙を流した。


 「おめでとー」
 サバンちゃんはニコニコ笑いならら、パチパチと拍手をした。


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