ねこのフレンズ

楠乃小玉

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十二話 勇者ドカン

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 「はあ、はあ、はあ、」
 波の様にやってくる喜びと不安。
 交互に大きな力となって押し寄せてくる。

 「マトモにうけとっちゃだめ!かわすんだよ!」
 チカンちゃんが叫んだ。
 「うん、わかった!波乗りういりー!」
 ドカンちゃんが叫んだ。
 体の奥から力がわいてくる。
 もう一歩、もう一歩でもいいからペダルをこごう。 
 次の一歩で倒れてもいいから!
 一般人にとっては何気ない日常。
 当り前の行為。
 
 それが、勇者ドカンにとっては命をかけた戦いなのだ!

 ひきこもりバンザイ!

 しばらく自転車をこいでいると、遠くのほうに真っ赤な鶏のマークの絵が見えた。
 「あれを見て!見よ、あれがパリの火だ!!」
 チカンちゃんが叫んだ。
 「はいよー!シルバー!」
 ドカンちゃんがさけぶと、ママの自転車が白馬に変身する。
 馬のたてがみや足からモクモクと煙がたちのぼっている。
 「やったー!かっくいー!」
 チカンちゃんが大喜びしている。
 ドカンちゃんもすごく嬉しくなった。
 鉄の金網の向こう、
 コマリホームセンターがあった。
 店の前面にならべられたいっぱいのパンジー、
 それがドカンちゃんを見ると一斉に笑った。
 「にーっ」
 ドカンちゃんは自転車置き場に自転車を止めると、真っ先に
 パンジーのところに行った。
 「にっこにこにー!」
 ドカンちゃんが叫んだ。
 「にっこにこにー!」
 パンジーたちの大合唱がおこった。
 「うわ~すごい」
 ドカンちゃんはパンジーの顔を一人一人観察した。
 小さなビオラは顔をクシャクシャにして笑っていた。
 「あはは、かわいいなあ」
 ドカンちゃんは笑った。
 ビオラも笑った。

 「やったー!ドカンちゃんは勝ったんだよ!
 やっとホームセンターまで来れたんだ-!」
 チカンちゃんが叫ぶ。
 「おめでとー!おめでとー!」
 パンジーやビオラと一緒にデイジーもドカンちゃんの事を祝福してくれた。
 ドカンちゃんはすごい達成感をあじわっていた。

 「どれどれ、どうしたのかな」
 店舗の中から女の子の声がする。
 ドカンちゃんがそちらの方向を見ると、
 店舗の中から白いシルクの片方の肩を出したサバイを来た女の子がトコトコと
 出てきた。
 目の色はブルーで髪の毛は真っ白だけど猫耳は黒い。
 お尻から出ている尻尾も白だけど先っぽだけ黒い。

 そして片方の手に黒縁の虫眼鏡をもっていた。
 「アナタは誰ですか」
 ドカンちゃんが聞く。
 「私はサイアミーのサイア民だよ」
 サイア民は虫眼鏡ごしにドカンちゃんを見た。
 「私はチカンちゃんだよ!」
 チカンちゃんはピョンピョン跳ねながら言った。
 「どれどれ」
 サイア民は虫眼鏡でチカンちゃんを見ながら焦点をあわせる。
 ジュッ
 「あちゃちゃちゃちゃ!」
 チカンちゃんの頭がちょっと焦げて白い煙が出た。
 「何するんだよ!」
 「ちょっとしたお茶目ないたずらだよ」
 
 その声を聞きつけて、お店の店員さんが店の中から出てくる。
 「こらこら、サイアちゃんはまたお客様にいたずらして」
 
 「虫眼鏡で頭を焦がされちゃったよ!」
 チカンちゃんはピョンピョン跳ねながら怒った。

 「あら、ごめんなさいね、ダメでしょ、サイアちゃん」
 そう言って店員さんはサイアから虫眼鏡を取り上げる。
 「あ!新しいオモチャだったのに!」
 「これは危ないからダメよ!もっと他のオモチャあげるから」
 「そうなの?」
 「だから、もうお客さんにいたずらしたらだめよ」
 「だって、店員さんがかまってくれなかったから
 寂しかったんだもん、かまって、かまって、かまってくれなきゃ
 ぐれちゃーうぞ!」
 そう言いながらサイアは腰をクイクイ回転させながら踊った。
 「本当にごめんなさいね、この虫眼鏡はサイアちゃんが
 ビニールのパッケージを破って外に出しちゃったから、
 売り物にならないわ。私がお金を払っておきますから、
 これはさしあげます」
 
 そう言って店員さんはチカンちゃんに虫眼鏡を渡した。

 「わーい!もらっちゃったー!」
 チカンちゃんは喜んだ。
 「じゃあ、行こうか」
 「うん」
 
 ドカンちゃんとチカンちゃんはコマリホームセンターを出た。
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