猫の国(オッサンが異世界転生したら、そこは猫の国でした)

楠乃小玉

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一話 永遠に続くクダラナイ日常

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 俺の名は木戸健晴きどたけはる
 三十五才のどこにでもいるしがないサラリーマンだ。
 人手不足で中間管理職の俺に全部しわ寄せがくる。
 見なし管理職で、平社員と給料かわらねえのに残業代もらえねえ。

 娯楽は毎日ギュウギュウ積めにされた満員電車の中でスマホを使って
 無料オンラインゲームをすることくらい。

 将来にむけてワンチャン希望を叶えるため、寝る時間を削って
 ライトノベル新人賞に原稿を送っているが、全部一次落ち、
 評価は最低の酷評。
 
 金もねえ、彼女もいねえ、生きる希望もなんもねえ。

 いつまで続くのかね、こんな日常。

 フラフラしながら会社へ向かう道を歩いていると、目の前の車道に小さな女の子が
 トコトコ歩いて出てきた。

 ブオーン!とけたたましく鳴るトラックのクラクション。

 やべえ!
 だめだ、あんな可愛い幼女がトラックに跳ねられて粉々になるなんて
 耐えられない!
 
 俺が身代わりにならなきゃ。
 俺みたいな、もう将来絶対何の勝ち目もねえようなヤツより、
 あの子の命が助かるべきなんだ!

 俺は本能的に幼女の前に飛び出して、
 幼女を突き飛ばした。

 目の前に大型トラック。

 ブシャッ!

 鈍い音がした。

 目の前が真っ暗になる。

 気がつくと、俺の前にはムチムチのボンテージのレザースーツを着た
 エンマ大王みたいなコスプレをしたエロいねーちゃんが黒のレザーのイスにすわっているのが見えた。

 「ウオー!ボイン、ボインの姉ちゃんやんけー!」

 俺は姉ちゃんにとびつこうとしたが、
 ハイヒールのカカトで顔を蹴られてふっとばされた。

 「はーい、いまのでペナルティー1ね、今から行く世界のランクが一つ下がりマース」

 「は?何言ってんのお前」

 「あんたさ、死んだんだよ、私はエンマ大王様から死者の行き先をされた、エンマ代行よ」

 「ぷっ、こいつダジャレいってんの」
 
 「殺すぞ、ゲス豚、てかもう死んでるけどな」

 「なんだよそれ、俺別に悪いことしてないぞ、天国に行けるんだろうな」

 「おまえさ、きょうび天国なんて誰でも入れるもんじゃねえんだよ、
 予算削減でさ、すごく狭い門になってるの」

 「え?じゃあ、まさか地獄?」

 「地獄も今いっぱでさ、お前は異世界に転生してもらうわ」

 「じゃあ、俺すごく善良に生きてきたから、すごいいい所に行けるんだよね?」

 「あのさ、死人が行く場所ってのはね、六道って言ってね、天道、人間道、修羅道、畜生道、
 餓鬼道、地獄道ってあってな」

 「ふーっ、俺は平凡な善人だから人間道かよ」
 

 「と、思うじゃーん、でもさっき私の乳揉もうとしたから二ランクダウンで畜生界な」

 「そんな!俺は人助けして死んだんだぞ、それが畜生界なんて不条理だろうが!」

 「え?マジそれ、聞いてないんだけど」

 エンマ代行のお姉ちゃんは胸の谷間からスマホを取り出して調べる。

 「あ、やべえ、ホントだ。でも行き先インストールしてもう送っちゃったんだよね」

 「おい!なんだよそれ、インチキじゃねえか」

 「わるい、わるい、そのかわり、畜生界でも上流階級の大金持ちに家に転送しとくから。
 あと、大魔力もつけとくからな、な、そこで死んで、もう一度ここに来ても、そこの担当のエンマ代行に
 告げ口すんじゃねえぞ」

 「何勝手なこと言ってんだよ!インチキ!人間界に転生させろよ!おい!」

 俺の足下にパカッと黒い穴が開く。

 「うわーっ!」

 おれは真っ逆さまにそこから墜落した。
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