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第二章
一話 新たなる旅立ち
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「あのねドカンちゃん、お母さんお願いがあるの」
「何?」
「今から冒険旅行に行ってほしいの?」
「は?意味がわかんないんだけど」
「実は木戸さんから電話があってね、これから
ドカンちゃんには西日本を自転車で回る、西日本ドカン自転車の旅
をしてほしいっていうのよ、その資金として百万円預かってきたのよ、ほら」
そう言ってドカンちゃんのお母さんは百万円の札束を取り出してきた。
「えー!こんなの受け取っちゃだめだよ!今、木戸さんはお金で大変なんだよ!」
「でも、せっかくの好意だし……」
「だめだよ!返してくる」
そう言ってドカンちゃんはお母さんから百万円をひったくる。
「いくよ、チカンちゃん!」
「ほいきた!」
ドカンちゃんはチカンちゃんを自転車の前かごに乗せ、
片手に百万円の札束を握りしめたまま木戸さんの家に直行した。
「どういう事ですか木戸さん!」
ドカンちゃんは木戸さんの家に走り込んだ。
「え?いや、だって今まですごく助けてもらったし、
いい不動産屋さんも紹介してもらったし、これは仕事の賃金だよ。
タダで働いてもらうわけにはいかないだろ」
「いいえ!木戸さんは今、一円でも必要な時ですよ、そんな時に
全国を回る旅なんて、何を考えているんですか!」
「ちょっとまって、ドカンちゃん、これには深い訳があるんだ」
「何ですか」
「実はね、最近、無言電話がかかってきたり、家の周囲をヤクザ風の人が
うろついたりしてるんだ」
「え?!銀行や建設会社がそんな事を!?」
「いや、それは断定できない。だけど、すごく危険を感じている。
でも、安心してほしい。けっこうこの業界ではこういう事は多いんだ。
だからといって、死人が出たって話しはめったに聞かない。
ただの脅しだよ。それにお金さえ返してしまえば、こういう事は
パタリと止まるから安心して」
「はい、安心してます。だから、これからも木戸さんの家に来ます」
「いや、しばらくは様子を見て、明石を離れてほしいんだ。
あくまでも、保険の意味でだよ」
「そんな!ボクだって木戸さんと一緒に戦いますよ!」
「だめだ!ドカンちゃんの身が心配で、私が神経がすり減ってしまうんだよ」
「分かりました!じゃあ、しばらく木戸さんの家には来ません!でも、
このお金は返します!」
ドカンちゃんはそう言って百万円の札束を木戸さんに押しつけて
自転車で全速力で家に帰った。
何故だかポロポロと涙が流れた。
木戸さんの家に行けないのが、何故か、悲しくて切なくて、
心を締め付けられた。
チカンちゃんは買い物かごの中から心配そうにドカンちゃんを見つめた。
「ただいま~」
ちょっと疲れ顔でドカンちゃんは家に帰ってきた。
家に帰ると、お母さんが百万円の札束を差し出してきた。
「あの~西日本猫で巡るドカンちゃん自転車の旅に行ってくれないかしら~」
「また木戸さんからもらってきたの!?」
ドカンちゃんは目を丸くした。
「違うわよ。これは、私達がドカンちゃんが高校に行った時のために
貯金していた高等学校進学のための資金なの。でも、それも今では
必要無くなったから……木戸さんからさっき電話がかかってきたわ。
お母さんも、そんなヤクザ者が家の周りをうろつき回ったら、
心配で仕方ないわ。だから、どうか、一時的に明石を離れて。
お願い!」
「う~」
ドカンちゃんはうなった。
「行こうよ!楽しそうだよ!」
チカンちゃんが下からドカンちゃんの太ももを掴んでユサユサゆらす。
「う~ん、分かったよ、チカンちゃんと自転車旅行に行ってくる。
実は、ちょっと楽しそうだと思ってたんだ。でも木戸さんのお金じゃいけないや。
お家のお金なら、ちょっと行ってみたいかな」
「そう、よかったわ。くれぐれも絶対、野宿だけはしないでね。
あと、お金を落としたらいけないから、銀行に入れて、
少しずつキャッシュカードで引き出すようにしてね」
「うん、わかったよ、それじゃ、自転車旅行に何が必要か、ちょっとネットで
調べてみるね」
「うん、わかったわ。お母さん心配だけど、ドカンちゃん信じてるわ」
そう言ってお母さんはニッコリと笑った。
注釈
この自転車旅行は作者が本当に行きました。
ただし、資金は株で儲けた金で、行ったのは大人になってからです。
「何?」
「今から冒険旅行に行ってほしいの?」
「は?意味がわかんないんだけど」
「実は木戸さんから電話があってね、これから
ドカンちゃんには西日本を自転車で回る、西日本ドカン自転車の旅
をしてほしいっていうのよ、その資金として百万円預かってきたのよ、ほら」
そう言ってドカンちゃんのお母さんは百万円の札束を取り出してきた。
「えー!こんなの受け取っちゃだめだよ!今、木戸さんはお金で大変なんだよ!」
「でも、せっかくの好意だし……」
「だめだよ!返してくる」
そう言ってドカンちゃんはお母さんから百万円をひったくる。
「いくよ、チカンちゃん!」
「ほいきた!」
ドカンちゃんはチカンちゃんを自転車の前かごに乗せ、
片手に百万円の札束を握りしめたまま木戸さんの家に直行した。
「どういう事ですか木戸さん!」
ドカンちゃんは木戸さんの家に走り込んだ。
「え?いや、だって今まですごく助けてもらったし、
いい不動産屋さんも紹介してもらったし、これは仕事の賃金だよ。
タダで働いてもらうわけにはいかないだろ」
「いいえ!木戸さんは今、一円でも必要な時ですよ、そんな時に
全国を回る旅なんて、何を考えているんですか!」
「ちょっとまって、ドカンちゃん、これには深い訳があるんだ」
「何ですか」
「実はね、最近、無言電話がかかってきたり、家の周囲をヤクザ風の人が
うろついたりしてるんだ」
「え?!銀行や建設会社がそんな事を!?」
「いや、それは断定できない。だけど、すごく危険を感じている。
でも、安心してほしい。けっこうこの業界ではこういう事は多いんだ。
だからといって、死人が出たって話しはめったに聞かない。
ただの脅しだよ。それにお金さえ返してしまえば、こういう事は
パタリと止まるから安心して」
「はい、安心してます。だから、これからも木戸さんの家に来ます」
「いや、しばらくは様子を見て、明石を離れてほしいんだ。
あくまでも、保険の意味でだよ」
「そんな!ボクだって木戸さんと一緒に戦いますよ!」
「だめだ!ドカンちゃんの身が心配で、私が神経がすり減ってしまうんだよ」
「分かりました!じゃあ、しばらく木戸さんの家には来ません!でも、
このお金は返します!」
ドカンちゃんはそう言って百万円の札束を木戸さんに押しつけて
自転車で全速力で家に帰った。
何故だかポロポロと涙が流れた。
木戸さんの家に行けないのが、何故か、悲しくて切なくて、
心を締め付けられた。
チカンちゃんは買い物かごの中から心配そうにドカンちゃんを見つめた。
「ただいま~」
ちょっと疲れ顔でドカンちゃんは家に帰ってきた。
家に帰ると、お母さんが百万円の札束を差し出してきた。
「あの~西日本猫で巡るドカンちゃん自転車の旅に行ってくれないかしら~」
「また木戸さんからもらってきたの!?」
ドカンちゃんは目を丸くした。
「違うわよ。これは、私達がドカンちゃんが高校に行った時のために
貯金していた高等学校進学のための資金なの。でも、それも今では
必要無くなったから……木戸さんからさっき電話がかかってきたわ。
お母さんも、そんなヤクザ者が家の周りをうろつき回ったら、
心配で仕方ないわ。だから、どうか、一時的に明石を離れて。
お願い!」
「う~」
ドカンちゃんはうなった。
「行こうよ!楽しそうだよ!」
チカンちゃんが下からドカンちゃんの太ももを掴んでユサユサゆらす。
「う~ん、分かったよ、チカンちゃんと自転車旅行に行ってくる。
実は、ちょっと楽しそうだと思ってたんだ。でも木戸さんのお金じゃいけないや。
お家のお金なら、ちょっと行ってみたいかな」
「そう、よかったわ。くれぐれも絶対、野宿だけはしないでね。
あと、お金を落としたらいけないから、銀行に入れて、
少しずつキャッシュカードで引き出すようにしてね」
「うん、わかったよ、それじゃ、自転車旅行に何が必要か、ちょっとネットで
調べてみるね」
「うん、わかったわ。お母さん心配だけど、ドカンちゃん信じてるわ」
そう言ってお母さんはニッコリと笑った。
注釈
この自転車旅行は作者が本当に行きました。
ただし、資金は株で儲けた金で、行ったのは大人になってからです。
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