ねこのフレンズ

楠乃小玉

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第二章

三話 明石にもあるぞ水処

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 「あー楽しかったなあ、明石にもあんなわき水あればいいのに」
 ドカンちゃんは家に帰ってきてからつぶやいた。

 「あるよ」
 チカンちゃんが即答した。
 「あるの!?」
 「でも遠いんでしょ?」
 「すぐそこだよ」
 「まぢで?
 「まぢで!」

 チカンちゃんはピョンピョン跳ねた。

 「行こう!」
 「れっつらゴー!」
 
 ドカンちゃんはチカンちゃんを自転車の買い物かごに入れて冒険旅行に旅立った。

 その場所はすぐ近くだった。
 天文宇宙館がある人丸山の麓。
 亀の水というわき水だった。
 亀の石像の口から水がわき出ている。
 「うわー!すごーい!」

 「ここの水は稲妻神社の水と同じ水源なんだ」
 「そうなんだね」
  ドカンちゃんは柄杓で水をすくう。
 「あ、そのまま飲んだらダメだよ、何か入れ物に入れて家で煮沸してから
 じゃないと飲んじゃだめだよ」

 「そうなんだ。じゃあ、今日は手を洗って口をゆすぐだけにするよ」
 「それがいいよ」

 「ほかに明石に何か無いかな」
 「天然温泉があるよ」
 
 「ほんとに?!知らなかった」
 「大蔵海岸に天然温泉が出るスーパー銭湯があって、
 そこのお風呂から海と瀬戸大橋と淡路島が一望できるよ」
 
 「へー、明石にもそんな処があったんだねー。それだけ水にまつわる
 処があるのに、どうして地霊の猫ちゃんが出てこないんだろう」

 ドカンちゃんがそう言うと、チカンちゃんが目を丸くして自分を指さした。

 「あ、ごめーん、チカンちゃん地霊だったー」
 ドカンちゃんは頭をかいた。
 

 亀の水に行ったあと、人丸山に柿本人丸をお祀りしている神社にお参りして家に帰った。

 さて、今度は自転車選びだ。
 すごく長距離を移動するので、今までみたいにママの自転車を借りるわけにはいかない。
 自転車がないとママも困るしね。

 商店街のハリマサイクリングというところで長距離サイクリング用の自転車を選んでもらう。

 「そうだな、ジーテーの自転車が丈夫でいいんじゃないかな。アメリカ製なんだよ」

 「そうなんですか、じゃあ、それで」

 ドカンちゃんはお店のご主人に自転車を選んでもらった。

 黄色で頑丈な自転車。
 
 ドカンちゃんはその自転車にロシナンテと名前をつけた、
 ロシナンテはドンキホーテという小説の主人公が乗っていたロバの名前だ。

 その自転車には前かごが付いていなかったので、チカンちゃん用の
 前かごをつけてもらう。

 店のご主人の助言で携帯空気入れと自転車のタイヤのチューブも数本買ってゆく。
 夜にパンクした場合、パンク修理キットとか使っていられない。
 チューブ丸ごと代えたほうが早いからだという。

 雨合羽も買って、下着を五日分くらいとタオル数枚。

 それから、サングラスをしないと目をやられると教えてもらった。
 ヘルメットも必須だという。

 それら装備一式をそろえた。
 ドカンちゃんは胸がドキドキした。

 夜は絶対野宿はしちゃだめだと教わった。
 田舎の人気のないところ案外と女の子には危険だそうだ。

 出発する日はチカンちゃんに吉日を選んでもらった。

 その日は一粒万倍日。

 一粒の種子が万倍にふくれあがる縁起のいい日だそうだ。
 ただし、借金をすると、借金が無茶無茶膨らむので、
 その日は借金はしてはいけないという。

 ドカンちゃんは、チカンちゃんを自転車の前かごに入れて、
 二人で冒険旅行に出発した。
 期待に胸をふくらませて。
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