ねこのフレンズ

楠乃小玉

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第二章

二話 宇治へ

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 「ネットで調べる前にね、旅行に必要なのは霊的守護なんだ。霊的守護を受けよう」
 チカンちゃんが言った。
 
 「霊的守護?たとえば?」

 「例えばね、坂之上田村麻呂が東国に遠征に行くときに受けた霊的な守護とかね
 あとは大海人皇子が国元に無事に帰れるように祈って受けた霊的な守護とか」

 ドカンちゃんは首をかしげた。
 「よくわかんないや」

 「じゃあとにかく、その場所に行こう」

 「う、うん」

 ドカンちゃんはチカンちゃんに言われるがまま、昔の偉い人が旅に出る時、
 必ず参拝に行ったという秘密の神社に行くことにした。

 その場所は京都府の宇治のほうにある小さな神社だった。

 京阪電車に乗り、宇治方面に進む。
 
 途中、伏見桃山駅で 桃山山稜という案内板が見えた。

 「こんなところに古墳があるんだ。誰を祀っているんだろう。行ってみたいなあ」
 ドカンちゃんはそう言ってチカンちゃんをチラッと見た。

 「ダメだよ、今日は行くところがあるんだから」
 「う、うん」

 黄檗オウバク駅というとても難しい名前の駅で降りて
 南へ降る。

 行き着いた先はとても小さな神社だった。
 小さな神社だったけど、ちゃんと宮司様がいて
 小さな鉄ののアブミの御守りをくださった。

 「これだよ!これが必要だったんだ」

 ドカンちゃんは喜んだ。

 「ここの神様は天忍穂耳命アメノオシホミミノミコト瓊瓊杵尊ニニギのミコト
 なんだ。とても大切な神様なんだよ!」
 
 「ふーん」
 ドカンちゃんはよく分からないので生返事をした。

 「さて、旅の守護はいただいたから、宇治の神様にご挨拶していこう」
 チカンちゃんが言った。

 「桃山の古墳のこと?」
 「物事には順序があるんだよ、先に古い神様にご挨拶にいかないと」
 「古い神様?古墳ってものすごく古いんじゃないの?」

 「こまけーことはいいんだよ!」

 そう言いながらチカンちゃんがピョンピョン跳ねた。
 ドカンちゃんの頭に?がいっぱいわいてきた。

 でも、実際に宇治まで行ってよかった。
 ものすごく雰囲気のある宇治川。

 綺麗な藤の花が咲き乱れる宇治の平等院。

 その前に大きな池があり、平等院が映り込む。

 「すごいでしょー」
 だれか後ろから声をかけてきた。

 驚いてドカンちゃんが後ろを振り向くと、
 そこには巫女の衣装を着た黒髪の少女が立っていた。

 「わー!頭の髪型がオカメみたいー」
 チカンちゃんが言った。

 「チカンちゃん、失礼ですよ」
 「ごめんなさーい」

 チカンちゃんは素直に謝った。

 「この髪型はハチワレっていうんだ。和猫のジャパニーズボブテールには
 多い髪型だよ」
 
 少女はニッコリ笑った。
 
 「猫の地霊さんですか?」
 「そう、私はジャパニーズボブテールのボブ子。この一体を案内している地麗だよ。
 ちょっと財布出してみて」

 「あ、案内料ですね、わかりました」
 
 ドカンちゃんは財布を出す。
 「おいくらですか」
 「十円」
 「えらくお安いんですね」
 ドカンちゃんはちょっと苦笑しながら十円を出す。

 ボブ子はその十円を一旦貰うと、ドカンちゃんに差し出す。
 「ほら!」
 「え?」

 見てごらん。十円玉にはお寺の絵が彫り込んであるでしょ」
 「はい」
 「どこかで見たこと無い?」
 「うーん」
 「これだよ!」
 「あ!」

 ドカンちゃんは平等院を見た。
 「この平等院なんですね!」
 「そうだよ」
 ボブ子は誇らしげに胸を張った。
 
 「うわーすごーい!知らなかったです」
 ドカンちゃんは目を輝かせた。
 「さて、それでは、君たちの目的地にご案内しよう」
 そう言ってボブ子は律儀にも十円玉を返してきた。
 
 しばらく宇治川沿いに歩いていくと、少し土地が高くなっている場所があった。
 その階段の上に神社があった。

 「あれ見て!あれ見て!」
 チカンちゃんがドカンちゃんの服の裾をひっぱる。
 「なに?」
 「手水鉢の上にウサギがいる!」
 ドカンちゃんが見ると、神社の手水鉢の上に銅製のウサギが乗っていて、そこから水が出ている。

 「うわー、かわいい」

 「ここの神社のお使いはウサギなんだ。菟道稚郎子命ウジノワキイラツコノミコト
  が御祭神の神社だからね」
 「発音が似ているってことですね」

 「そうだよ。さてさて、いよいよ、ここが君たちの目的の場所だよ」

 そう言ってボブ子が早足で先に進む。

 「あ!」
 チカンちゃんが驚いて目を丸くする。
 「見て!見て!この子、尻尾がウサギみたいにまん丸だよ!猫なのに、尻尾が長くないよ!
 ウサギ尻尾猫だ!」
 
 チカンちゃんがピョンピョン跳ねて叫んだ。
 ボブ子が振り返る。

 「そうだよ、ウサギ尻尾の猫だよ!だからここのお使いなんだよ!」
 そう言ってボブ子もピョンピョン跳ねた。

 神社の本殿のところに行くと、長方形の神社のご社殿があり、
 その前に砂が盛り土してあった。、

 「プリンみたい!プリンみたい!」
 チカンちゃんが喜んだ。

 「君たちは最初にこの宇治に来たことにより、今回の旅の運命は決まった。 
 すなあちここだ!」
 
 そう言って、ボブ子は神社の向かって右側に顔を向ける。
 
 そこには小屋があった。

 「なんだろう」

 ドカンちゃんはそちらに近づく。
 「あ!」

 そこからは綺麗なわき水がわき上がっていた。
 「これは桐原水きりはらすいと言ってね、霊的守護が得られる水なんだ。
 手を洗っていきなさい。飲んではダメだよ」
 「はい」
 ドカンちゃんは小屋の中の石段を降りて、わき水の処までいって、
 柄杓で水をくんで手を洗った。

 何か体に清浄な気が入ってきたような気分になった。

 「すごく気分がよくなりました。来てよかったです」
 「そうだろう、宇治は鵜飼いなど見所満載だから、また来てね」
 「はい!」
 ドカンちゃんは満面の笑みで答えた。




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