ねこのフレンズ

楠乃小玉

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三十四話 鼻の頭にアイスがついた

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 ドカンちゃんは自転車でK2ホームセンターを出た。
 「どこいく?」
 チカンちゃんがたずねる。
 「ちょっとクックさんの事が気になってるんだよね~」
 「私もだよ~」
 「しゃあ、行ってみようか」
 「そうしよう」
 
 ドカンちゃんはクックさんの家に向かった。
 クックさんの家に行くと、クックさんはバラの水をやっていた。
 ドカンちゃんを見るなり目を見開いた。
 「あら~よく来て下さったわね、この前はごめんね~」
 すごく明るい笑顔で迎えてくれた。
 
 「どうぞお家に入って。今、ちょうどお菓子があるのよ」
 そう言ってクックさんはドカンちゃんたちを家の中に招き入れた。
 クックさんだ出してくれたものは、どこかのお土産のおせんべい
 みたいなものだったが、出されたとたん腐臭が臭ってきた。
 
 「うっ」

 ドカンちゃんは思わず身を引いた。
 チカンちゃんも顔をしかめている。

 「どうしたの?おいしいわよ」
 そういってクックさんはそのおせんべいをバリバリ食べている。
 クックさんは平気みたいだ。
 ドカンちゃんとチカンちゃんは顔を見合わせる。

 「わ~おいしそうだなあ、折角だからお家にもってかえって食べますね」

 「あら、遠慮しないでここで食べなさいな」

 「こんな珍しいおせんべい、お母さんにも見せてあげたいので」

 「あら~ドカンちゃん親孝行ね~」
 クックさんはニッコリと笑った。

  ドカンちゃんとチカンちゃんは貰ったおせんべいをこっそり 
  ポケットに入れた。

 「このおせんべいどうしたんですか?」

 「それがね、阿久間さんが、
 このまえ旅行に行ったから買ってきたっていうのよ
 本当にいい子よね、確定申告はタダでやってくれるし、
 役所の手続きは何でもしてくれるし、
 本当に最高の人よね」

 その事に対して、ドカンちゃんはもう口出しはしなかった。

 「あの、賃貸住宅の経営の話は進んでるんですか?」

 「それがね、全部、阿久間さんがプランを考えてくれて、
 固定金利で契約したのよ」

 「え?ダメですよ、固定金利だと、全財産担保に取られた時、
 借り換えしようと思っても、数百万の違約金を取られて、
 とんでもない事になりますよ、だから絶対固定金利はやっちゃだめなんです!」
 
 「あら、そんな事ないわ、阿久間さんが、これから金利が跳ね上がるから
 絶対固定金利が良いって言ってたもの」
 
 「だって、木戸さんが今は最低金利だから絶対変動でやらなきゃだめだって、
  固定を勧めてくる銀行は詐欺だって言ってました!」
 
 「あら、その人バカなのね、うふふ」
 
 「うぐぐっ」
 ドカンちゃんは言葉に詰まった。

 「どうして、どうしても賃貸住宅経営をやめる気はないんですか?」

 「もう頭金百万入れてしまったもの、ざんねんでした」

 「今なら断れます、百万なんて無くなっても全財産失うよりはいいじゃないですか!」

 「ほんとうに、世間しらずね100万円貯めるのにどれだけ大人が大変な思いして 
 働かなければならないか、分かってるの?」

 「だから、だからこそ……」
 そこまで言ってドカンちゃんは唇をかんだ。

 クックさんの視線が宙に浮いている。
 こちらを見ていない。
 まるで、夢の中に居るみたいだ。
 「もう帰ります」
 ドカンちゃんは席を立った。
 「あら、もう帰るの、また来てね~」
 クックさんはニッコリと笑った。

 「あ、そうだ、スマホのメアドかライン交換しませんか?」

 「なにそれ?携帯電話の番号なら教えてあげるわよ」
 「そうですか、じゃあ、ボクの番号をクックさんの携帯電話に
  登録しときますね」
 「どういたしまして」

 ドカンちゃんはクックさんの携帯電話を受け取って自分のスマホの番号を
 入力した。
 
 「何か困ったことがあったら電話してくださいね、じゃあ、今日は帰ります。

 「そう、じゃあ、またいらしてね」
 クックさんが明るく微笑む。

 「はい」
 ドカンちゃんは悲しげに笑った。
 チカンちゃんはドカンちゃんの後をトコトコあるいて追いかけていった。

 ドカンちゃんはクックさんの家を出る。
 「ねえドカンちゃん、これから石ヶ谷公園の滑り台に遊びに行く?」
 「ごめん、今そんな気分じゃないんだ」
 「だよね、私もそんな感じだよ」

 「帰ろっか」
 ドカンちゃんが笑顔でチカンちゃんを見た。
 「うん」
 チカンちゃんは笑顔で答えた。
 
 クックさんの家からの帰り道、
 三十三アイスクリームの店を見つけた。
 
 「元気がでるようにアイス食べようか」
 ドカンちゃんがそう言うとチカンちゃんは目を輝かせた。
 「たべるよ!」
 
 ドカンちゃんはチカンちゃんをだっこして
 アイスクリーム屋さんに入る。
 そうすることによってチカンちゃんにもアイスの種類を一望することができた。
 「わたし、あのナッツのがいい、香ばしいナッツがいい!」
 チカンちゃんが叫んだ。
 「かわいい女の子ですね、妹さんですか?」
 店員のお姉さんが言った。
 「え?!え、あ、はい、そんなもんです」
  ドカンちゃんはごまかした。

  ドカンちゃんはコーンの中にナッツのアイスを入れてもらって、
 チカンちゃんと交互に食べた。
 アイスをかじったとき、ドカンちゃんの鼻の頭にアイスがついた。
 「あー!鼻の頭にアイスがついたー!」
 チカンちゃんが笑いながら指をさした。 
 「えへへ」
 ドカンちゃんは笑った。
 いくぶんドカンちゃんの気が晴れた。

 
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